日本語の面白い語源・由来(ふ-⑩)普請・物色・普段・風呂・ぶっきら棒・脹脛・布石・ふんだん

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普請

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.普請(ふしん)

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普請」とは、「家を建築や修理すること。道路や橋などの土木工事のこと」です。

普請は禅宗の用語で、寺の堂塔建造などの労役に共同で従事してもらうことをいいました。
建築に従事してもらうことを「普請」と言うようになったのは、「普く(あまねく)人々に請う(こう)」という意味で、多くの人々に呼びかけて労役についてもらったことに由来します。

やがて、築城の際の土木工事のことも言いようになり、次第に「普く請う」の意味が薄れ、建築や土木工事の意味として「普請」が使われるようになりました。

2.物色(ぶっしょく)

物色

物色」とは、「多くの中から適当な人や物を探し出すこと」です。

物色は、物の色、動物の毛色、自然の景色などを意味した語です。

そこから、姿や形も意味するようになり、物の色や姿形を見極める行為の意味で用いられ、容姿によって人を探したり、手頃な物を探すことを表すようになりました。

中国の儒教経典『礼記』に「生贄にする動物は毛色の良いものを選ぶこと」として「物色」が使われていることから、生贄を選ぶ意味が転じたとする説もあります。

しかし、ここでの物色は、本来の「動物の毛色」という意味しかありません。

「生贄を選ぶ」から「探し出す」の意味になったとすれば、日本で「物の色」や「動物の毛色」の意味は持たなかったはずです。

3.普段(ふだん)

普段

普段」とは、「いつもその状態であること」です。日頃。日常。

「普段」の本来の漢字表記は、「不断」です。
不断の「絶えないこと」「いつまでも続くこと」の意味から、「いつもの状態であること」「日頃」の意味が派生しました。

そのため、当て字で「普段」と書くことが多くなりました。
「晴れ着」の対として「普段着」の語があるように、普段は「特別な時・場合」と対立した意味を含む言葉です。

そのため、「普段は真面目」と言えば、「特別な場合は不真面目」といった意味が含まれます。

4.風呂(ふろ)

風呂

風呂」とは、「入浴のための浴槽や設備。湯に入って体を温めたり、体を洗う場所」です。

風呂の語源には、物を保存するために地下に作った部屋の「室(むろ)」からとする説。
茶の湯で湯を沸かすための「風炉(ふろ)」からとする説。
「湯室(ゆむろ)」が転じたとするなど諸説あります。

風呂は平安時代末頃から存在しましたが、蒸気を用いた蒸し風呂形式のものをいいました。
湯をはって浴槽につかる形式の風呂は江戸初期から現れますが、「湯屋(ゆや)」「お湯殿(おゆどの)」といって「風呂」と区別されていました。

風呂の正確な語源は未詳ですが、用いられた形式を考慮すると「湯室」の説は考え難く、お茶の「風炉」も「湯」を主に考えると難しいため、「室」の説がやや有力と考えられます。

5.ぶっきら棒(ぶっきらぼう)

ぶっきら棒

ぶっきらぼう」とは、「物の言い方や態度に愛想がないこと。また、そのさま」です。

ぶっきらぼうは、「打っ切り棒(ぶっきりぼう)」が転じた語で、その語源には二通りの説があります。

ひとつは、打っ切り棒とは水飴を煮つめて回転させながら、引き伸ばして切った白い棒状の飴のことで、その飴のぶっ切られたさまや、味や形に変化がないことから、そっけないさまを言うようになったとする説。
もうひとつは、ぶっ切った木の切れ端は、丁寧に切られたものに比べ、質素すぎて愛想がなく見えることからとする説です。

「打っ切り棒」という飴は存在しますが、ぶっきらぼうの語源となる「打っ切り棒」が、この飴を指していたとは断定できないため、両説に共通する「ぶっ切られたさまから」とするにとどまります。

また、「打っ」は「打ち(ぶち)」が促音化した接頭語で、その後に続く動詞の意味を強めるためや、勢いを表すときに用いられます。

ぶっきらぼうの語源となる「ぶっ切る」のほかに、「ぶっ」が冠された言葉には「ぶっ飛ばす」や「ぶっ倒れる」があり、「ぶち」が撥音化された「ぶん」には、「ぶん投げる」や「ぶん殴る」などがあります。

6.脹脛/脹ら脛(ふくらはぎ)

ふくらはぎ

ふくらはぎ」とは、「すねの後方のふくらんだ部分」のことです。

ふくらはぎの「ふくら」は、「膨らんでいる」「ふっくらしている」といった意味です。
「はぎ」は古く「脛(すね)」を指す語で、膝から下、足首から上の部分のことです。

つまり、ふくらはぎは「膨らんでいる脛」という意味で、漢字では「膨ら脛」とも書きます。
古くは「こむら」や「こぶら」と呼ばれており、「ふくらはぎ」の語は江戸時代以後から見られるため、比較的遅い成立であったと考えられています。「こむら返り」は今でも使いますね。

江戸時代後期には促音化された「ふくらっぱぎ」の語形が見られ、明治初期には「ふくらっぱぎ」が変化した「ふくらっぱげ」という語形も見られます。

7.布石(ふせき)

布石

布石」とは、「将来に備えて、あらかじめ整えておく手はず」のことです。

布石の「石」は碁石、「布」は「敷く」「配置する」を意味し、本来は囲碁用語です。
囲碁では、序盤戦で全局的な展開を考えて、要所要所に石を打っておくことや、その石の打ち方・石の配置を「布石」と言います。

これが、一般にも流用され、将来のための備えを「布石」と言うようになりました。

8.ふんだん

ふんだん

ふんだん」とは、「余るほど十分にあるさま」です。豊富。

ふんだんは、絶え間なく続くことを意味する漢語「不断(ふだん)」が音変化した語です。
これが、途切れることなく続く意味から、物事が多くある意味になりました。

「不断」の音変化には、「ふんだん」のほか、「ふんだく」「ふんだ」といった形もあります。

1775年の方言辞典『物類呼称』では、「ふんだん」を東武、「ふんだく」を尾張で用いる言葉としていることから、「不断」とは関係なく江戸方言が広まったとの見方もあります。