日本語の面白い語源・由来(ふ-⑫)覆水盆に返らず・風呂敷・踏ん切り・フェロモン・ブランド・文月・ブス

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覆水盆に返らず

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)

覆水盆に返らず

覆水盆に返らず」とは、「一度してしまったことは取り返しがつかないこと。一度別れた夫婦は、元には戻らないということ」です。

覆水盆に返らずの「覆水」とは、こぼれた水のこと。「盆」は水などを入れる平たい鉢のことです。

一度こぼれた水は二度と元の盆に戻らないことから、別れた夫婦は復縁しないことや、取り返しがつかないことのたとえとして使われるようになりました。

覆水盆に返らずの出典は、中国の『拾遺記』の以下の故事によります。

周の国に、呂尚(りょしょう)と馬氏(ばし)という夫婦がいた。
呂尚は読書ばかりして働かなかったため、妻の馬氏は愛想をつかして実家に帰ってしまった。

やがて、呂尚は王に見出され、大出世して「太公望」と呼ばれるようになると、妻は復縁を求めてきた。

呂尚は盆の水をこぼし、「この水を元に戻せたならば、復縁に応じよう」と言った。しかし、馬氏が手ですくえたのは泥ばかりで、水はすくえなかった。

そこで、呂尚は「お前は一度別れたのに復縁を求めてきたが、こぼした水は盆に戻せない」と言って断った。

「覆水盆に返らず」には、『漢書(朱買臣伝)』にも同様の故事があります。
また、英語にも「覆水盆に返らず」に似た「It is no use crying over spilt milk.」ということわざがあります。

復縁しないことをたとえた言葉のせいか、「覆水盆に帰らず」と表記されることも多いですが、「帰らず」ではなく「返らず」が正しい漢字です。

2.風呂敷(ふろしき)

風呂敷

風呂敷」とは、「物を包んで持ち運ぶために用いられる四角い布」です。

風呂敷は、風呂に敷くことからの名です。
室町時代の風呂は蒸し風呂のようなもので、蒸気を拡散させるために「むしろ」「すのこ」「布」などが床に敷かれていたものが風呂敷の起源ですが、現代の風呂敷にあたるものは「平包(ひらづつみ)」と呼ばれていました。

足利義満が大湯殿を建てた際、大名達が他の人の衣服と間違えないよう、脱いだ衣服を家紋入りの絹布に包み、湯上りにはこの絹布の上で身繕いをしたこという記録があり、これが「風呂敷」と「平包」の間に位置するものと考えられます。

江戸時代に入り、湯をはった銭湯が誕生し、衣類や入浴用具を四角い布に包むようになったのが、現在の風呂敷に最も近いもので、風呂に敷く布のようなもので包むことから「風呂敷包み」や「風呂敷」と呼ばれるようになりました。

銭湯が発展したのに伴ない、江戸時代の元禄頃から「風呂敷」の呼称が一般に広まっていきました。

3.踏ん切り(ふんぎり)

風呂敷

踏ん切り」とは、「思い切って決心すること」です。

踏ん切りの「踏ん」は、「踏む」の連用形「踏み」の撥音便化で、元は「踏み切り」。

「踏み」は足で踏む行為を表す語ですが、荒々しく縛る意味の「ふん縛る」、捕まえるを強調して言う「ふん捕まえる」など、「踏ん(踏み)」は動詞の前に付くことで行為を強調する接頭語となります。

踏ん切りの「踏ん」は接頭語ではありませんが、思い切る意味を強調する役割もしています。

4.フェロモン/pheromone

フェロモン

フェロモン」とは、「動物の体内で生産され体外へ微量に分泌放出して、同種の個体間に特有の行動や生理的な反応を引き起こす有機化合物」です。

フェロモンは、英語「pheromone」からの外来語です。
「pheromone」は、「運ぶ」を意味するギリシャ語「pherein」と、「ホルモン」を意味する英語「hormone」が合成された語で、1959年に名付けられました。

この命名は、メスの蛾が分泌する信号にオスの蛾が惹かれて、遠くから集まる現象が実証されたことによります。

フェロモンには、危険を知らせる「警報フェロモン」や、異性を呼び寄せる「性フェロモン」があります。

この「性フェロモン」の性質にたとえ、異性を引きつける「魅力」や「色気」も「フェロモン」と呼ぶようになりました。

5.ブランド/brand

ブランド

ブランド」とは、「銘柄。商標」です。

ブランドは、英語「brand」からの外来語です。
「brand(ブランド)」の語源は、焼印を押す意味の「Burned」で、自分の家畜と他人の家畜を間違えないよう、焼印を押して区別していたことに由来します。

そこから、「銘柄」「商標」を「brand(ブランド)」と言うようになりました。
家畜に押す焼印の「Burned」は、罪人の地肌に刑罰として焼印を押していた「烙印」に由来します。

6.文月(ふづき)

文月

文月」とは、「旧暦7月の異称」です。

文月の語源は、短冊に歌や文字を書き、書道の上達を祈った七夕の行事に因み、「文披月」が転じたとする説が有力とされます。

七夕の行事は日本に元々あったものではなく、奈良時代に中国から伝わった風習なので、文披月の説を間違いとするものもありますが、「文月」の語が見られるのは奈良時代以降のため、何も不自然な説ではありません。

その他、文月の語源には、旧暦7月が稲穂が膨らむ月であるため、「穂含月(ほふみづき)」「含月(ふくみづき)」からの転とする説。
稲穂の膨らみを見る月であるため、「穂見月(ほみづき)」からの転とする説もあります。

7.ブス

ブス

ブス」とは、「顔の醜い人(主に女性に対して使われる)」のことです。醜女(しこめ)。

ブスは、漢字で「附子」と書き、トリカブトの塊根を意味します。

漢方では、トリカブトの根を「付子(ぶし)」や「烏頭(うず)」と呼び、鎮痛・強心剤として用いられます。

これには、猛毒となるアルカロイドが含まれているため、誤って口に含むと神経系の機能が麻痺し無表情になります。

その無表情を「附子(ぶす)」と言うようになり、転じて醜い顔を「ブス」と言うようになりました。

また、「附子」には憎み嫌うものという意味もあります。これもトリカブトの「付子」が、人から恐れられることに由来します。

憎み嫌う意味の「附子」が転じて、醜い顔を「ブス」と呼ぶようになったとも考えられます。

ブスの語源には、狂言に由来する説もあるが、狂言に出てくる「附子」もトリカブトの毒薬のことです。

一般に「ブス」の語が広まるきっかけを作ったのが、狂言と考えられます。
その他、ブスの語源には、ブスは女性に対して用いられるため、「不(ぶ)」と女性をさす隠語「助(すけ)」の略という説。
「ぶすっと」や「不細工」からの派生し「ブス」になったとする説もあります。
しかし、狂言で用いられていた「附子」との関連性が見られないため、有力とされていません。

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