日本語の面白い語源・由来(ふ-⑪)フォアグラ・福神漬け・ブルマー・褌・ブログ・踏ん張る・仏頂面・封切り

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フォアグラ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.フォアグラ/foie gras

フォアグラ

フォアグラ」とは、「強制肥育で肥大したガチョウの肝臓」です。トリュフ・キャビアと並び、「世界三珍味」のひとつに数えられます。

フォアグラは、フランス語「foie gras」に由来します。
フォアグラの「フォア(foie)」は肝臓を意味し、「グラ(gras)」は「太った」「脂肪性の」という意味です。

1世紀初頭の古期ラテン語では、「太らせた肝臓」を「jecur ficautum」と言っていました。
「jecur」は「肝」、「ficautum」は「イチジク(ficus)」のことで、現代では主にとうもろこしなどの飼料を大量に食べさせますが、古くは豚やガチョウにイチジクを食べさせ、太らせていたことに由来します。

12世紀には、俗ラテン語で「jecur」が欠落し、イチジクを意味する「ficautum」のみで、肥大した肝臓の意味となりました。

その後、「ficautum」がフランス語に入り、次第に変形して「foie」となったもので、フォアグラの「フォア」は「イチジク」が語源です。

フォアグラの「グラ(gras)」は、「濃厚な」「固い」の意味のラテン語「cassus」に由来します。

2.福神漬け(ふくしんづけ)

福神漬け

福神漬け」とは、「大根・茄子・鉈豆・蓮根・生姜・紫蘇の・筍などの野菜を細かく刻み、味醂醤油に漬け込んだ漬物」です。ふくしんづけ。

福神漬けは、酒悦の主人 野田清右衛門が江戸末期から明治の始めにかけて考案したもので、元は商品名です。

「福神漬け」の名前の由来は、明治18年(1885年)、酒悦の店が上野にあったことから不忍池の弁財天にちなみ、種々の野菜を七福神に見立てて、戯作者の梅亭金鵞が命名したとされます。

カレーライスに添えられる漬物として広く普及したころから、商品名であった「福神漬け」は一般名詞となりました。

3.ブルマー

ブルマー

ブルマー」とは、「裾口をゴムで絞った、あるいはぴったりしたショーツ型の女性用運動着」です。

ブルマーは、1850年頃、アメリカの女性解放運動家 エリザベス・スミス・ミラーによって考案されたものです。

同じく、女性解放運動家のアメリア・ジェンクス・ブルーマーが、ミラーの考案した衣服を「リリー」誌上で紹介し、世に広めたことから、「bloomers(ブルーマーズ)」と呼ばれるようになりました。

つまり、ブルーマーの名前が「ブルマー」の語源です。
当時のブルマーは全体的にゆったりして足首で絞ったもので、その上からスカートが履かれ、女性解放運動の象徴とされました。

19世紀末頃から、ブルマーはスポーツ着として取り入れられ、一般にも普及していきました。
日本では大正から昭和にかけて女学生用の運動着としてブルマーが用いられ、第二次世界大戦後からは丈が短くなり、形が提灯のように見えたことから、俗に「ちょうちんブルマー」とも呼ばれました。

東京オリンピックのあった1964年以降、ぴったりとしたブルマーが主流となり、1990年代初頭まで多く用いられました。

4.褌(ふんどし)

褌

ふんどし」とは、「男子の陰部を覆い隠す細長い布。下帯。まわし。犢鼻褌。女性の腹巻」です。

ふんどしは、「踏通(ふみとおし)」が転じたとする説が有力とされますが、特に根拠らしいものはありません。

その他、上代の言葉で馬の行動を拘束する縄を言った「ふもだし」が転じたとする説。
馬の脚を繋ぐ縄を「ほだし」と言い、転じて「ふんどし」になったとする説。
「糞通(ふんとおし)」の約など、ふんどしの語源は諸説ありますが、決定的な説はありません。

5.ブログ/blog

ブログ

ブログ」とは、「ニュースや趣味など、簡便な方法で作成し公開できるウェブサイトの総称」です。

ブログは「Web(ウェブ)」と「log(ログ)」の造語「weblog(ウェブログ)」の略で、「Web上に残される記録」を意味します。

1999年、管理・作成が簡単にできるブログツールが開発されたことで、アメリカを中心に広まりはじめ、2001年9月の同時多発テロを機に、ブログは新しいメディアとして社会的に認知されました。

6.踏ん張る(ふんばる)

踏ん張る

踏ん張る」とは、「足に力を入れて地面を突っ張るようにする。頑張る。言い張る。譲歩しないで押し通す」ことです。

踏ん張るは、「踏み張る」の「踏み」が撥音便化した語です。

本来、踏ん張るは足を開いて地面を踏み張った状態を表します。
地面を踏み張る状態から、辛さをこらえて耐え忍ぶことや頑張ること、譲歩せず自分の意見を押し通す意味でも「踏ん張る」は使われるようになりました。

気力を出してこらえる意味も表すようになったため、地面に足がついてはいけない懸垂などでも「踏ん張る」の語は用いられます。

7.仏頂面(ぶっちょうづら)

仏頂面

仏頂面」とは、「無愛想な顔つき。不機嫌な顔」のことです。

仏頂面の「仏頂」は「仏頂尊」のことで、仏頂尊とはお釈迦様の頭上(仏頂)に宿る広大無辺の功徳から生まれた仏です。

仏頂尊の面相は知恵に優れ、威厳に満ちているが、無愛想で不機嫌にも見えることから「仏頂面」という言葉が生まれたと考えられています。

その他、嫌そうな顔つきの「不承面(ぶしょうづら)」が転じたとする説や、ふて腐れた顔つきの「不貞面(ふてづら)」から「仏頂面」になったとする説もあります。

音変化後に「仏頂面」の字が当てられたとすれば、考えられる説です。

8.封切り(ふうきり)

封切り

封切り」とは、「新作映画を初めて上映すること」です。ふうぎり。

封切りの「封」は、手紙や小包などを不法に開かれないための印のことですが、江戸時代には、新刊本を袋に入れて白紙などで包むようにしてあり、それを切ることを「封切り」と言いました。

明治32年頃、都新聞の記者 吉見蒲州が、新作映画の上映記事で「封切」という言葉を使って以降、新作映画の初上映の意味として「封切り」が用いられるようになりました。