「自然」「風景」を表す四字熟語(その3)さまざまな自然・風景(その2)

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山紫水明

4000年の歴史を持つ中国には、多くの故事やそれに由来する「四字熟語」がたくさんあります。これは人類の叡智の結晶と言っても過言ではありません。

「自然」「風景」を表す四字熟語もたくさんあります。そこで5回に分けてご紹介したいと思います。

今回は、「さまざまな自然・風景」を表す四字熟語(その2)です。

1.山紫水明(さんしすいめい)

自然の風景が清浄で美しいこと。日の光の中で山は紫にかすみ、川は澄みきって美しい意から。

2.山川草木(さんせんそうもく)

人間以外のあらゆる自然の総称。
山と川と草と木のことから、あらゆる自然という意味。

なお仏教においては、「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」(あるいは「山川国土悉皆成仏(さんせんこくどしっかいじょうぶつ)」、「山川草木悉有仏性(さんせんそうもくしつうぶっしょう)」)という思想・言葉があります。

草木や国土のような心識をもたないものも、すべて仏性を有するので、ことごとく仏となりうるという意味の成語です。

《涅槃経(ねはんぎよう)》の〈一切衆生 悉有仏性(いっさいしゅじょう しつうぶっしょう)〉の思想を基盤とし、生命をもたない無機物にもすべて〈道〉が内在するという道家の哲学を媒介として、六朝後期から主張され始めた中国仏教独自の思想であり、天台宗・華厳宗などで強調されます。

3.山容水態(さんようすいたい)

山や川の様子・姿。自然の美しい風景のこと。

「容」「態」ともに、姿・様子の意。

4.紫幹翠葉(しかんすいよう)

山の木々がみずみずしく青々としていて美しい様子。

「紫幹」は暗褐色の幹、「翠葉」は緑色の木の葉のこと。
「紫翠」と略すこともあります。

5.秀色神采(しゅうしょくしんさい)

すぐれた風景や様子のこと。

「秀色」は美しい様子や姿のこと。「神采」はすぐれた外見。または、品格が高い様子。
「秀色神彩」とも書きます。

6.上下天光(しょうかてんこう)

空と水とが一つになって、明るく輝くさま。

「上下」は天地、空と水のこと。「天光」は空一面に輝く日の光。ここではそれが水面にも映り輝き、天にも地にも光が満ちあふれたさま。

「上下」は「じょうげ」とも読みます。

7.晨煙暮靄(しんえんぼあい)

朝に出る霧と夕方に出る靄(もや)。

「晨煙」は朝早くに出る霧。「暮靄」は日暮れに出る靄(もや)。

霧やもやで霞んでいる日の出や夕暮れの風景をいう言葉。

8.深山窮谷(しんざんきゅうこく)

人が入ったことのないような、奥深い山と深い谷のこと。

「深山」は人里から離れた場所にある山。「窮谷」は深い谷。

9.深山幽谷(しんざんゆうこく)

ほとんど人が入っていないような奥深く静かな大自然のこと。

「深山」は人里遠く離れた奥深い山。「幽谷」は山奥深くにある静かな谷。

10.水光接天(すいこうせってん)

月光に照らされた川面の輝きが遠くに広がり、空まで続いている。長江の雄大な夜景を詠んだ表現。

「水光天に接す」と訓読します。

11.翠色冷光(すいしょくれいこう)

冷たく感じるような青い光のこと。また、月の光りを表現したもの。

「翠色」は青緑色、または深い緑色のこと。「冷光」は冷ややかな光という意味。

12.水声山色(すいせいさんしょく)

川の水の流れる音と、山の木々の緑のこと。穏やかな村を言い表す言葉。

「水声」は川の流れの水の音。「山色」は山の木々の緑色。

13.水天一碧(すいてんいっぺき)

水と空とが一続きになって、一様に青々としていること。

「水天」は水と空、海と空。「一碧」は一面に青い色となること。「碧」は深い青色、あおみどり。

14.星河一天(せいがいってん)

空一杯に、数え切れないほどの星が川のように輝いて見える様子。

「星河」は天の川のこと。「一天」は空全体という意味。

15.晴好雨奇(せいこううき)

晴天でも雨天でもすばらしい景色のこと。自然の眺めが晴天には美しく、一方、雨が降ったら降ったですばらしいこと。

「奇」は普通とは違ってすぐれている意。「水光瀲灔(れんえん)として晴れ方(まさ)に好(よ)く、山色空濛(くうもう)として雨も亦(また)奇なり」の略。

「雨奇晴好(うきせいこう)」とも言います。