日本語の面白い語源・由来(ふ-⑨)プリン・鰤・豚・プラン・武士・糞・ブラジャー・腑に落ちない

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プリン

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.プリン

プリン

プリン」とは、「卵・牛乳・砂糖・香料などを混ぜ、型に入れて蒸し焼きにした菓子」です。

プリンは、英語「pudding(プディング)」が音変化した語です。
この音変化は、単に日本人の聞き取った音が「プリン」だったとする説と、その感触からとする説があります。

英語の「pudding」は、「腸」や「ソーセージ」を意味するラテン語「boutullus」に由来する説と、古英語で「puduc(いぼ)」「pudoc(いぼ状のもの)」に由来する説があります。
ラテン語「boutullus」の説は、この語がフランス語に入って「boudin(血合いソーセージ)」となり、13世紀に英語に入って「poding」、そして「pudding」になったというものです。
現代の英語「pudding」にも「血合いソーセージ」の意味があるため、ラテン語「boutullus」の説は有力とされます。

ただし、「血合いソーセージ」が「プリン」を意味するようになった由来については、材料を混ぜ合わせ小麦粉の皮に包んで蒸したりすることが、ソーセージの腸詰めを連想させるためといわれていますが、正確なことは何も分かっていません。

古英語の「puduc」「pudoc」が「プリン」の語源とする説も、「いぼ」から「プリン」になった経緯が明らかではありませんが、ドイツ語で「ソーセージ」を意味する「puddek」という語があるため、ラテン語「boutullus」と同様にソーセージの腸詰めの連想からでと考えられます。

2.鰤(ぶり)

鰤

ブリ」とは、「体は紡錘形でやや側扁、背は暗青色、腹は銀白色で、体側中央に黄色の縦帯があるスズキ目アジ科の魚」です。成長に合わせて呼び名が変わる代表的な出世魚で、関東ではワカシ・イナダ・ワラサ・ブリ、関西ではツバス・ハマチ・メジロ・ブリの順に呼ばれます。

ブリは、年を経た魚の意味で「フリウヲ(経魚)」と呼ばれ、「フリ」が濁音化され「ブリ」になったと考えられています。

中国でブリは「老魚」と呼ばれており、日本でそれを言い表したのが「経魚」で、代表的な出世魚であることから有力な説です。

漢字の「鰤」が「魚」に「師」であることも、「老魚」や「経魚」の意味に通じます。
ただし、中国にブリが入る時には、非常に大きく毒を持つとも言われているため、解釈は日本のものと異なります。

また、「経魚」の「フリ(経)」は、「お久しぶり」や「何年ぶり」などの「ぶり(振り)」と同じ意味になります。

そのため、この説が正しければ、冗談で使われる「お久し鰤」という当て字は、冗談でないことになります。

上記の説以外にもブリの語源は多くあり、脂が多い魚であるため「アブラ(脂)」の上略の転とする説。
炙って食べることから「アブリ(炙り)」の上略で、「ブリ」になったとする説。

体が大きいことから、「ミフトリ(身肥太)」や「フクレリ」の転といった説があります。

「鰤」は冬の季語で、次のような俳句があります。

・ひまの駒 鞭うつ鰤の 行衛かな(池西言水)

・寝て起きて 鰤売る声を 淋しさの果(椎本才麿)

・ほどくとも 見えねど鰤の 俵縄(広瀬惟然)

・鰤舟や 港を囲む 雪の山(長谷川櫂)

3.豚(ぶた)

豚

」とは、「イノシシが改良され家畜となった哺乳網ウシ目イノシシ科の動物」です。肉は食用とされ、ハムやベーコンなどにも加工します。太った人を罵っていう際に形容されます。

豚の語源には、「ブーブー」という鳴き声に由来する説と、「太い」の「フト(太)」が転じて「ブタ」になったとする説があります。

世界的に豚を表す語の多くは「p」か「b」で始まるため、鳴き声説が多く見られます。
英語でいえば「pig(ピッグ)」なので当たっていそうですが、鳴き声は「oink(オインク)」と表されるため、鳴き声に由来しているとは考えられません。

「フト(太)」と鳴き声の「ブー」が合わさり、「ブタ」になったとするのが妥当です。

4.プラン/plan

宴会プラン

プラン」とは、「計画。構想。案。図面」のことです。

プランは、英語「plan」からの外来語です。
英語の「plan」は、ラテン語で「平らな」「平面図」を意味する「planus」に由来します。
「平面図」から建築の「設計図」も意味するようになり、「計画を実現するために作られた設計図」、そして「計画」「構想」なども「plan(プラン)」と言うようになりました。

5.武士(ぶし)

武士

武士」とは、「平安時代中期から江戸時代末期まで存在した、武力をもって地方を支配し、公権力に仕える者。」のことです。さむらい。もののふ。

武士の語源は、「やまぶし(山伏)」や「のぶし(野伏)」の上略と考えられ、漢字の「武士」は当て字です。

武士という言葉は、すでに奈良時代に武官・武人という意味で用いられていますが、上記のような独特の意味を持つようになるのは、平安時代中期の10世紀以降のことです。

10世紀のころから、合戦をもって業とする者が「つわもの(兵)」、官人貴族に仕えて家政や警固をあずかる者が「さぶらい(侍)」、そしてまた武力をもって公(おおやけ)に奉仕する者が「もののふ(武者)」とそれぞれ呼ばれて、各分野に登場するようになりました。

武士という言葉は、これらが登場するころから、そのおのおのを武力にかかわる存在として表現するときに用いられるようになってきました。

その後平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、これら三者が融合して同一実体となり、三つのことばが同一実体の異なる側面を語る語に変貌(へんぼう)するに伴い、武士という言葉は、この実体を統一的に表現する語として一般に用いられるようになりました。

江戸時代には四民の最上の階級とされました。

6.糞(ふん)

糞

ふん」とは、「動物が肛門から排泄する食物のかす」のことです。大便。うんこ。くそ。

ふんは、漢字の「糞」を原音のまま読んだもので、呉音・漢音ともに「フン」です。

漢字の「糞」は、「畑にばらまくさま」+「両手」の会意文字で、漢字の成り立ちは排泄物よりも肥料としての意味が強いものです。

人間の排泄物を表す場合は「大便」や「くそ」と言い、「ふん」は「のふん」「鳥のふん」など、人間を除いた動物の排泄物の意味で用いられます。

7.ブラジャー/brassiere

ブラジャー

ブラジャー」とは、「乳房を包み、胸の形を整える女性用下着」です。ブラ。

ブラジャーは、フランス語「ブラシェール(brassiere)」を英語音化したもので、アメリカでも口語では「ブラ」と呼ばれます。

フランス語の「brassiere」は、婦人や赤ちゃん用の袖付き胴着を意味します。

「bras」は「ブレスレット(bracelet)」にも通ずる語で「腕」を意味し、「brassiere」の基となる古フランス語「braciere」は「腕の防護具」を意味しました。

ブラジャーの原型は、1889年、フランスのHerminie Cadolle(エルミニー・カドル)によって発明されましたが普及には至らず、当時は「ブラジャー」という呼称でもありませんでした。

1913年にアメリカのMary Phelps Jacob(メアリー・フェルプス・ジェイコブ)が、コルセットに代わるものとして特許を取得し、1914年にワーナー・ブラザーズ社が特許を買い取り、販売したことで一般に普及しました。

1900年代初頭には英語でも「brassiere」が見られることから、特許取得時に「袖付き胴着」の意味が、現在の意味に変化したものと思われます。

日本でブラジャーが普及したのは、1950年代に入ってからです。

8.腑に落ちない(ふにおちない)

腑に落ちない

腑に落ちない」とは、「納得できない。合点がいかない」ことです。肯定形は「腑に落ちる」です。

腑に落ちないの「腑」は、「はらわた」「臓腑」のことです。
「腑」は「考え」や「心が宿るところ」と考えられ、「心」「心の底」という意味があります。

そこから、「人の意見などが心に入ってこない(納得できない)」という意味で、「腑に落ちない」となりました。

肯定形の「腑に落ちる」は、明治時代の文献にも見られ、「納得がいく」「納得する」という意味で用いることは誤用ではありません。