4000年の歴史を持つ中国には、多くの故事やそれに由来する「四字熟語」がたくさんあります。これは人類の叡智の結晶と言っても過言ではありません。
「自然」「風景」を表す四字熟語もたくさんあります。そこで5回に分けてご紹介したいと思います。
今回は、「さまざまな自然・風景」を表す四字熟語(その1)です。
1.暗香疎影(あんこうそえい)
どこからともなく漂いくる花の香りと、月光などに照らされて、まばらに映る木々などの影のこと。
「暗香」はどこからともなく漂うよい香り。また、暗闇の中に漂うよい香り。花の香り、特に梅花の香りをいうことが多い。
2.暗香浮動(あんこうふどう)
真っ暗な中でわずかに漂う梅の香りのこと。
「暗香」はどこからか漂う良い香りのことで、梅の花の香りを言うことが多い。
「浮動」は浮き漂うこと。
春の訪れを言い表す言葉。
3.一望千里(いちぼうせんり)
ひと目で千里を見渡せる意から、広々として見晴らしのよいことの形容。
「一望」は広々とした眺めを一目で見渡すこと。「千里」は遥か彼方、極めて遠いたとえ。
「一望千頃(いちぼうせんけい)」とも言います。
4.一望無垠(いちぼうむぎん)
一目でかなたまで広々と見渡されること。見晴らしのよいたとえ。また、広々として見渡される美しい景色のたとえ。
「無垠」は果てしないこと。「垠」は地の果て。
「一望垠(はて)無し」と訓読します。
5.一身軽舟(いっしんけいしゅう)
自然の中で自身と乗っている船が一つに感じられ、自身と他のものの区別がつかなくなること。または、そのように感じるほどに風景が壮観な様子。
「軽舟」は軽快に進む小舟のこと。
「一身軽舟と為る」を略した言葉。
6.一碧万頃(いっぺきばんけい)
海などの水面が、はるかかなたまで青々と広がっていること。
「碧」は青・青緑・濃い青の色で、海や湖などのたとえ。
「頃」は面積の単位。一頃は百畝(ひゃっぽ)で、周代では百八十二アール、宋代では五百六十六アール。「万頃」はきわめて広いたとえ。
7.煙波縹渺(えんぱひょうびょう)
水面がもやなどで遠くまで煙って、空と水面の境界がぼんやりしてはっきりとしないさま。
「縹渺」はぼんやりしてかすかなさま。「煙」は「烟」、「渺」は「緲」「眇」とも書きます。
8.桜花爛漫(おうからんまん)
桜の花が満開になって、みごとに咲き乱れているさま。
「爛漫」は花が咲き乱れるさま。
9.鶴汀鳧渚(かくていふしょ)
美しい水辺の風景を言い表す言葉。
鶴のいる水際と、かもが遊んでいる波打ち際ということから。
「汀」は水際、「渚」は波打ち際。「鳧」はかものこと。
10.花紅柳緑(かこうりゅうりょく)
春の美しい景色の形容。また、色とりどりの華やかな装いの形容。また、人手を加えていない自然のままの美しさのこと。花は紅に柳は緑の意。
「柳緑花紅(りゅうりょくかこう)」とも言います。
また、仏教(特に禅宗)で、花が赤く柳が緑であるというありのままの姿こそが悟りの境地であることを言います。
旧制三高の寮歌『紅萌ゆる丘の花』の歌詞にもこのような景色が入っていますね。
11.岸芷汀蘭(がんしていらん)
水辺で、花が薫り高く咲き乱れ、草木が青々と茂っている様子。
「岸」は水辺の高くなっている所で、「汀」は水際の平地。「芷」はセリ科の香草でヨロイグサ。「蘭」はキク科の香草でフジバカマ。どちらも香りのよい花をつけます。
12.金波銀波(きんぱぎんぱ)
美しく耀いている波のこと。
日光や月光に照り映えて、金色や銀色に美しくきらきらと輝いている波のこと。
「銀波金波(ぎんぱきんぱ)」とも言います。
旧制一高の寮歌『嗚呼玉杯に花うけて』の歌詞にもこの言葉が出てきますね。
13.山光水色(さんこうすいしょく)
山や海、川などの自然の風景。
「山光」は山の風景。「水色」は海や川、湖などの水辺の風景。