エモい古語 自然(その4)色 亜麻色・不言色・桜鼠・水柿・蘇芳・萌黄色・洎夫藍色

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亜麻色

前に「エモい古語辞典」という面白い辞典をご紹介しました。

確かに古語は現代の我々が普段あまり使わない言葉ですが、繊細な情感を表す言葉や、感受性豊かで微妙な感情を表す言葉、あるいはノスタルジーを感じさせたり、心を動かされる魅力的な言葉がたくさんあります。

そこで「エモい古語」をシリーズでご紹介したいと思います。

1.色

・亜麻色(あまいろ):亜麻を紡いだ糸の色のような黄色がかった淡い褐色。ブロンドの髪の形容に用いられることが多いようです。

亜麻色の髪の乙女

1968年のヴィレッジ・シンガーズの「亜麻色の髪の乙女」という歌がありました。2002年に島谷ひとみがカバーして再びヒットしましたね。

・鳥の子色(とりのこいろ):ニワトリの卵の殻のような淡い黄色。

・不言色(いわぬいろ):クチナシの実で染められた「支子色(くちなしいろ)」の別名で、「口無し」にかけた色名。少し赤みのある黄色。

・尾花色(おばないろ):枯れたススキの穂のような色。尾花はススキの古名(穂が尾に似ることから)。

・琥珀色(こはくいろ):琥珀のような透明感のある黄褐色。琥珀は地質時代の樹脂の化石。

・朽葉色(くちばいろ):枯れ葉のような淡い茶色。赤朽葉、青朽葉、黄朽葉などの種類があります。

・杏子色(あんずいろ):アンズの果皮のような赤みのある黄色。

・赤白橡(あかしらつるばみ/あかしろつるばみ):白味がちの淡いオレンジ色。ハゼノキ(櫨)の黄色にアカネ(茜)色を重ねたもの。「つるばみ」はどんぐりの古名。

・桜鼠(さくらねずみ):うすく墨がかってくすんだサクラ色。

・灰桜(はいざくら):灰色がかったサクラ色。

・桃花褐(つきそめ):モモ色に染めること。

・朱鷺色(ときいろ):トキ(朱鷺/鴇/桃花鳥)の風切羽(かざきりばね/かざきりば)の色で、黄みのあるうすいピンク色。

・槿花色(むくげいろ):ムクゲ(槿)の花のようなくすみピンク。

・水柿(みずがき):うすく灰がかった紅赤色。

・桃紅色(とうこうしょく):モモの実のような紅みの強いピンク色。

・朱華色(はねずいろ):ハネズ(朱華/唐様花/棠棣)の花のような淡い紅色。ハネズは庭梅(あるいは庭桜)またはザクロの花の古名です。色が褪(あ)せやすいことから、移ろいやすいことの枕詞として使われます。

・猩猩緋(しょうじょうひ):南蛮貿易で輸入された毛織物の色で、鮮やかな赤色。猩猩の血の色で染めたと信じられたことから。戦国武将たちはこぞって猩猩緋の羅紗(らしゃ)や天鵞絨(ビロード)で陣羽織(じんばおり)を仕立てました。

・緋色(ひいろ):アカネ(茜)染めの鮮やかな赤色。平安時代は恋しく思う気持ちを「思ひ」と書き表したことから、「ひ」→「緋」「火(のように燃える思い)」という連想で、「思いの色」と呼ばれることもありました。

・蘇芳(すおう):スオウで染めた紫がかった赤。

・今様色(いまよういろ):ベニバナ(紅花)で染めた紫がかった紅。今様とは「今流行の」という意味の古語で、平安時代の流行色。

・銀朱(ぎんしゅ):水銀を焼いてつくる赤色顔料。黄みの強い赤。バーミリオン。

・辰砂(しんしゃ):天然に産出される硫化水銀で、血のような赤の顔料。道教では、仙人になれる薬「仙丹(せんたん)」の原料とされましたが有毒です。

・密陀僧(みつだそう):鉛を溶かして酸化させて得る黄色の顔料。酸化の具合により黄みの強いものは「金密陀(きんみつだ)」、白っぽいものは「銀密陀(ぎんみつだ)」と呼ばれます。鉛からつくられる顔料ではほかに、白色でおしろいにも使われた「鉛白(えんぱく)」、朱色の「鉛丹(えんたん)」がありますが、有毒です。

・焦香(こがれこう):「香色(こういろ)」をさらに濃くした色。「香色」は、丁子(ちょうじ)などの香料で染めた黄色がかった薄赤色。

・朱殷(しゅいん):時間がたって酸化した血のような黒ずんだ朱色。

・萌黄色(もえぎいろ):春にいっせいに萌え出ずる草木の新芽のような明るい黄緑。若者の象徴とされ、「平家物語」などの軍記物では若武者が身につけていることが多い色です。

・青白橡(あおしらつるばみ/あおしろつるばみ):黄を出す苅安(かりやす)と紫を出す紫根(しこん)とで染めた、やや灰色がかった緑色。光によって薄い茶色にも緑にも見える色とされます。

・深碧(しんぺき):深い緑色。同様の緑に「常磐(ときわ)色」があります。

・緑青(ろくしょう):銅に生じるサビのようなくすんだ青緑色。顔料は孔雀石から作られていました。

・花緑青(はなろくしょう):青みの強い緑青の色。酢酸銅と亜砒酸銅から作られた人工顔料。「パリス・グリーン」の和名で、強い毒性を持ちます。

・蒼色(そうしょく):草木が生い茂る野山のような深青緑色。

・秘色(ひそく/ひしょく):中国唐代・越州窯で焼かれた最高級の青磁(せいじ)(秘色青磁)の色。緑がかった水色。

・水浅葱(みずあさぎ):やや緑がかった淡い青。

・淡水色(うすみずいろ):やや緑みのある淡い水色。

・露草色(つゆくさいろ):ツユクサの花のような、鮮やかな青。

・群青(ぐんじょう):澄んだ藍青色。アズライト(藍銅鉱)という石を砕いて作られる日本画材の岩絵具に由来する色名。

・群青世界(ぐんじょうせかい):俳人・水原秋櫻子の造語で、滝壺に満ちる青い水と滝を取り巻く木々が作り上げる空間を表現した言葉。文殊菩薩の浄土をいう仏教用語の「金色世界(こんじきせかい)」から連想したとされます。

・紺青(こんじょう):人工顔料による鮮やかな藍色。海・湖や空の形容に使われることが多い言葉です。プルシアンブルー。ドイツで発明されたため、「伯林青(ベレンス)」とも呼ばれます。

・紺碧(こんぺき):真夏の空のような深く濃い青色。

・暗碧(あんぺき):黒みを帯びた青色。

・白群(びゃくぐん):群青の粒を細かく砕いて群青を淡くした、白みがかった青色。

・白藍(しらあい):薄い藍色。

・紫苑色(しおんいろ):シオンの花のようなくすんだ青色。

・紅掛空色(べにかけそらいろ):ほのかに赤みがかった淡い空色。

・紅掛花色(べにかけはないろ):明るい青紫色。花色(「縹色(はなだいろ)=薄い藍色」)に紅を染め重ねた色。

・洎夫藍色(さふらんいろ):秋に咲くサフランの花弁のような淡紫色。染料や薬になる花柱の部分は漢名で「番紅花」といい、番紅花色(さふらんいろ)は花柱の濃赤褐色、もしくは染料の黄色を指します。

・瑠璃色(るりいろ):紫みを帯びた濃い青。鉱石の瑠璃(ラピスラズリ)にもとづく名前。「海の向こうから来た青」を意味する英名ウルトラマリン(ultramarine)は、このラピスラズリを粉砕、精製して得られた高価な青色顔料。

・碧瑠璃(へきるり):澄んだ濃い青色の瑠璃。またその色。青く澄んだ水や空のたとえ。

・菫色(すみれいろ):スミレのようなやや赤みの強い紫色。

・二藍(ふたあい):紅花(くれない)と藍とを重ねた紫色。重ね具合により色合いに幅があります。

・白妙(しろたえ):栲(たく。コウゾの古名)の木の皮の繊維で織った白い布。または白い色。

・月白(げっぱく):月の光を思わせるうっすら青みがかった白色。

・空色鼠(そらいろねず):薄曇りの空のような青みのある明るい灰色。

・相思鼠(そうしねず):うっすら紫がかったネズミ色。身を寄せ合って仲良く羽づくろいをする小鳥「相思鳥(そうしちょう)」の背中の色にちなんだ名前。

・銀灰色(ぎんかいしょく):銀色を帯びた灰色。

・鈍色(にびいろ):濃い灰色。喪服に用いました。

・瞑色/冥色(めいしょく):闇の迫った夕暮れどきのほの暗い色。暮色(ぼしょく)。

・呂色/蝋色(ろいろ):油を加えずに精製した黒うるしのような深い黒色。

・涅色/皂色(くりいろ):水底によどむ黒い土で染めた黒色。

・漆黒(しっこく):黒うるしを塗ったような艶めいた黒。同様のしっとりした黒に、「烏の濡れ羽色(からすのぬればいろ)」(略して「濡羽色」)があります。