「オノマトペ」(擬声語)は古事記に遡る!?オノマトペにまつわる面白い話。

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オノマトペ

私はかつて地方出身の友人と話していた時、雨が降ってきたので、「雨がぴりぴりして来た」と言ったところ、怪訝そうな顔をされました。

関西人(高槻市民)の私としては「雨がぽつぽつ降って来た」という意味で言ったつもりだったのですが、友人には通じなかったのです。「ぴりぴり」と言えば「辛(から)い」「痛み」「緊張」というイメージしか浮かばなかったようです。

これは関西(あるいは高槻)だけで通じる「方言オノマトペ」なのでしょうか?

夏川りみの「涙(なだ)そうそう」で有名になった「そうそう」は、涙が流れる音を表現した沖縄独特のオノマトペです。

夏川りみ「涙そうそう」Music Video

1.「オノマトペ」とは

「オノマトペ」(擬声語)とは、「擬音語」と「擬態語」の総称で、さまざまな状態や動きや音・声などを字句で模倣した言葉です。

主に自然界にある音や声、たとえば犬の鳴き声の「わんわん」のように現実に聞こえる音を人の言語で表現した言葉(擬音語)です。

そのほか、「ワクワク」や「ふっくらもちもちのパン」「ふわふわとろとろのオムライス」のように、実際には音は聞こえないが感覚的な表現としてのオノマトペ(擬態語)もあります。日本語は特にオノマトペが多く用いられる言語と言われています。

日本語のオノマトペは4,000語以上存在すると言われています。オノマトペの辞典に掲載されているものだけでも4500語あります。それ以外にも、漫画やアニメで使われているもの、若者言葉で使われているものを足すと、倍以上あるのではないでしょうか?
また、日本語全体の総数の中でも1%を占めるほど、かなりの存在感を見せています。なぜこれほどまでに日本語のオノマトペは生まれたのでしょうか?
日本語は他の言語に比べ、音節が少ないことが大きな理由として挙げられています。「音節」とは「言葉の音のかたまりの数」で、日本語だとアイウエオの50音の他、濁音(ガ行)半濁音(パ行)などを含め112しかありません。それに比べて英語の音節は8,000以上と言われていますので、少ないのが歴然です。その少ない音節を補うため、漢字では表わせないオノマトペを多く発明してきたのです。
英語では「見る」をSee、Look、Watchなどいろいろな単語で、状態や状況を表現できます。これに対して日本語は、「ぱっ、じ~っ、じっくり、ちらっ」などのオノマトペで表現を補足したのでしょう。リズムに乏しい平板な言語だからこそ、リズミカルなオノマトペが増えたとも言えます。
もう一つの考えられる理由は、日本人の感性や情感ととても相性がよかったことが挙げられます。「ほろほろと山吹散るか滝の音」という俳句を詠んだ松尾芭蕉や自由律俳句の種田山頭火、作家の夏目漱石も使用しており、自然と自分独自の感情を表現する際に使われています。オノマトペは感性豊かな文化に根ざした言葉であるということが出来ます。

オノマトペの語源は、古代ギリシャ語のオノマトポイーア(onomatopoiia)に由来します。古代ギリシャ語のonoma(名前)とpoiein(作る)という言葉が融合しオノマトポイーア(言葉を作る)という言葉が生まれました。

古代ギリシャ語のオノマトポイーアを語源とし、英語ではオノマトピア(onomatopoeia)、フランス語ではオノマトペ(onomatopee)という言葉になりました。

2.動物(犬猫・鳥・昆虫)の鳴き声のオノマトペにまつわる面白い話

動物(犬猫・鳥・昆虫)の鳴き声のオノマトペにまつわる面白い話は、以下の記事に詳しく書いていますので、ぜひご一読ください。

(1)犬猫の鳴き声

犬の鳴き声は「びよびよ」、猫の鳴き声は「ねうねう」だった!?

(2)鳥(ホトトギス・ウグイス)の鳴き声

「夏は来ぬ」は歌人佐佐木信綱の作詩で古き良き日本の原風景を知る格好の教材!

「ウグイス」にまつわる面白い話

(3)蝉の鳴き声

「セミ(蝉)」にまつわる思い出話

(4)秋の虫の鳴き声

「スズムシ」と「マツムシ」の名前の逆転など「スズムシ」にまつわる面白い話

「コオロギ」と「キリギリス」の名前の逆転

「キリギリス」にまつわる話

3.オノマトペの歴史

日本語のオノマトペを遡ると、712年の『古事記』に行き着きます。「国生み神話」で、海を鉾で掻き回す様子を「こをろこをろ」と表現されています。

イザナギノミコト(男神)とイザナミノミコト(女神)が、国生みの際に、「天の浮き橋(あまのうきはし(天と地を結ぶ宙へ浮く橋。神はこの橋を渡って地へ降りるとされます)」に立ち、天の沼矛(ぬぼこ)をまだ何も出来ていない海原に下ろし、「こをろこをろ」とかき回し矛を持ち上げると、滴り落ちた潮が積もり重なって島となりました。これがオノゴロ島です。

他にも『日本書紀』や『万葉集』にもオノマトペの表現が見られ、『万葉集』には鼻の水をすする音として「びしびし」という表現があります。

4.オノマトペの効用

(1)スティーブ・ジョブズも活用

世界中を魅了させたAppleの創始者スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションには、ある擬音語を駆使した特徴がありました。それは「ブン」という擬音の活用です。プレゼンの中で、画面をスライドさせるときに、その言葉を使い、観客を愉しませたり、イメージを共有しやすくしています。「ブン」という言葉以外も話の中で多くのオノマトペを使っています。
 細かい情景説明をしなくてもオノマトペを使用すれば、「脳」に直接働きかけ、そのイメージが掻き立てられるのです
オノマトペは、一つの言葉で多くの情報量を伝える力があります。例えば、多くの人に愛されるアイス「ガリガリ君」はがりがりという擬音語を使うことで、暑い夏を凌ぐために冷たい感覚を欲する消費者の心をわし掴みにしました。
 形容詞や副詞を強調する「スカっとさわやか」や楽しさを表わす「ワクワク」「ウキウキ」「ルンルン」、動詞化して怒りを表わす「ムカつく」など表現を豊かにすることは間違いなしです。話術が高い芸人もよく使っています。

(2)力を発揮させる魔法の言葉

オノマトペは人の心を揺さぶり、人間の潜在能力を引き出す力があると言われており、アスリートもよく活用しています。例えば、ハンマー投げの室伏広治選手がハンマーを投げる時に「アー!」と雄叫びのような「掛け声」をあげます。テニスのシャラポア選手も「雄叫び」のような声を出します。

これは、パワーアップやリズムがとりやすくなるため、使用されているのです。引き出したい能力に合ったオノマトペを使うことで有効になります。このようにオノマトペには、「やる気スイッチ」を入れるなど脳科学的な効能があるそうです。

他にも、身体を柔らかくするにゃ〜握力アップにつながあるグ〜ッなどがあります。

(3)医療診断でも一役買うオノマトペ

痛みを感じる時、どのような痛みであるのかを言葉で解説するのは難しいし、医者も理解に悩みます。そこで患者の主観的な表現と医者の理解をつなぐのがオノマトペです。
頭が痛い、腰が痛い、歯が痛いなどの痛みを的確に伝えるのは難しいことです。そんな時、 ズキズキ・ピリピリ・ジンジン・ビリビリ・チクチク・ズーン・ズキッ・ガンガンのようなオノマトペを使えば、ぼんやりした感覚を繊細な部分まで表現してくれるので、お互いが具体的な言葉を介さなくても想像することができます。
このようにオノマトペは、両者(医者と患者)の情報格差を埋めてあげる役割があるのです。
 最近の調べでは、ガンガンピリピリなどのオノマトペによって、病気の系統がある程度見当がつくほど、一定の関係があることが分かっています。
オノマトペの使用は関西圏が多いようで、自分の表現を相手に伝える話上手にも通じることも考えられています。
会話を弾ませたり、情景を正確に伝えるために重要なオノマトペを日頃から自然に使えるようになると、話上手になるだけでなく相手との関係構築や多くの人の巻き込みが行いやすくなりますまた、自分の想像以上の力を発揮することができるかもしれません。

5.若者言葉としてのオノマトペ

2013年頃から、TwitterなどのSNSの登場で数多くの若者言葉と呼ばれるオノマトペが生まれました。

次のような例がありますが、皆さんは意味が分かりますか?

・ぴえん:非常に感動して泣いてしまう又は泣きそうになった状態を表す擬音語

・ぱおん:「ぴえん」よりも、さらに強調された表現。ぴえん越えてぱおんと使用する場合が多いようです。

「ぴえん」の語源は可愛く泣いているこんな絵文字🥺が語源と言われています。
絵文字を使うより、この状態を表すオノマトペである「ぴえーん」を使った方が可愛い、そしてそれが省略されたのが「ぴえん」です。

「ぱおん」も象のもの悲しい鳴き声(泣き声?)である「ぱおーん」が「ぱおん」に変化したと言えます。

ゾウの叫び声(迫力ある大きな声)/ 東山動物園

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