日本語の面白い語源・由来(さ-⑨)座敷・傘寿・ざっくばらん・刺身・桜桃・桜・偽客・酒

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座敷

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.座敷(ざしき)

座敷

座敷」とは、畳敷きの部屋、特に客間のことです。「お座敷」の形で、芸者・芸人などが招かれる酒席。

座敷は、板張りの床に対して生まれた語です。

昔は板敷き床であったため、畳・しとね・円座などの敷物を敷いて座る場所を設けました。
それらの敷物を「座」ということから、座を敷いた場所の意味で「座敷」となりました。

畳を敷いた部屋そのものを「座敷」と呼ぶようになったのは、室町時代頃からです。
特に客間を指して「座敷」と言うのは、客をもてなすために敷物を敷くことが多かったためで、その流れから酒席のことを「お座敷」と呼ぶようになりました。

2.傘寿(さんじゅ)

傘寿

傘寿」とは、数え年で80歳また、その祝いのことです。

傘寿は、「傘」の略字「仐」が、縦書きの「八十」に見えることから、80歳を呼ぶようになりました。

傘寿の祝い方は、基本的に還暦と同じですが、祝いの色は古希・喜寿・卒寿と同じく紫です。

3.ざっくばらん

ざっくばらん

ざっくばらん」とは、遠慮なく心中をさらけ出して接するさま、気取らないさまのことです。

ざっくばらんは、心をざっくり割って、ばらりと明かすという意味です。
擬態語の「ざっくり」や「ざっく」、「ばらり」や「ぱらり」などからと考えられます。

江戸時代から明治時代には、「ざっくばらり」という語も多く見られ、それの省略された「ざっくばら」や、ざっくばらんの訛った「ざっくばれん」という語も見られます。

堅苦しいことを「四角張る」ということから、打消しの「四角張らぬ(四角張らん)」が「さくばらん」になり、「ざっくばらん」に変化したとする説もあります。

しかし、「ざっくばらり」から「ざっくばらん」の音変化は考えられますが、「ざっくばらん」から「ざっくばらり」は不自然であるため、この説は間違いのようです。

余談ですが、私が子供の頃、ジャングルに潜む日本兵に扮した牟田悌三が出演するコメディー「ザックラバン物語」というテレビ番組がありました。その当時「ざっくばらん」という言葉を知らなかった私は、タイトルが「ざっくばらん」をもじったものであることに気付きませんでした。

4.刺身(さしみ)

刺身

刺身」とは、新鮮な魚介類などを生のまま薄く切り、醤油やわさび、生姜などをつけて食べる料理です。お造り。

刺身は、室町時代から見られる語です。

武家社会では「切る」という語を嫌っていたため、「切り身」ではなく「刺身」が用いられるようになりました。

「刺す」という表現は、包丁で刺して小さくすることからと思われます。

他の説では、魚のヒレやエラを串に刺して魚の種類を区別していたことから、「刺身」と呼ぶようになったとする説もあります。
しかし、ヒレやエラの部分は一般的に「身(肉)」と考えられていないため、この説は考えがたいものです。

魚以外の材料で「刺身」と呼ぶものには、「たけのこの刺身」「刺身こんにゃく」「馬刺し」や「牛刺し」などがあります。

これらは、魚の刺身の切り方や盛り付け方、新鮮な生肉(身)などの意味から呼ばれるようになったものです。

5.桜桃(さくらんぼ/おうとう)

さくらんぼ

さくらんぼ」とは、セイヨウミザクラの果実です。桜桃(おうとう)。

さくらんぼは「桜ん坊(さくらんぼう)」とも呼ぶとおり、「さくらんぼう」の「う」が落ちた名前で、「ん」は「の」を表します。

さくらんぼの語源は、ミザクラの果実を擬人化したか、その形を坊主の丸い頭に見立てたとされます。

その他、漢字で「桜桃」と書くことから、「さくらもも(桜桃)」の転訛という説。
果実を意味する「ボボ」が「ボウ」になったとする説。
桜干(さくらぼし)の意味からなど諸説ありますが、いずれも考え難い説です。

余談ですが、無頼派作家太宰治の忌日を「桜桃忌」と言います。1948年6月13日、太宰は愛人・山崎富栄とともに玉川上水(東京都三鷹市付近)に入水自殺しました。

この名前は、太宰と同郷の直木賞作家今官一氏によってつけられました。 いろんな名がもち寄られ、なかには「メロン忌」などというものがありましたが、圧倒的な支持を得て「桜桃忌」に決定しました。 太宰の死の直前の名作「桜桃」にちなむものですが、鮮紅色の宝石のような北国を代表するこの果物は、鮮烈な太宰の生涯と珠玉のような短編作家というイメージに最もふさわしかったからです。

「桜桃の花」は春の季語、「桜桃の実」「さくらんぼ」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・桜桃の 花に奥嶺の 雪ひかる(大竹孤愁)

・茎右往 左往菓子器の さくらんぼ(高浜虚子

・この恋よ おもひきるべき さくらんぼ(久保田万太郎)

6.桜(さくら)

山桜

」とは、バラ科サクラ属の落葉高木または低木です。一般にはサクラ亜属に属するもの。日本の国花。

今「桜」と言えば「ソメイヨシノ(染井吉野)」ですが、江戸時代に「エドヒガン(江戸彼岸)」と「オオシマザクラ(大島桜)」との交配による品種改良でソメイヨシノができるまでは、「桜」と言えば「山桜」を指しました。

西行法師本居宣長の愛した「桜」も「山桜」でした。

桜の語源は、動詞「咲く(さく)」に接尾語「ら」が付き、名詞になったものといわれます。

桜は奈良時代から栽植されましたが、当時は田の神が来臨する花として、「信仰」「占い」のために植えられることが多かったようです。

そのため、「さ」は耕作を意味する古語「さ」、もしくは「神霊」を意味する「さ」を表し、「くら」は「座」を表すといった説もあります。

しかし、古代に「サクラ」と呼ばれていたのは、現在の「山桜」のことであったとされ、あまり有力とされていません。

「桜」は春の季語で、次のような俳句があります。

・我庭は 梅の落花や 初桜(青木月斗)

・夕闇や 枝垂桜の かなたより(芥川龍之介

・よし野にて 桜見せふぞ 檜の木笠(松尾芭蕉

・夜櫻の 一枝長き 水の上(高野素十)

7.偽客/サクラ(さくら)

サクラ

サクラ」とは、「人気があるように見せかけるために店側が雇い、客のふりをしている偽の客のこと 」「露天商の仲間で、客の購買意欲をそそるため、客のふりをして品物を褒めたり、高く買い物をする仲間のことです。おとりの客。

サクラは露天商などの隠語から、明治時代以降に一般へ広まりました。
漢字で「偽客」と書くのは当て字です。

サクラの語源は諸説ありますが、江戸時代の芝居小屋で役者に声をかける見物人役は、パッと派手に景気よくやってパッと消えることから、桜の性質になぞらえて「サクラ」と呼ぶようになりました。

それが露天商の隠語となり、一般にも広まったとする説が有力とされます。

また、そもそも桜はタダ(無料)で見ることができるため、芝居を無料で見物する人を「サクラ」と呼ぶようになりました。

芝居をタダで見物する代わりに、役者に頼まれて声をかけ、場を盛り上げたことから、現在の意味になったとする説もあります。

その他、労働する意味の「作労(さくらう)」が転訛し、「サクラ」になったとする説もありますが、意味の繋がりがはっきりせず、有力な説とは考えられていません。

サクラの同義語に「トハ」がありますが、これは鳩(はと)を逆に言ったもので、同様にぱっと散り去るからだということです。

これが明治時代に入ると、露天商や的屋(てきや)などの売り子とつるんで客の中に入り込み、冷やかしたり、率先して商品を買ったり、わざと高値で買ったりするような仕込み客のことも隠語でサクラと呼ぶようになりました。

サクラを「偽客」と書くようになったのはこの露天商などが用いた当て字が一般に広まったものです。

今日では、マーケットリサーチや世論調査などにおいても、良好な調査結果をもたらすために主催者側によって動員されたりあらかじめモニターや調査対象者の中に送り込まれた回し者のことを、サクラと呼ぶこともあります。

8.酒(さけ)

酒

」とは、アルコール分を含み、人を酔わせる飲み物の総称です。多くは日本酒を指します。

さけの「さ」は接頭語で、「け」は酒の古名「き」の母音変化が有力とされます。

一説には、古名の「汁(しる)」と「食べ物」を意味する「食(け)」で、「汁食(しるけ)」から転じたとする説もあるが、有力とはされていません。

その他の説では、飲むと晴れ晴れすることから、「栄え水(さかえみず)」と呼ばれており、「栄え水」が転訛して「さけ」になったする説。
同様に「栄えのき(「き」は酒の古名)」が転訛し、「さけ」になったする説。
飲むと風寒邪気を払うため、「避ける」から「さけ」になったする説などありますが、これらは俗説です。

また、古くは「クシ」とも呼ばれ、酒の神様を「久志能加美、久斯榊(クシの神)」と言います。
この「クシ」を語源とする説もありますが、「クシ」から「さけ」に転訛することは考えがたいものです。
「クシ」の語源は、酒は飲むと人の心を奪うため、「奇し(くし)」「怪し(けし)」が転じたものといわれます。