前に「エモい古語辞典」という面白い辞典をご紹介しました。
確かに古語は現代の我々が普段あまり使わない言葉ですが、繊細な情感を表す言葉や、感受性豊かで微妙な感情を表す言葉、あるいはノスタルジーを感じさせたり、心を動かされる魅力的な言葉がたくさんあります。
そこで「エモい古語」をシリーズでご紹介したいと思います。
1.空
・蒼穹(そうきゅう):青空、大空。蒼天(そうてん)。蒼空(そうくう)。
「科挙」の話も出てくる浅田次郎(1951年~ )の「蒼穹の昴」という大変面白い長編小説があります。テレビドラマやミュージカルにもなりました。
・四天(してん):四季の空。春の空を「蒼天(そうてん)」、夏の空を「昊天(こうてん)」、秋の空を「旻天(びんてん)」、冬の空を「上天(じょうてん)」といい、これらを総称した言葉。四時(しじ/しいじ)の天。
・碧霄(へきしょう):青く晴れた空。碧空(へきくう)。碧天(へきてん)。
・碧落(へきらく):青空、大空。転じて遠方。
・碧羅の天(へきらのてん):晴れ渡った碧(あお)い空。「碧羅」は碧色の薄絹のことで、青空や山のたとえに使われます。
・皎天(きょうてん/こうてん):次第に白みゆく夜明けの空。または明るい月夜。「皎」は白く光って明るいさま。
・行合いの空(ゆきあいのそら):二つの季節が行き交う空。特に夏から秋へと移り変わるころの空。
2.空の現象
・霹靂(へきれき):雷のこと。雷の異名はほかに「電霆(でんてい)」「天鼓(てんこ)」「天雷(てんらい)」「鳴神(なるかみ)」「阿香(あこう。中国の伝説で雷車を押して雷雨をもたらしたと伝えられる少女の名前から)」「雨工(うこう。雨を降らせる羊似の神獣の名前から)」などがあります。
「青天の霹靂」という四字熟語の意味は、予想外のことや事件が突然起こることです。「晴天の霹靂」とも書きます。
青天の霹靂の「青天」は、雲ひとつない澄んだ青空のことです。「霹靂」は、突然かみなりが鳴ることです。
澄んだ青空に突然かみなりが鳴る意味から、予想外のことが突然起こることを「青天の霹靂」と言うようになりました。
青天の霹靂の由来は、中国南宋の詩人 陸游(りくゆう)が『九月四日鶏未鳴起作』の中で、「青天、霹靂を飛ばす」と表現したことによります。
「青天、霹靂を飛ばす」は、病床に伏していた陸游が突然起き上がり、筆を走らせた勢いをかみなりにたとえたもので、本来、「青天の霹靂」は筆の勢いを表す言葉でした。
・百篝(ももかがり):雷光のこと。雷の光が稲の穂と結合して穂を実らせると考えられたことから、「稲妻(いなづま)」「稲魂(いなだま)」とも言います。
・春雷(しゅんらい):春に鳴る雷。多くは日本付近にできた寒冷前線に向かって南から暖気が流れ込み、積乱雲が発達して起こります。雹(ひょう)を伴うこともあります。春の雷(らい)。春の季語。
・神解け(かみとけ):雷が落ちること。かみとき。
・雪起こし(ゆきおこし):雪が降ろうとするころに発生する雷。雷鳴が寝ていた雪を起こすようであることから。冬の季語。
・夕雷(ゆうかみ):夕方に鳴る雷。
・遠雷(えんらい):遠くで鳴っている雷。夏の季語。
・霹靂神(はたたがみ):激しい雷。「はたた」は激しく鳴り響く意の「はたたく」の省略。夏の季語。
・しだらでん:大雨や大風に伴う電光雷鳴。震動雷電の音変化とみられます。
・雲雷鼓掣電(うんらいぐせいでん):観音経の一節で、落雷を防ぐ呪文。くわばらくわばら。
・雷斧(らいふ):石器時代の石斧(せきふ)や石槌(せきつい)などのこと。雷雨の後などに土にうまっていたものがあらわれて発見されることが多かったことから、雷神の持ち物と考えられたことによります。
・天弓(てんきゅう):虹の異名。
・蜃気楼(しんきろう):空気の温度差による光の屈折で、遠くの景色が浮き上がって見えたり、海上で船がさかさまに浮き上がって見えたりする現象。
中国の歴史書「史記」に、蜃(大ハマグリ)が気を吐いて空中に楼閣を生み出しているという記述があり、これが語源とされています。「貝の城」「貝楼(かいろう)」「貝櫓(かいやぐら)」「空中楼閣」「海市(かいし)」などさまざまな異名があります。
山で見える蜃気楼は人を化かすキツネの仕業と考えられていたことから、「狐館(きつねだち)」「狐の森」「狐隊(きつねたい)」とも言われます。
・龍燈(りゅうとう):広島、福島など日本各地で見られる日没後に海上に赤い火の玉が連なって見える現象。竜神がともした火だと考えられましたが、蜃気楼だとされています。
・幻氷(げんぴょう):オホーツク海沿岸で見られる流氷の蜃気楼。春の訪れを告げる風物詩として知られます。「おばけ氷」とも言います。
・逃げ水(にげみず):よく晴れた日に地面から立つ水蒸気が水たまりのように見える現象。近づくと水たまりも遠のいて逃げているように見えることから。「地鏡(じかがみ)」とも言います。春の季語。
・糸遊(いとゆう):春の暖められた空気が糸が遊ぶようにゆらゆら立ち上ること。「陽炎(かげろう)」の別称。
もともとは春の晴れた日に空中をただようクモの糸が光に屈折してゆらゆらと光って見える現象のこと。春の季語。
3.太陽
・飛輪(ひりん):太陽の異名。ほかに「火輪(かりん)」「日輪(にちりん)」「朱炎(しゅえん)」「紅鏡(こうきょう)」「天つ日(あまつび)」「麗天(れいてん)」、太陽の中に三本脚のカラスがいるという中国の伝説から「日烏(にちう)」「金烏(きんう)」「金鴉(きんあ)」「赤烏(せきう)」などの異名があります。
・炎帝(えんてい):夏をつかさどる神。太陽。夏の季語。
または、古代中国の伝説上の帝王で、農耕や医薬の創始者とされる「神農(しんのう)」
・朝日子(あさひこ):朝の太陽の異名。「子」は親しみを示す接尾語。
・薄日(うすれび/うすらび/うすび):薄曇りの日の弱い日差し。
・斜陽(しゃよう):日没前の太陽。
太宰治の小説のタイトルとしても有名ですね。「斜陽産業」という有り難くない呼び方もあります。
・うらうら:日差しが明るく穏やかなさま。のどかなさま。
・幻日(げんじつ):空気中の小さな氷の粒によって太陽光が屈折し、太陽と同じ高度の離れた位置に光が見える現象。
・日暈(にちうん):太陽の周囲に生じる光の輪。
4.雲
・雲井/雲居(くもい):雲のある空の高いところ。大空。天上。
・八雲(やくも):何重にも重なり合っている雲。「八雲さす」「八雲立つ」は出雲(いづも)の枕詞。
また、日本神話でスサノオが新婚のときに詠んだ日本最古の和歌とされる「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」(意味:雲がたくさん重なっている出雲の地で、妻を守れるようにたくさんの垣根を重ねた家をつくろう)から、「八雲沙汰(やくもざた)」で結婚話を意味します。
・雲の果たて(くものはたて):雲の果て。空の果て。
・烟嵐/煙嵐(えんらん):山中にかかった靄(もや)。
・白玉姫(しらたまひめ):霞(かすみ)の異名。春の季語。
・遠霞(とおがすみ):遠くにたなびいている霞。春の季語。
・春霞(はるがすみ):春に立ち込める霞で遠くの景色がうっすらぼやけて見える状態。春の季語。
・八重霞(やえがすみ):何重にも重なって立ち込める霞。
・紅の霞(くれないのかすみ):朝日や夕日の色に染まって赤く見える霞。紅霞(こうか)。
・彩雲(あやぐも):朝日や夕日に美しく染まった雲。
・繭雲(まゆぐも):まゆのような形をした雲。
・有無雲(ありなしぐも):あるかないかわからないほどわずかな雲。
・一朶の雲(いちだのくも):一筋の雲。「一朶」は花の一枝のこと。
・蝶々雲(ちょうちょうぐも):冬の強風のときにできる、ひらひらとチョウのように流れる小さな積雲。冬の季語。
・花曇り(はなぐもり):櫻が咲くころの明るく曇った空模様。春の季語。
・養花天(ようかてん):花曇りの天気を意味する漢語。湿潤な気候が花を育てるとされていたことから。春の季語。
・鳥曇り(とりぐもり):渡り鳥が北へ帰るころの曇り空。北に向かう渡り鳥が雲間はるかに見えなくなることは「鳥雲に入る(とりくもにいる)」と表現します。春の季語。
・卯の花曇り(うのはなぐもり):卯の花(ウツギの花)が咲く陰暦四月の曇った空模様。
・垂天(すいてん):雲などが天から垂れ下がるように空いっぱいに広がること。
・靄靄(あいあい):雲、霞、靄(もや)が集まり、ゆっくりたなびくさま。
・靉靆(あいたい):雲がたなびくこと。雲などが空を厚くおおっているさま。また、気持ちや表情などが暗いこと。
・天霧る(あまぎる):雲や霧などで空がかすみわたること。空一面曇ってどんよりすること。
・天霧らす(あまぎらす):雪、かすみ、もやなどで空を一面に曇らせること。
5.風
・科戸の風(しなとのかぜ):日本神話に登場する風の神シナツヒコ(級長津彦命)が起こす、一切の罪や穢(けが)れを吹き払ってくれる風。
・羊角風(ようかくふう):つむじ風の異名。風が曲がりくねって吹き上がる様子を羊の角にたとえた語。
・天狗風(てんぐかぜ):突然はげしく吹きおろす旋風。
・勁風(けいふう):強く吹く風。
・颶風(ぐふう): 激しく吹く風。古く中国で台風のように旋回する風を呼んだもの。秋の季語。
・黒風(こくふう):塵やほこりを舞い上がらせる強い風。
・朝羽振る(あさはふる):風が激しく吹くことを朝の鳥が羽ばたく様子にたとえる和歌用語。「夕羽振る(ゆうはふる)」(意味:夕方、鳥が羽ばたくように、波や風が立つこと)と対になっています。
・雲雀東風(ひばりごち):春、ヒバリが鳴くころに吹く東風。東風は古語で「こち」と言います。春の季語。
菅原道真の有名な「東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」という歌がありますね。意味は「春風が吹いたら、匂いを(京から太宰府まで)送っておくれ、梅の花よ。主人(菅原道真)がいないからといって、春を忘れてはならないぞ」ということです。
・花信風(かしんふう):花が咲く季節が来たことを知らせる春風。「信」は便りのこと。
また、特に「二十四節気」の「小寒(しょうかん)」(一月六日ごろ)から「穀雨(こくう)」(四月二十日ごろ)までの八つの節気ごとに咲く花を知らせる風。小寒にはウメ・山茶(ツバキ)・スイセン、啓蟄(けいちつ)にはモモ・棣棠(ていとう)(ヤマブキ)・バラというように三種類ずつ花が配されます。
・風光る(かぜひかる):風が春の光を浴びてキラキラ輝いているように感じられる様子を形容した言葉。春の季語。
・風薫る(かぜかおる):初夏に若葉の間を風がさわやかに吹き抜ける様子を形容する言葉。夏の季語。
・黄雀風(こうじゃくふう):陰暦五月ごろに吹く風。この風の吹く時期に海の魚が黄雀(スズメの一種)になるという中国の伝説から。夏の季語。
・青嵐(せいらん/あおあらし):新緑の木々を吹き抜けるる強い風。夏の季語。
1973年に結成された「青嵐会」という自民党若手の政策集団がありましたね。会名は「渾沌停滞した政界に爽やかな風を送り込もう」という意味を込めて石原慎太郎(1932年~2022年)が命名しました。
・星の出入り(ほしのでいり):陰暦十月中旬に吹く北東の風。江戸時代の方言辞典「物類称呼(ぶつるいしょうこ)」では、夜明けにすばる星が西に入る時期に吹くために名付けられたとされています。
・色なき風(いろなきかぜ):秋風。「陰陽五行説」で秋に白を配し、「素風(そふう)」といったことから。秋の季語。
・小春凪(こはるなぎ):冬の初めのころの穏やかな海のなぎ。冬の季語。
・夜半の嵐(よわのあらし):夜吹く風。
親鸞が詠んだとされる和歌「明日ありと 思ふ心の あだ桜 夜半に嵐の 吹かぬものかは」(意味:明日も桜を見ることができるだろうと思っていても、夜中に強い風が吹いて散ってしまうかもしれない)にもとづき、はかないこと、思いがけないことが起こることのたとえ。
「散るをいとふ 世にも人にも さきがけて 散るこそ花と 吹く小夜嵐(さよあらし)」これは三島由紀夫の辞世で、「(現代のように)散るのを厭うこの世であっても、人に先駆けて散ることこそが花なのだと言うかのように、花を散らすべく吹きつける小夜の嵐よ」という意味です。
三島由紀夫(1925年~1970年)は、小説家・劇作家・随筆家・評論家・政治活動家です。本名は平岡 公威(ひらおか きみたけ)。
戦後の日本文学界を代表する作家の一人であると同時に、「ノーベル文学賞」候補になるなど、日本語の枠を超え、日本国外においても広く認められた作家です。『Esquire』誌の「世界の百人」に選ばれた初の日本人で、国際放送されたテレビ番組に初めて出演した日本人でもあります。
三島由紀夫は1968年憲法改正を求める組織「楯(たて)の会」(元の名称は「祖国防衛隊」)を結成し、1970年11月25日東京市ヶ谷の自衛隊総監部を襲いましたが事成らず、割腹自殺しました(三島事件)。『豊饒の海』四部作が絶筆です。
6.雨
・雨催い(あまもよい):いまにも雨が降りそうな空の様子。雨模様。
・遣らずの雨(やらずのあめ):帰ってほしくない人を引きとめるかのように降ってくる雨。
朝丘雪路の「雨がやんだら」というヒット曲もありましたね。
・雨隠り/雨籠り(あまごもり):雨のため外出せずにひきこもること。
・雨障(あまつつみ):雨で外に出られずひきこもること。
・糸雨(いとさめ):糸のようにこまかい雨。
・猫毛雨(ねこんけあめ):猫の毛のようにこまやかな小雨。
・袖笠雨(そでがさあめ):袖が笠の代わりになるくらい弱い雨。
・天泣(てんきゅう):雲がないのに降る雨。
・怪雨(あやしきあめ):江戸時代の百科事典「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」で報告されている異物まじりの雨。「ファフロツキーズ(*)現象」のこと。
(*)「ファフロツキーズ(fafrotskies)」もしくは「怪雨(かいう)」とは、一定範囲に多数の物体が落下する現象のうち、雨・雪・黄砂・隕石のようなよく知られた原因によるものを除く「その場にあるはずのないもの」が空から降ってくる現象を指します。「ファフロツキーズ現象」、「ファフロッキー現象」とも言います。
「fafrotskies」という言葉は、オーパーツ(OOPARTS)の命名者である超常現象研究家アイヴァン・サンダーソンの造語で、「falls from the skies」(空からの落下物)を略したもの。現象としては日本でも古くから知られています。
・魄飛雨(はくひあめ):人魂(ひとだま)が飛ぶとされる、秋口に降る激しいにわか雨。「運雨(はこびあめ)」とも言います。
・降りみ降らずみ(ふりみふらずみ):(雨や雪などが)降ったり降らなかったりする様子。
・白雨(しらさめ/はくう):夕立。にわか雨。夏の季語。
・叢雨(むらさめ):急に激しく降ったり、弱まったりする雨。「驟雨(しゅうう)」とも言います。夏の季語。
・沛然(はいぜん):雨が一時的に勢いよく降るさま。
・篠突く雨(しのつくあめ):篠(細い竹)を突き立てるように激しい勢いで降る雨。
・木の芽雨(このめあめ):木の芽が萌えるころに降る雨。春の季語。
・催花雨(さいかう):花が開くのを促すように降る春の雨。春の季語。
・紅の雨(くれないのあめ):春、花に降りそそぐ雨。「紅雨(こうう)」。春の季語。
・桜雨(さくらあめ):サクラの花が咲くころに降る雨。春の季語。
・春霖(しゅんりん):春の長雨。春の季語。
・栗花落(つゆり):梅雨入りの当て字(梅雨入りがクリの花が散る時期にあたることから)。姓にも使われます。「ついり」とも言い、「堕栗花」とも書きます。
・白映え(しろばえ):梅雨のころの、小雨が降りながら時々空が明るくなって晴れそうになる空模様。夏の季語。
・翠雨(すいう):新緑の草木をうるおす雨。「緑雨(りょくう)」「青葉雨(あおばあめ)」。夏の季語。
・夏霖(かりん):夏の長雨。
・秋霖(しゅうりん):秋の長雨。秋の季語。
・洒涙雨/灑涙雨(さいるいう):七夕の夜に降る雨。逢瀬(おうせ)が叶わなかった牽牛と織女が悲しんで流す涙の雨とも、逢瀬の後に流す涙が雨になったものともいわれます。「洒」は注ぐの意。
・時知る雨(ときしるあめ):時雨(しぐれ)のこと。時雨とは、おもに晩秋から初冬にかけての、降ったりやんだりするにわか雨。
・小夜時雨(さよしぐれ):夜に降る時雨。冬の季語。
・身を知る雨(みをしるあめ):悲しくて流す涙を雨に見立てた言葉。自分の身の悲しさを知る雨という意味。
・樹雨(きさめ):木の葉や枝についた霧の粒が水滴となって落ちること。夏の季語。
7.露・霜・氷
・月の雫(つきのしずく):露(つゆ)の異称。「雁の涙(かりのなみだ)」とも言います。
・白露(しらつゆ/はくろ):早朝、草木におりて、白く光って見えるつゆ。秋の季語。
・青女(せいじょ):霜(しも)の異称。中国前漢時代の思想書「淮南子(えなんじ)」に登場する、霜・雪を降らせる女神の名から。冬の季語。
・三つの花(みつのはな):霜の異名。雪を意味する「六つの花(むつのはな)」に対してつけられた名称。
・鶴の戒め(つるのいましめ):霜の異名。霜の降るのをツルが鳴いて知らせると信じられていたことから。
・忘れ霜(わすれじも):春の終わりごろにおりる霜のこと。「別れ霜(わかれじも)」「名残の霜(なごりのしも)」。春の季語。
・薄氷(うすらひ(い)/うすごおり/はくひょう):春先にうっすらと張った氷。春の季語。
・氷の花(こおりのはな):薄氷の上に水蒸気が凍った結晶ができ、花のように見えること。冬の季語。
・氷面鏡(ひもかがみ):凍った水面が鏡のようになったもの。冬の季語。
・木花(きばな):「霧氷(むひょう)」のこと。過冷却された霧粒が風で木などに吹きつけられて凍結し、木に咲いた白い花のように見えることから。冬の季語。
・垂氷(たるひ):「氷柱(つらら)」のこと。冬の季語。
・星入り氷柱(ほしいりつらら):俳人・鷹羽 狩行(たかは しゅぎょう)(1930年~ )の俳句「みちのくの 星入り氷柱 吾に呉れよ」(「誕生」1965年)に登場した造語。星をちりばめた氷柱。
・花氷(はなごおり):花を入れて凍らせた氷柱。夏の季語。
・細氷(さいひょう):大気中の水蒸気が昇華してできた微細な氷の結晶がゆっくり降ってくること。ダイヤモンドダスト。
8.雪
・六花(りっか):雪の異名。雪の結晶が六角形であることから。「六つの花(むつのはな)」「雪華(せっか)」。冬の季語。
・銀花(ぎんか):降る雪をたとえていう言葉。冬の季語。
・犬の伯母(いぬのおば):雪の異名。伯母が来ると子供が喜ぶように、雪が降ると犬が喜ぶことから。
・不香の花(ふきょうのはな):雪の異名。このほか、「匂わぬ花」「天花(てんか)」「瑞花(ずいか)」「玉の塵(たまのちり)」などの異名があります。
・珂雪(かせつ):白瑪瑙(しろめのう)や雪のように真っ白いもの。または真っ白な雪。
・雪月花(せつげつか):唐の詩人・白居易の詩句「雪月花時最憶君」(雪月花のと時最も君を想う)による語。冬の雪と秋の月と春の花。四季折々の景物。
・雪催い(ゆきもよい):今にも雪が降りそうな空の様子。雪模様。冬の季語。
・沫雪/淡雪(あわゆき):沫(あわ)のようにやわらかく消えやすい雪。春の季語。
・細雪(ささめゆき):細かい雪。冬の季語。
谷崎潤一郎の小説のタイトルとして有名ですね。
・小米雪(こごめゆき):粉米のように細かい雪。冬の季語。
・風花(かざはな/かざばな):晴れた日に花びらのように風に舞う雪。冬の季語。
・灰雪(はいゆき):灰のようにひらひらと降ってくる雪。
・霏霏(ひひ):雪や雨がたえまなく降りしきる様子。
・雪風巻(ゆきしまき/ゆきじまき):雪まじりの風が激しく吹き荒れること。吹雪。冬の季語。
・暮雪(ぼせつ):夕暮れ時に降る雪。冬の季語。「近江八景」のひとつに「比良の暮雪」があります。
・花弁雪(はなびらゆき):花びらのように、はらはらと舞い落ちるおおびらの雪。
・綿帽子雪(わたぼうしゆき):おおびらの雪。「牡丹雪(ぼたんゆき)」。
・帷子雪(かたびらゆき):薄くて大きな雪片。またはうっすら積もった雪。「帷子」はひとえの衣服の総称。春の季語。
・斑雪(はだれ):まだらにうっすら降り積もった雪。春の季語。
・雪明り(ゆきあかり):積もった雪の反射で、夜も周囲がうす明るく見えること。冬の季語。
小柳ルミ子に「雪あかりの町」というヒット曲がありましたね。
・撓り雪(しおりゆき):積もって木の枝などをたわませる雪。
・垂り(しずり):木の枝に降り積もった雪が落ちること、またその雪。「垂り雪(しずりゆき)」。冬の季語。
・残んの雪(のこんのゆき):残っている雪。
・友待つ雪(ともまつゆき):新しい雪が来るのを待っているようにとけずに残っている雪。「友待ち雪(ともまちゆき)」。
・彌彌雪(いややゆき):とけずに残っている雪の上にさらに重なる雪。
・雪えくぼ(ゆきえくぼ):積雪の上に日差しや雨などがあたってできたくぼみ。
・雪解雫(ゆきげしずく):樹木や屋根などからしたたり落ちる雪解けの水。ゆきしずく。春の季語。
・雪の果て(ゆきのはて):暖かくなるころに、降り納めのように降る雪。「名残の雪(なごりのゆき)」「涅槃雪(ねはんゆき)」。春の季語。
イルカに「なごり雪」という大ヒット曲がありますね。