日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.革命(かくめい)
「革命」とは、被支配階級が支配階級から権力を奪い、政治や経済・社会体制を根本的に変革すること、物事が急激に変革することです。
革命は、中国周代の占いの書で五経のひとつである『易経(革卦)』の出典によります。
「革」は「あらためる」の意味で、「命」は「天命」の意味です。
古代中国では、天子は天命を受けて天下を治めるとされており、革命は天命が改まり王朝が変わることを意味しました。
平安初期以降、日本でも「革命」は統治者が変わる意味で用いられていましたが、明治に入って「revolution」の訳語となったことから、被支配階級が権力を奪い、社会を変革する意味で用いられるようになりました。
更に、今までの社会を覆す根本的な変革の意味から、政治にかかわらず急激な変革の意味でも「革命」は用いられるようになりました。
余談ですが、革命に関しては「フランス革命とは何だったのか?わかりやすくご紹介します」「ラボアジエはフランス革命で断頭台の露と消えたが、どんな人物だったのか?」「ダヴィッドは王室・革命派・ナポレオンと庇護者を変え、栄光と失脚を重ねた巨匠」「ルブラン夫人とは?フランス革命前後に活躍した美貌の女流画家の生涯をたどる」「文化大革命とは何か?毛沢東の政権奪還権力闘争で犠牲者は1千万人以上にも!」「造反有理・革命無罪という文化大革命のスローガンは、毛沢東の言葉が起源」「フランス革命のような民衆蜂起のみが北朝鮮の金王朝の恐怖政治体制を打倒出来る!」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。
なお、私は日本の「明治維新」も実態としては、「薩摩藩と長州藩の下級武士たちによる徳川幕府に対する軍事クーデター・革命」だと思っています。
2.偕老同穴(かいろうどうけつ)
「偕老同穴」とは、夫婦が仲むつまじく、契りが固いことです。「偕老同穴の契りを結ぶ」と使います。
偕老同穴は、『詩経』の「子と偕(とも)に老いん(偕老)」と「死すれば則ち穴を同じくせん(同穴)」という二つの誓いの言葉を合わせたものです。
「偕老」は、「生きている時はともに老い」の意味。
「同穴」は、「死んでからは同じ墓に入る」の意味。
この二つを合わせた「偕老同穴」は、夫婦が仲むつまじく固く結ばれていることを表します。
なお、「カイロウドウケツ(偕老同穴)」という名前の海綿動物(上の写真)がいます。 六放海綿綱に属する海綿の仲間です。
その外見の美しさから、しばしば観賞用として利用されます。日本では相模湾や駿河湾などで見られます。
「カイロウドウケツ」の体は円筒状で、二酸化ケイ素(ガラス質)でできた網目状の骨格(骨片)を持ち、「ガラス海綿」とも呼ばれます。その外見の美しさからVenus’ Flower Basket(ビーナスの花かご)と呼ばれます。
体長は5~20 cmほど。水深1000 mまでの深海底に生息します。名前の由来は中国最古の詩篇である『詩経』にある「偕老同穴」です。偕老同穴とは共に暮らして老い、死んだあとは同じ墓に葬られることを意味します。
胃腔内にはドウケツエビと呼ばれるエビがすんでいます。彼らは幼生のときにカイロウドウケツの胃腔内に入り、成長成熟し、繁殖行動を行います。そして、そのまま雌雄が添い遂げるようにしてやがて死を迎える…という、何ともロマンチックな一生を送ります。「単にカイメンから出られないだけでは?」と考えるのは野暮なのかもしれません。
3.仮名(かな)
「仮名」とは、漢字をもとに日本で作られ発達した音節文字です。一般にはひらがなとカタカナを指しますが、広義には万葉仮名を含めます。
かなは、「かりな」が変化した「かんな」の撥音「ん」の無表記です。
正式な文字という意味から漢字を「真名(まな)」と呼ぶのに対し、「仮名」は正式でない仮の文字という意味です。
「仮字」や「真字」と「字」ではなく、「仮名」や「真名」と「名」が付くのは、古代、事物の名称と文字は区別されておらず、「名」に「文字」の意味が含まれていたことよります。
仮名は、漢字の意味を省き、音訓の読みだけを用いた万葉仮名に始まりました。
万葉仮名が簡略化されて「カタカナ」が生まれ、漢字の草書体から草仮名が作られ、その字体を簡略化した「ひらがな」が生まれました。
4.片仮名(かたかな)
「カタカナ」とは、仮名の一種で、万葉仮名として用いられた漢字の一部を使って作り出された音節文字です。現在では、主に外来語・擬声語・擬態語などの表記に用います。
「大和仮名」「五十音仮名」「略体仮名」とも言います。
カタカナの「カタ」は、不完全の意味です。
「ア」は「阿」から、「イ」は「伊」から、「ウ」は「宇」からというように、万葉仮名で用いられた漢字の一部を使っているところから、不完全な仮名の意味で「カタカナ」と呼ばれるようになりました。
ただし、全てが漢字の一部を用いている訳ではなく、「ケ(介)」「シ(之)」「チ(千)」「ツ(川)」「ハ(八)」「ミ(三)」のように、全画から作られたカタカナも含まれています。
平安初期に漢字訓読に用いられ発達し、現在では主に外国語や擬声語・擬態語などで用いられます。
なお、平仮名・片仮名については、「日本語の起源は?中国の漢字を利用して片仮名・平仮名・訓点を発明した歴史も紹介」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
5.漢字(かんじ)
「漢字」とは、中国で発祥・発達した表意文字で、日本で作られた国字(和製漢字)も含みます。
漢字は、中国、漢民族の間で作られた文字です。漢民族が使っていた言葉を「漢語」といい、その漢語を表記するための文字なので「漢字」というようになりました。
本来、漢字は漢語を表すための文字を指しますが、同様の形態や機能をもつ「和製漢字(国字)」も含めて言います。
現存する最古の漢字は、殷墟から出土した紀元前15世紀頃の甲骨文字で、非常に長い歴史をもつ文字です。
日本では、1世紀頃の委奴国王の金印などが古いものです。
なお、漢字については「漢字の音読み・訓読みにまつわる面白い話。音読みと訓読みが同じ漢字もある!」「漢字は全部でいくつあるのか?『史記』は約526,500字で書かれている!」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。
6.河童巻き/かっぱ巻き(かっぱまき)
「かっぱ巻き」とは、きゅうりを芯にした海苔巻きのことです。
かっぱ巻きは、想像上の動物である河童の好物が「きゅうり」だからと言われます。
その他、河童の総本家『水天宮』の紋章と、きゅうりの切り口が似ていることから、きゅうりを「かっぱ」と呼ぶようになったとする説もあります。