日本語の面白い語源・由来(ま-④)眉・眼・マスカラ・万年筆・松・真面目・孫の手

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まゆ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.眉(まゆ)

まゆまゆ

」とは、「目の上、ひたいの下に弓状に生えている毛」です。眉毛(まゆげ)。

眉は目の上にあることから、「マノウヘ(目の上)」もしくは「マウヘ(目上)」の意味と考えられます。

ただし、古くは「マヨ」と言い、「マヨ」が音変化して「まゆ」となっています。
そのため、「マノウヘ」「マウヘ」が直接音変化したものではなく、「目の上」の意味を表す言葉に「マヨ」があり、それが音変化したと考えられます。

「眉」の漢字は、目の上に毛があることを描いた象形文字です。

2.眼(まなこ)

まなこ

まなこ」とは、「目。目玉。黒目。ひとみ」のことです。

まなこの「ま」は「目」の意味で、複合語の中で用いられる時の形です。
「な」は古形の格助詞で「の」の意味。「こ」は「子」の意味。
「目」を意味する「まなこ」が「目の子」とされた理由は、元々、まなこは黒目(瞳)のみを指し、のちに目全体を指すようになったためです。

3.マスカラ/mascara

マスカラ

マスカラ」とは、「まつ毛を濃く、長く見せるためにつける化粧品」です。まつ毛墨。

マスカラは、英語の「mascara」からの外来語です。
「mascara」は、「覆う」を意味するイタリア語の「maschera」が語源で、英語の「mask(マスク)」と同源です。

まつ毛だけでなく、太くて自然な眉にするための眉毛用のマスカラは、「アイブローマスカラ」や「眉マスカラ」と呼ばれます。

4.万年筆(まんねんひつ)

万年筆

万年筆」とは、「ペン軸に入れたインクが、毛細管現象によってペン先に伝わり字が書けるようにした携帯用のペン」です。万年ペン。まんねんふで。

万年筆の歴史は、羽根ペンが主流だった1748年、イギリスのヨハン・ジャンセンが考案した金属ペンに始まります。

ただし、ペン軸内部にインクを入れるタイプのものは、1809年にイギリスのフレデリック・バーソロミュー・フォルシュが考案したもので、これが一般に起源といわれます。

この頃から、「fountain pen(泉のペン)」や、「stylographic pen(鉛筆画法のペン)」と呼ばれるようになりました。

明治17年(1884年)には、横浜のバンダイン商会が輸入を開始し、丸善などで「針先泉筆」の名で販売され、その直後あたりから「針先泉筆」は「万年筆(萬年筆)」と呼ばれるようになりました。

明治18年10月13日の東京横浜新聞には、「一種の筆を発明し名づけて万年筆と云ふ」とあります。

この読みが、「まんねんひつ」か「まんねんふで」か不明ですが、明治末期頃までは「まんねんふで」と呼ばれることが多かったようです。

「針先泉筆」は「fountain pen」と「stylographic pen」の意味を含んだ訳ですが、半永久的に溢れ出るものを「泉のように湧く」と言うことから、「万年筆」は「fountain pen」の訳語と考えられています。

明治17年に日本で初めて国産の万年筆を模作した大野徳三郎による命名といわれますが、定かではありません。

販売元である丸善の社員でもあったことから、内田魯庵による命名ともいわれますが、内田魯庵が丸善に入社したのは1901年のことなので、「丸善の社員」という理由は当たりません。

丸善の販売担当であった金沢万吉が販売に力を注いだことから、彼の名にちなんだ「万さんの筆」からという説もありますが、「針先泉筆」から始まった名が、これほど短期間で変化するとは考え難いものです。

明治28年(1895年)には、アメリカのL.E.ウォーターマンが1883年に考案した、毛細管現象を利用した実用的な万年筆が輸入され、それまでのものは「針万年筆」、ウォーターマンのものは「ペン付き万年筆」と呼び分けられました。

やがて、ウォーターマンの万年筆が普及し、呼び分けられることはなくなりました。

5.松(まつ)

松

」とは、「マツ科の常緑高木」です。葉は針状で、2~3本または5本。雌雄同株。庭木や盆栽にするほか、材は薪炭・松明・建築・パルプなどに用いられます。樹脂は松脂、球果は松かさと呼ばれます。

松は、日本で古くから神の宿る神聖な木とされていることから、「神を待つ」の意味が妥当で、「祀る(まつる)」「祭り」などの意味も考えられます。

その他、松の語源には、久しく齢(よわい)を保つところから、「たもつ」の略転とする説。
行く末を待つ意味の「待つ」からとする説。
葉がまつ毛に似ているところから、まつ毛の「まつ」とする説。
葉が二股に分かれるところから「また(股)」の転など、他にも多くの説があります。

漢字の「松」は、「木」+音符「公(つつぬけ)」からなる字です。
葉が細く、間が透けているのを表しています。

日本で松は、長寿の象徴、正月の門松、松竹梅では筆頭となっているなど大変尊ばれている木ですが、中国では無骨者扱いされています。

6.真面目(まじめ)

真面目

真面目」とは、「真剣であること。本気であること。また、そのさま。誠意のこもっていること。誠実であること。また、そのさま」です。

まじめの「まじ」は、「まじろぐ」の「まじ」と同じで、しきりに瞬きするさまのことです。
じっと見つめるさまを表す「まじまじ」も、元は目をしばたかせるさまを表していました。

まじめの「め」は、「目」の意味です。
まじめは、緊張して目をしばたかせるほどの真剣な顔つきから、本気であることや、誠実なさまを表すようになりました。

また、近世には真剣な顔つきになることだけでなく、目をしばたたかせる姿から、おびえた硬い表情や白けた顔なども「まじめ」と言うようになりました。

漢字で「真面目」と表記するのは、意味からの当て字です。
真面目を「しんめんもく」もしくは「しんめんぼく」と読む場合は、まじめの意味の他に「人や物事の本来のありさま」「真価」の意味もあります。

7.孫の手(まごのて)

孫の手

孫の手」とは、「竹または木の一方を曲げ、手先のような形にした棒」です。背中を掻くのに用います。

孫の手は、「麻姑(まこ)の手が変化した語です。

麻姑とは、鳥のように長い爪をもつ、中国の伝説上の仙女です。
麻姑の爪で痒いところを掻いてもらったならば、非常に気持ち良いだろうということで、背中を掻く棒を「麻姑の手」と呼ぶようになりました。

この「麻姑の手」は、現在の「孫の手」のように小さく丸みを帯びたものではなく、爪は長く大きなものでした。

それが1500年頃に日本へ伝わり、現在の孫の手の形に少しずつ変化していきました。
「まこ」の音と小さな手の形から「孫」が連想され、「孫の手」と呼ぶようになりました。