古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。
幕末から明治維新にかけては、鉄道用語はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。
日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。
ドイツ語由来の外来語(ドイツ語から日本語への借用語)は、江戸時代は蘭学を通して、明治時代は欧米列強の近代的な技術を取り入れる過程で日本へ伝わり、日本語として定着しました。日本語になった単語の分野は、法学、医学、化学、物理学から、音楽、登山、スキーまで多岐にわたります。
そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)ドイツ語由来の「外来語」(その6:マ行)をご紹介します。
1.メトロノーム(Metronom)
「メトロノーム」は、一定の間隔で音を刻み、楽器を演奏あるいは練習する際にテンポを合わせるために使う音楽用具です。日本語では「拍節器(はくせつき)」「拍子計(ひょうしけい)」です。
2.マイスター(Meister)
ドイツで、「徒弟制度」による職人の最上位で、日本語では「親方」「師匠」です。巨匠や名人のことを指す場合もあります。
「マイスター 制度」は、ドイツ語圏の高等職業能力資格認定制度です。
ドイツにおいてマイスター資格はファッハシューレ(Fachschulen, 5Bレベル)修了者に付与される資格であり、入学には1年以上の実務経験が必要です(デュアルシステム)。修了年数はフルタイムで2年間、パートタイムで3~4年間です。
ちなみにドイツには、約170のマイスター資格が存在します。
3.マンガン(Mangan)
「マンガン」は原子番号25の元素。元素記号はMnです。
4.ミッテルオイローパ(Mitteleuropa)
「ミッテルオイローパ」とは、中欧(中部ヨーロッパ)のことです。ドイツ・オーストリア・ハンガリー・スイスなどを含む地域です。
5.メス(Mes)
「メス」はドイツ語で「測る」を意味するMessenが語源です。フラスコ、シリンダー、ピペットなどの実験器具の接頭辞として用いられます。
6.メスシリンダー(Messzylinder)
「メスシリンダー」は、液体の体積を量るために用いられる縦に細長い円筒形の容器です。
ガラスやプラスチックで作られており、転倒を防ぐ広い底板と注ぎ口を持ちます。固体や気体の体積も計ることができます。
「メスシリンダー」はドイツ語で「測る円筒」を意味するMesszylinderが語源です。mes(メス)は「測る」、zylinder(シリンダー)は「円筒」を意味する言葉です。
7.メルクマール(Merkmal)
「メルクマール」とは、物事を判断する基準や、その指標のことです。
一般的には、最終目的を達成するための一連の過程等における中間指標や目印のことを意味することが多く、進捗を確認するための中間達成基準や中間地点のゴールの意味で用いられます。
8.メルヘン(Märchen)
「メルヘン」はドイツ語で「小さな物語」を意味するMärchenが語源です。mär(メル)は「お話」、chen(ヘン)は「小さい」を意味する接尾辞です。
狭義では神秘的なおとぎ話、広義では昔話、寓話、伝説、神話などを意味します。メルヘンの概念が形成されたのはグリム兄弟による『グリム童話』と言われています。
9.モリブデン(Molybdän)
「モリブデン」は、原子番号42の元素。元素記号は Mo。クロム族元素の一つです。
10.モルゲンロート(Morgenrot)
「モルゲンロート」は、朝日の出る前に山がバラ色に美しく染まることで、「朝焼け」のことです。
「アーベントロートAbendrot(夕焼け)」とともに、山がもっとも美しく見える時の一つです。
原則的に東の空が赤くなるのは、雲がない時で天気の良いことを示すものですが、日本の冬山などで西から天気が変わっていく時には、必ずしもあてはまりません。