日本語の面白い語源・由来(か-⑦)蝸牛角上の争い・勘当・かてて加えて・香り・陽炎・鉋

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蝸牛角上の争い

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.蝸牛角上の争い(かぎゅうかくじょうのあらそい)

蝸牛角上の争い

蝸牛角上の争い」とは、小さな者同士の争い、つまらない事で争うことのたとえです。「蝸角の争い」「蝸牛の角の争い」「蛮触の争い」とも言います。

蝸牛角上の争いの「蝸牛」とは、カタツムリのことです。

カタツムリの左角に国を持つ触氏と、右角に国を持つ蛮氏が、角の上で領土争いをしたという『荘子(則陽)』の寓話から出た言葉です。

2.勘当(かんどう)

勘当

勘当」とは、親子・主従・師弟の縁を切ることです。

」は「考えるの意味で、罪を法に当てて考え、処罰を決めることを「勘当」と言いました。そこから、しかり責めて叱る意味が生じ、更に、とがめて義絶する意味となりました。

江戸時代、武士は管轄の奉行所、町人は町奉行所に勘当を届け出る必要があり、登録のないものは「内証勘当」と言いました。

3.かてて加えて/糅てて加えて(かててくわえて)

かてて加えて

かてて加えて」とは、その上に、さらにという意味で、良くない事が重なるときに多く用います。

かて」は、混ぜ合わせる意味の動詞「かつ(糅つ)」の連用形です。
かてて加えては、混ぜ合わせたところに更に加えるの意味から、「さらに」「その上に」を表します。

4.香り/薫り/馨り(かおり)

香

香り」とは、におい、香気のことで、特に、よいにおいを指します。

香りは、動詞「かおる」の名詞形です。
かおるの語源には、「カヲル(香居)」、「カハフル(香放)」、「カハル(香張)」の意味など、「カ」を「カ(香)」と関連付ける説が多いようです。

「かぐ(嗅ぐ)」が「カ(香)」の活用とすると妥当ですが、断定はできません。
「カ(香)」の音に関連付けない説では、「ケヲル(気折)」の転という説があります。

余談ですが、小椋佳の有名な「シクラメンのかほり」という歌がありますが、「かり」と書くのは誤りです。これについては、「シクラメンのかほりは、かりが正しい。また香りのないシクラメンが一般的」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

5.陽炎(かげろう)

陽炎

陽炎」とは、春や夏の晴れた日に、地面が熱せられて空気密度が不均一になり、通過する光が不規則に屈折して、ゆらゆらと揺れて見える現象のことです。「かぎろい」「ようえん」とも読みます。

万葉集』の「今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へとなりにしものを」の例があるように、昔は、かげろうを「かぎろひ」と言いました。

同じ『万葉集』の柿本人麻呂の歌には、「東(ひんがし)の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」とあり、ここでは「明け方の東の空にさしはじめる光(太陽)」を意味しています。

「かぎろひ」の「かぎ」は、「きらきら光って揺れる」「ちらつく」を意味する「かがよう」の「かが」と同源で、「かげ(影)」や「ほのかに光を出す」意味の「かぎる」も同源と考えられています。

「かぎろひ」の「ひ」は「火」で、かげろうは揺れて光る炎に見立てた語と考えられます。

6.鉋(かんな)

かんな」とは、材木の表面を削って滑らかにする道具です。

古くは「カナ」と「カンナ」の両方の語形が見られますが、一般的な音変化とすれば「カナ」から「カンナ」になったと考えられます。

」は、「カリ(刈り)」もしくは「カキ(掻き)」の意味です。
」は、「ナ(刀)」「ナグ(薙ぐ)」「ナデ(撫で)」など諸説ありますが断定は困難です。

室町時代以前は、「かんな」と言えば、槍の穂先の反ったような形の「やりがんな」を指しました。

現代のように、堅い木の台に刃を付けた「台かんな」を指すようになったのは、近世以降です。

余談ですが、夏の花の「カンナ」(Canna)は葦(アシ)を意味するラテン語が語源で、この植物の茎がアシのように管状(中が空洞)になっていることに由来しています。

カンナ