数字を含むことわざ・慣用句と言えば、「三人寄れば文殊の知恵」とか「三つ子の魂百まで」などたくさんあります。
前回は「人数・年齢・回数・年月や時間・距離・寸法」を表す数字を含むことわざ・慣用句を紹介しました。そこで今回は、その他の「一」から「万」までの数字を含むことわざ・慣用句をまとめてご紹介したいと思います。
なお面白い数字の単位についての話は、前に「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧下さい。
9.「九」を含むことわざ・慣用句
(1)九死に一生を得る(きゅうしにいっしょうをえる):危ういところで奇跡的に助かること。ほとんど死を避けがたい危険な瀬戸際で、かろうじて助かること。
「九死」は十のうち九まで死の可能性が高いことで、ほとんど死が避けがたい危険な場合を言います。「一生」は十のうち一の生きる可能性の意。
(2)九牛の一毛(きゅうぎゅうのいちもう):多くの中の、きわめてわずかな部分のたとえ。また、きわめて些細で取るに足りないことのたとえ。多くの牛に生えたたくさんの毛の中の一本の意から。
「九牛」は多くの牛。「九」は数が多いこと。略して「九牛毛」とも言います。
(3)九仞の功を一簣に虧く(きゅうじんのこうをいっきにかく):事が今にも成就するという時に、手を抜いたために完成しない、または失敗すること。
「仞」は古代中国の高さや深さの単位で、「九仞」は非常に高いという意。「簣」は土を運ぶかご。もっこ。「虧く」は損なうこと。
高い山を作るのに、最後にもっこ一杯の土を欠けば完成しないことから。
『書経・周書』に「山を為ること九仞、功一簣に虧く」とあるのに由来します。
(4)時を得た一針は九針の手間を省く(ときをえたいっしんはきゅうしんのてまをはぶく):すぐに対処しておけば、あとで大掛かりな手間をかけずにすむということ。
その時に一針縫っておけば、あとで九針縫う手間を省くことができるとの意から。
「適時の一針は九針の手間を省く」とも言います。
(5)人の心は九分十分(ひとのこころはくぶじゅうぶ):人間の考えることはどれも似たようなもので、大きな差はないということ。
「人の心は九合十合(ひとのこころはくごうじゅうごう)」「世の中の人の心は九合十合」とも言います。
(6)世の中は九分が十分(よのなかはくぶがじゅうぶ):世の中はすべてが自分の思い通りにいくとは限らないから、望んだことの九分が叶ったら満足すべきだということ。
(7)九尺二間に戸が一枚(くしゃくにけんにとがいちまい):間口が九尺、奥行き二間、入り口の戸が一枚だけというような、きわめて狭く粗末な家のたとえ。
(8)葬礼九つ酒七つ(そうれいここのつさけななつ):葬儀は昼の十二時頃、酒宴は午後四時頃に行うのが習わしだということ。
(9)鶴九皐に鳴き、声天に聞こゆ(つるきゅうこうになき、こえてんにきこゆ):優れた人物は、どんな所にいても、その名声は世間に知れ渡るというたとえ。
「九皐」は奥深い沢の意で、鶴がどんなに深い谷で鳴いても、その鳴き声は天に届くということから。