日本語の面白い語源・由来(ひ-④)飛兎竜文・飛竜頭・引っ切り無し・ピエロ・檜・向日葵・ピン撥ね・彦星

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飛兎竜文

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.飛兎竜文(ひとりゅうぶん/ひとりょうぶん)

飛兎竜文

飛兎竜文」とは、「才能のあるすぐれた子供」のことです。「竜」は「りょう」、「文」は「もん」とも読みます。

「飛兎」と「竜文」は共に、足の速い優れた馬、駿馬の名前です。
才知のすぐれた子供をそのような駿馬にたとえ、「飛兎竜文」と表すようになりました。

2.飛竜頭(ひりょうず)

飛竜頭

飛竜頭」とは、「関西でいうがんもどき。うるち米ともち米の粉を混ぜて練り、油で揚げた食品」です。飛龍頭。飛竜子。ひりゅうず。ひろうす。ひりうす。

飛竜頭は、ポルトガル語「filhos(フィリョース)」に漢字を当てたものです。
「filhos」とは、小麦粉に卵を混ぜ合わせ、油で揚げた菓子のことです。

元禄2年(1689年)の『合類日用料理指南抄』にある「ひりやうす」の作り方が、これに近いものです。

元禄10年(1697年)頃、ごぼうやきくらげを炒ったものと、豆腐をすったものを混ぜ合わせ、丸めて油で揚げた精進料理の「豆腐巻(とうふけん)」が、「飛竜頭」と呼ばれるようになっています。

そのため、部分的に製法が似た料理に「飛竜頭」の名が用いられた結果、「がんもどき」を指すようになったと考えられます。

3.引っ切り無し(ひっきりなし)

開かずの踏切

駅のすぐ近くにある踏切の中に歯、電車が両方向から引っ切り無しに来るので、空いている時間の方が少ない「開かずの踏切」というのがありますね。

ひっきりなし」とは、「絶え間なく続くさま」です。

ひっきりなしの「ひっきり」は、「引き切り」の「引き」が促音化した語です。
引き切りは、手元に引くように切ることが原義で、そこから切れ目や区切りの意味に転じました。

ひっきりなしは、引き切りがない状態。つまり、切れ目や区切りが無い状態であるから、絶え間なく物事が続くさまを表すようになりました。

4.ピエロ/pierrot

ピエロ

ピエロ」とは、「サーカスなどで、派手な衣装とメイクをし、滑稽なしぐさで人を笑わせる道化役者。滑稽な振る舞いをする人。笑いものになるだけの人」のことです。道化師。

ピエロは、フランス語「pierrot」からの外来語です。

「pierrot」は、中世イタリアの即興喜劇集団『コメディア・デラルデ』に登場する「ペドロリーノ(pedrolino)」という役名に由来します。

これがフランスに入ると、一般的なフランス人名らしく「ピエール(pierre)」に改められ、愛称で「ピエロ(pierrot)」と呼ばれるようになりました。

日本で言う「ピエロ」は、フランスを含め諸外国では「クラウン(clown)」と呼ばれます。

「ピエロ」は人生の悲哀をパントマイムで演じる者を指しますが、両者とも白塗りで外見が似ていることから、日本では誤って「クラウン」を「ピエロ」と呼ぶようになりました。

ピエロやクラウン、アルルカンについては、「ピエロとクラウンとの違いは何か?わかりやすくご紹介します。」「アルルカンとは何か?道化師(ピエロ)との違いなどをわかりやすくご紹介します。」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

5.檜(ひのき)

檜風呂

檜と言えば、私などは良い「檜風呂」をまず思い浮かべます。

ヒノキ」とは、「日本特産のヒノキ科の常緑高木」です。樹皮は赤褐色で屋根材に用い、材は淡黄色で芳香があり、建築・家具・船舶・彫刻などに重用されます。

ヒノキは精油を含み、火がつきやすい硬さであるあため、この木の摩擦で火を起こしたことから、「火の木」の意味とする説が多く見られます。

しかし、上代特殊仮名遣いで「火」は乙類、ヒノキの「ヒ」は甲類であるため、妥当とはいえません。

その他、ヒノキは神宮の用材にするところから「霊(ひ)の木」、「日」は太陽を表す最も古い語形で、最高のものを表すところから「日の木」とする説があり、「日」「霊」共に甲類なので、いずれかがヒノキの語源と考えられます。

ヒノキの漢字「檜(「桧」は略字)」は、中国では「イブキビャクシン」を指します。

6.向日葵(ひまわり)

向日葵

ひまわり」とは、「北アメリカ原産のキク科の一年草」です。茎が太くて直立し、高さ2mぐらいまで成長します。夏、黄色い花を咲かせます。

ひまわりは、太陽の移動につれて花の向きが回ることからの名です。
しかし、実際はそれほど動かず、ひまわりが太陽の動きに合わせて回るのは成長が盛んな若い時期で、花が咲く頃には動かなくなります。

他にも同じような動きをする植物は多く存在するため、動きだけでなく、太陽を連想させる花のや形、咲く季節も影響したと思われます。

ただし、シロタエヒマワリ(白妙向日葵)の頭花は、太陽の動きにつれて回る事が確認されています。

ひまわりの漢字は、漢名の「向日葵(こうじつき)」に由来します。

「向日葵」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・向日葵の 月に遊ぶや 漁師達(前田普羅)

・日を追はぬ 大向日葵と なりにけり(竹下しづの女)

・向日葵の 眼は洞然と 西方に(川端茅舎)

・向日葵の 垂れしうなじは 祈るかに(篠原鳳作)

7.ピン撥ね/ピンハネ(ぴんはね)

ピン撥ね

ピンハネ」とは、「他人に渡すべき金銭などから一部を取って自分のものにすること。上前をはねること」です。

派遣社員・契約社員などの非正規雇用労働者は、派遣先の会社から支払われる賃金の一部を派遣会社がピンハネしますので、ただでさえ低い賃金が手取りではさらに低くなるのです。

ピンハネの「ピン」は、「点」を意味するポルトガル語「pinta(ピンタ)」に由来します。
日本では、かるたやサイコロの目で「一」を意味する言葉として「ピンタ」が使われ、転じて「一割」や「一部」を「ピン」と言うようになりました。

「一部」の意味から、「ピン」は「上前をはねる」の「上前」と同様の意味で用いられ、一部を取ることを「ピンをはねる」と言い、略して「ピンハネ」と言うようになりました。

8.彦星(ひこぼし)

彦星

彦星」とは、「わし座α星アルタイルの和名。牽牛(けんぎゅう)星」のことです。

彦星の「彦」は男性の美称で、古代では「姫」の対義語として用いられた語です。

「ひ」は「ひめ」の「ひ」と同源で、美称である「日」。
「おとこ(男)」と「おとめ(乙女)」が男女の対であるように、「こ」は男性を意味します。