日本語の面白い語源・由来(さ-⑩)魚・左遷・五月雨・鯖を読む・サボる・さようなら・刺身のつま

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さかなクン

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.魚(さかな)

魚

」とは、魚類の総称です。

魚は、元々「酒菜(さかな)」と書き「酒のつまみ」を意味していました。

奈良時代から室町時代にかけて、「さかな」と呼ばれていたものは、「塩」「すもも」「味噌」などです。

江戸時代以降、酒の肴に魚肉が多く使われたため、魚肉を「さかな」と呼ぶようになりました。

本来、魚類全般は「いを」と言い、「いを」から「うを」、「うを」から「うお」へと変化しました。

しかし、「うお」では不安定な母音の連続になるため、海や川で泳いでいる魚類も「さかな」と呼ぶようになりました。

ところで最近「さかな」と聞けば、魚類学者でタレント・イラストレーターの「さかなクン」(1975年~ )を思い出してしまいます。彼は本名が宮澤 正之(みやざわ まさゆき)で、父は囲碁棋士の宮沢吾朗九段です。東京海洋大学名誉博士で、東京海洋大学客員教授です。

北杜夫・養老孟司・奥本大三郎・福島和可菜のような虫好きの「虫屋」はたくさんいますが、「さかなクン」のような「魚好き」はあまり多くないと思いますが、彼の「さかな愛」は半端ではありません。自らを「草木の精」と称した植物学者牧野富太郎博士を彷彿とさせますね。

2.左遷(させん)

左遷

左遷」とは、今までより低い地位や官職に移すことです。

この言葉は、漢語の「左遷」に由来します。

中国では「右」を尊び「左」を卑しむ観念があり、官位の降格を「左遷」といいました。

日本の律令制では右大臣は左大臣より下位とされ、右が左よりも下位ですが、「右に出る者はいない」と言うように、右を上位としてみる考えも古くからありました。

漢語の「左遷」は古代の日本漢文に受け入れられ、文章語として用いられていましたが、近代以降に一般語として普及しました。

3.五月雨(さみだれ)

五月雨

五月雨」とは、梅雨、旧暦5月頃に降る長雨のことです。また、途切れながら続くことのたとえ。

さみだれの「」は、「皐月(さつき)」や「早苗(さなえ)」などと同様に、耕作を意味する古語「さ」
みだれ」は、「水垂れ(みだれ)」です。

古くは、動詞で「五月雨る(さみだる)」と使われており、五月雨はその名詞形にあたります。「五月雨る(さみだる)」は、多くは和歌で「乱る」の意味にかけて用います。

「五月雨」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・五月雨を あつめて早し 最上川(松尾芭蕉

・さみだれや 大河を前に 家二軒 (与謝蕪村

・五月雨や 魚とる人の 流るべう(高浜虚子

4.鯖を読む/サバを読む(さばをよむ)

鯖を読む

サバを読む」とは、都合のいいように、数や年齢をごまかすことです。名詞形は「鯖読み」。

サバを読むは、数字をごまかす意味として江戸時代から使われている語です。

その語源は、サバは傷みやすい魚で、数も多かったため早口で数えられ、実際の数と合わないことから、いい加減に数を数えることを「サバを読む」と言うようになり、数や歳をごまかす意味に転じたとする説が定説となっています。

その他、サバを読むの語源には、小魚を早口で数えることをいう「魚市読み(いさばよみ)」から転じたとする説。
魚のサバの語源には、数の多いことを意味する「さは」から転じたとする説があることから、「サバを読む」も同源とする説もあります。

5.サボる(さぼる)

サボる

サボる」とは、怠ける、怠る、ずる休みをすることです。

サボるは、フランス語の「サボタージュ(sabotage)」に由来します。

サボタージュとは、故意に仕事を停滞させたり、過失に見せかけ機械を破損するなど、経営者に損害を与えて解決を促す労働争議の戦術のひとつです。

日本では、サボタージュを「怠業」や「怠けること」の意味でも使い、「サボ」と略しても用いました。「教師用教科書」と似た「教科書レーダー」(教科書ガイド)を、我々は学生時代「サボ」(または「アンチョコ」)と呼んでいました。

その「サボ」を動詞化した語が「サボる」です。

サボるの語源となった「サボタージュ」は、フランスの労働者が木靴「sabot(サボ)」を使い、機械を破損したことに由来します。

6.さようなら

さようなら

さようなら」とは、別れるときの挨拶の言葉です。さよなら。

さようならは、「左様ならば(さやうならば)」の「ば」が略され、挨拶になった語です。

現代の表現にするならば、別れ際に言う「じゃあ、そういうことで」のようなもので、「さやうならば(さようならば)」は「そういうことならば」を意味します。

7.刺身のつま(さしみのつま)

刺身のつま

刺身のつま」とは、刺身に添える野菜や海藻のことです。特に必要ないもののたとえ。

刺身のつまの「つま」は、近世初期頃より使われ始めた語で、主要な料理に添える少量の野菜や海藻類を指していましたが、刺身に添える物のみを指すことが多くなりました。

つまの語源は、主となる料理のそばに置かれることから、夫婦の関係に見立てた「妻」とする説と、料理の端に置かれることから「端」の転用説があります。

刺身のつまの「つま」を漢字で書くとすれば、「刺身の妻」と「刺身の端」が考えられます。
「妻」は「端」の意味でも使われる漢字で、「話の妻」など、主となるものに添えるものの意味でも使われます。
そのため、漢字表記は「刺身の妻」がよく、語源も「妻」の説が有力です。