同音類義語の使い分け(その4)重体と重態、不気味と無気味、開放と解放

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重体と重態

発音は同じだが、互いに区別される語」である「同音異義語」(英語では「homophone(ホモフォン)」と言います)は、「いどう」(移動・異動・異同・医道など)、「かんし」(監視、看視、環視、冠詞、諫止、漢詩、菅氏など)、「きかん」(期間、機関、器官、気管、帰還、基幹、季刊など)のように日本語にはたくさんあります。

しかしこれらはそれぞれ全く意味が異なる言葉なので、使い方に迷うことはありません。

一方、「発音が同じで、意味もよく似た語」である「同音類義語」については、使い分けに悩むことも多いのではないでしょうか?

前に「同音類義語の使い分け(その1)事典と辞典と字典、製作と制作、更生と更正」「同音類義語の使い分け(その2)食糧と食料、生育と成育、特徴と特長、稼働と稼動」「同音類義語の使い分け(その3)発憤と発奮、暗唱と暗誦と諳誦、相違と相異」という記事を書きましたが、ほかにもまだまだありますのでご紹介します。

1.重体と重態

私は「重体」を目にする場合が多いように感じますが、これなども「同音類義語」というよりも「同音同義語」に近いのではないかと思います。

(1)重体

重体」は、「病気や負傷の容態が重く危険なこと」「容態が悪く生命に危険があること」という意味です。

「重態」の類語には「危篤」があります。関連語には、「瀕死」があります。

「危篤」は、「今にも死にそうな状態のこと」です。「瀕死」は、「今にも死にそうな様子」です。

「重体」は危篤ほどではないが、病状がひどく悪い場合をいいます。

「肺炎で重体になる」「重体に陥る」のように使います。

(2)重態

重態」も、「病気や負傷の容態が重く危険なこと」「容態が悪く生命に危険があること」という意味です。

あえて厳密に区別するなら、「重体」は「命にかかわる身体状態のこと」です。

一方、 「重態」は「命にかかわる健康状態のこと」です。

辞書や事典では同義とされています。

2.不気味と無気味

私は「不気味」を使う場合が多いように感じますが、これなども「同音類義語」というよりも「同音同義語」に近いのではないかと思います。

『岩波国語辞典』(岩波書店刊)は「無気味・不気味」、『例解新国語辞典』(三省堂刊)は「不気味・無気味」と、二つの書き方を並列して掲げ、『新明解国語辞典』(三省堂刊)は「不気味」を採り、「無気味とも書く。」と注記しています。

その他の辞典も同様で、ほとんどが両様の書き表し方を示していますが、やや「不気味」を望ましいとする傾向が見られます。

ところで文化庁の『言葉に関する問答集』によると、この2種の表記には次のようないきさつがあります。

  1. 1.従来、「不気味・無気味」両様の表記が行われていたが、「不気味」のほうがやや優勢であった。

    2.昭和23年内閣告示の「当用漢字音訓表」では、「不」には「フ」の音だけしか掲げてなく,「無」には「ム・ブ」と掲げてあった。そこで「無気味」または、「ぶ気味」という表記が広く行われた。

    3.ところが。昭和48年内閣告示の「当用漢字音訓表」では、「不」に「フ・ブ」と掲げてあるので、「不気味」と書き表せることになり、「1」の関係から「不気味」と書き表すべきとするか、「2」が定着したと考えて「無気味」と書き表すべきか、再び問題になってきたわけである。

    結論的にいえば、両方の書き方ともかなり古くからあったのであるから、どちらか一方を正しいとか、誤りだとするわけにはいかない。現在行われている表記法を調べ、より一般的な表記法に従うということになろう。

武部良明氏の『漢字の用法』(角川書店刊)では、漢字の意味のうえから、

不(否定。そうでないこと。)
不器用・不格好・不細工・不風流・不気味・不調法・不用心・不祝儀・不粋・不精・不躾

無(「有」の対。それがないこと。)
無愛想・無遠慮・無作法・無頼の徒・ご無沙汰・無礼・無難・無様・無事・無音・無勢

というように、「不」「無」の使い分けが示してあります。この使い分けは、現在のところ、かなり一般的なもので、」各種の用字用語辞典とも、かなりの部分が重なります。このなかで問題になるのは、「不粋・不精・無作法」などです。

例えば『朝日新聞の用語の手引』では、「無精」と表記されることになっています。『NHK 漢字表記辞典』(NHK出版刊)では、「不粋・不精〔無〕・不作法」となっています。

また「常用漢字表(じょうようかんじひょう)」では、語例欄に「不作法」が掲げられており、教育現場における一つの目安となっています。

3.開放と解放

(1)開放

開放」は、「窓を開放する」「校庭を開放する」など、門戸や窓などを開け放すことです。また「開放経済」のように比喩的に、制限をなくして出入りを自由にさせることです。

「開き放つ(ひらきはなつ)」が熟語になった言葉で、対義語は「閉鎖」です。

(2)解放

一方「解放」は、「人質を解放する」「苦痛から解放される」など、束縛していたものの制限を解いて自由にすることです。「奴隷解放」「農地解放」などと用います。

「解き放つ(ときはなつ)」が熟語になった言葉で、対義語は「束縛」です。

「開放感」と「解放感」はどちらも使う言葉なので、表現したい意味によって使い分けが必要となります。

「外に出て開放感を味わう」という場合は、狭い部屋から外に出て、広々とした空間や風景を楽しむことを表し、「外に出て解放感を味わう」といった場合は、仕事や家事などの束縛から逃れ、自由を満喫している様子を表します。

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