エモい古語 言葉(その5)雅語 よも・かんばせ・ゆんで・きざはし・わくらば・わたつみ

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雅語

前に「エモい古語辞典」という面白い辞典をご紹介しました。

確かに古語は現代の我々が普段あまり使わない言葉ですが、繊細な情感を表す言葉や、感受性豊かで微妙な感情を表す言葉、あるいはノスタルジーを感じさせたり、心を動かされる魅力的な言葉がたくさんあります。

そこで「エモい古語」をシリーズでご紹介したいと思います。

1.雅語

・永久(とわ):いつまでも変わらないこと。とことわ。とこしえ。

・一日(ひとひ):いちにち。または一日中。日一日(ひひとひ)は一日中、夜一夜(よひとよ)は一晩中の意。

・一生(ひとよ):生まれてから死ぬまでの間。終生。

・終日(ひもすがら):朝から晩まで。一日中。

・晦(つごもり):月の光が隠れて見えなくなること。月末。

・間(あわい):あいだ。

・四方(よも):東西南北、前後左右の四つの方向。まわり。ぐるり。

・何処(いずこ):どこ。古くはいずく。何方(いずかた)。

・最果(さいはて):これより先はないという果ての場所。

・遠つ国(とおつくに):遠くの国。または黄泉(よみ)の国。遠国(おんごく)。

・外国(とつくに):都から遠く離れている国。異国(いこく/ことくに)。

・肉(しし):にく。なお、肉叢(ししむら)は肉のかたまり、転じて肉体。

・背(そびら):背中。「せな」とも言います。

・肌(はだえ):皮膚。

・顔(かんばせ):かお。

・顎(あぎと):あご。

・目見(まみ):まなざし。目の表情。

・眦(まなじり):目尻(めじり)。なお、まなかい(眼間/目交)は目と目の間、転じて「目の前」の意。

・目蔭(まかげ):光をさえぎるために手のひらを目の上にかざすこと。

・腕(かいな):二の腕。肩から肘までの部分。

・左手(ゆんで):ひだりて。弓を持つ手であることから。

・右手(めて):みぎて。馬上で手綱(たづな)を取る手であることから。

・掌(たなごころ):手のひら。「たなそこ」、「たなぞこ」とも言います。

・蹠(あなうら):足の裏。「あうら」とも読みます。

・跫音(あのと):足音。

・和毛(にこげ):細く柔らかな毛。うぶ毛。

・嬰児(みどりご):(中世までは「みどりこ」)三歳くらいまでの子供。

・骸(むくろ):からだ。または死骸。

・屍(かばね):死体。または死体の骨。

・屍所(かばねどころ):墓所。または死に場所。

・葬事(はふりごと):葬送。

・汝(なれ):おまえ。親しい人、目下の者に対して用いる人称代名詞。古くは「な」で、助詞をともなって「汝の」「汝が」などと使われました。

島崎藤村の詩を大中寅二が作曲した「椰子の実」の歌詞にも出てきますね。

・吾子(あこ):我が子。古くは一人称代名詞「我/吾」を「あ」「あれ」と言いましたが、中古以降「わ」「われ」が使われるようになりました。

・誰がために(たがために):だれのために。不定称は古くは「た」「たれ」で、近世後期以降「だれ」になりました。

アメリカの小説家であるアーネスト・ヘミングウェイ(1899年~1961年)の長編小説「For Whom the Bell Tolls」の邦題「誰がために鐘は鳴る」が有名ですね。

・輩/徒(ともがら):仲間。

・同胞(はらから):兄弟姉妹。

・族(うから):血族。親族。眷族。

・武士(もののふ):武者。戦士。

・兵(つわもの):武器。または兵士。

・階(きざはし):階段。

・茵(しとね):寝る時の敷物。

・臥所(ふしど):寝るところ。

・御舎/御殿(みあらか):宮殿、御殿をうやまっていう古語。

・獄(ひとや):牢獄。

・園生(そのう):庭。尊んで「御園(みその)」「御園生(みそのう)」とも言います。手入れをする人は園丁(えんてい)。

・断崖(きりぎし):垂直に切り立った険しい崖。岨(そわ。近世以降、そば)とも言います。

・病葉(わくらば):病気や虫食いで枯れた葉。寒くなる前に一足先に散っていく葉であることから、夏の季語とされます。

・蝸牛(ででむし):かたつむり。でんでんむし。まいまい。夏の季語。

・蛇(くちなわ):ヘビの古名。

・削り氷(けずりひ):かき氷。「あてなるもの」(上品なもの)として「枕草子」にも登場します。

「削り氷に甘葛 (あまづら) 入れて、新しき金鋺 (かなまり) に入れたる」<「枕草子」四十二段>

・土塊(つちくれ):土のかたまり。

・真砂(まさご):細かい砂。無数にあるもののたとえ。

・塵芥(ちりあくた):ごみくず。

・笞(しもと):刑罰で使う若枝で作った鞭。

・贄(にえ):神などへの捧げもの。または犠牲。

・鬨(とき):戦場で開戦を告げ、士気を鼓舞する叫び声。「鬨をあげる」「鬨の声」などと言います。

・咎(とが):罪。あやまち。

・よすが:よりどころとするもの。

・雷(いかずち):かみなり。

・海神(わたつみ/わだつみ):海の神。または海。山の神は山衹(やまつみ)。

・調(しらべ):音律。

・言の葉(ことのは):言葉。和歌。

・魔歌(まがうた):悪魔の歌。

・常闇(とこやみ):永久に暗闇であること。心が闇の中にまどうこと。「常夜(とこや)」は永遠に夜が続くこと。

・逆(さかしま):さかさま。なお「道理に反する」の意味では邪(よこしま)という言葉もあります。

・静寂(しじま):静まり返っていること。

・眩暈(くるめき):めまい。

・虚け(うつけ):ぼんやりしていること。またはそのような者。

・金色(こんじき):黄金の色。黄金色(こがねいろ)。

・銀/白銀(しろがね):銀の古名(古くは「しろかね」)。なお、黄金は「くがね」、銅は「あかがね」です。

万葉集」にある山上憶良(やまのうえのおくら)(660年~733年頃)の「子等を思ふ歌」という歌にも出てきます。

銀(しろがね)も 金(くがね)も玉(たま)も 何せむに まされる宝 子に如(し)かめやも

・鉄(くろがね):鉄の古名。なお、掘り出したまま精錬していない鉱物、あるいは鉄を粗金(あらかね/あらがね)と言います。

有名な「軍艦マーチ」という軍歌の歌詞にも出てきますね。

・白らか(しららか/しろらか):はっきりと白いさま。

・か黒し(かぐろし):<形容詞>黒々としている。

・早緑(さみどり):若草や若葉の緑色。

余談ですが、第三高等学校(旧制高校)の寮歌「逍遥の歌」(紅萌ゆる丘の花)の歌詞にも早緑が出てきます。

・直青(ひたあお):一面に青いさま。一面に紅色であるさまは直紅(ひたくれない)、一面に黒いさまは直黒(ひたぐろ)、一面に白いさまは直白(ひたしろ)と言います。

・あえか:<形容動詞>か弱い様子。きゃしゃ。

・清か(さやか):<形容動詞>はっきりとしているさま。形容詞は清けし(さやけし)。副詞は清に(さやに)。秋の季語。

・漫ろ(すずろ):<形容動詞>当てもなく心のおもむくままにすること。漫ろ歩きは散歩。漫ろ心は落ち着かない心。漫ろ事はつまらない浮ついたこと。

・なよびか:<形容動詞>手ざわりや肌ざわりが柔らかいさま。

・円か(まどか):<形容動詞>丸いさま。おだやかなさま。なお円(つぶ)らは、丸くてかわいいさま。

・時じく(ときじく):<形容動詞>季節外れであるさま。いつでもあるさま。「古事記」に登場する「非時香果(ときじくのかのみ)」は、いつでもよい香りを放つタチバナ(橘)の実のこと。

・ゆくりなく:<副詞>思いがけず。

・幽き(かそけき):音や色などが今にも消え入りそうなほどほのかなさま。古語「幽けし」の連体形。

・幼い/稚い(いとけない):<形容詞>あどけないさま。

・頑是ない(がんぜない):<形容詞>聞き分けがない。

・あやなす:美しくいろどる。

・殺める(あやめる):危害を加える。殺す。

・いざよう:ためらう。

・慈しむ(いつくしむ):かわいがる。

・穿つ(うがつ):穴を空ける。なお、「毀(こぼ)つ」は、壊す、破壊するの意。

・舂く(うすづく):太陽がまさに沈もうとしている。

・倦む(うむ):同じことの繰り返しに退屈する。

・笑む(えむ):ほほえむ。花が咲く。

・訪う(おとなう):おとずれる。原義は「音をたてる」で、訪問を知らせる、手紙を送るの意も。

・叫ぶ/哭ぶ(おらぶ):さけぶ。わめく。「喚(おめ)く」とも言います。

・梳る(くしけずる):くしで髪をとかす。

・眩めく(くるめく):目がくらくらする。

・希う(こいねがう):強く願う。切に望む。

・言問う(こととう):尋ねる。

・閲す(けみす):よく見る。調べる。調べて読む。

・さんざめく:大勢でにぎやかに騒ぐ。

・弑する(しいする):主君や親など目上の者を殺す。

・斃れる(たおれる):事故などで急に死ぬこと。

・謀る(たばかる):だます。

・揺蕩う(たゆたう):ゆらゆらとただよう。

・蹲う(つくばう):ひれ伏す。うずくまる。

・蔑する(なみする):見下す。

・凪ぐ(なぐ):風がしずまる。なお、薙ぐは刀や鎌を横に払って切ること。

・睨める(ねめる):にらむ。

・羽搏つ(はうつ):鳥が羽ばたきをする。

・仄めく(ほのめく):かすかに姿や光が見える。

・吼ゆ(ほゆ):「吠える」の文語形。

・微睡む(まどろむ):少しうとうととする。

・身罷る(みまかる):死ぬ。

・黙す(もだす):沈黙する。口をつぐむ。名詞は黙(もだ)。

・夢む(ゆめむ):夢見る。

・嘉する(よみする):ほめたたえる。言祝(ことほ)ぐ(言葉で祝う)。

・蹌踉う(よろぼう):よろよろと歩く。蹌踉(そうろう)は足元がよろめくさま。

・戦慄く(わななく):恐怖や緊張などで震える。

・問わず語り(とわずがたり):聞かれてもないのに語り出すこと。ひとりごと。

・綯い交ぜ(ないまぜ):さまざまな色糸をより合わせて紐を作ることから、いろいろなものをまぜ合わせて一つにすること。

・幼少の砌(ようしょうのみぎり):高貴な人の幼いころ。

・夜の帳が下りる(よるのとばりがおりる):(帳とは室内を区切るたれ衣のこと)夜になって暗くなる。

・以て瞑すべし(もってめいすべし):それによって心置きなく死ねるだろうという意味で、それで満足すべきであるということ。

・閻浮の花散る(えんぶのはなちる):人がこの世を去るのを、閻浮樹 (えんぶじゅ)の落花にたとえて言います。閻浮樹とは閻浮提 (えんぶだい)の森林にあるとされる巨大な常緑樹。

・夢寐にも忘れない(むびにもわすれない):眠っている間も忘れることがない。

・百重(ももえ):幾重にも重なっていること。五百重(いおえ)も八百重(やおえ)も同じ意味。

・八百万(やおよろず):数の限りなく多いこと。千万(ちよろず)も同じ意味。

千万(ちよろず)という言葉は、「蛍の光」にも出てきますね。

・千尋(ちひろ):非常に長いこと。また海などが極めて深いこと。

・百千(ももち):百や千。数が多いこと。