日本語の面白い語源・由来(り-④)梨園・料理・立錐の余地もない・利息・流行・林檎・リンチ

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梨園

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.梨園(りえん)

梨園

梨園」とは、「演劇界。特に、歌舞伎役者の世界」のことです。歌舞伎役者の妻は「梨園の妻」と言います。

梨園が歌舞伎の世界を意味するようになったのは、唐の玄宗皇帝の故事に由来します。
玄宗皇帝は音楽や舞踏の愛好家で、自ら舞楽を教えていました。
その場所に梨が多く植えられていたことから、音楽や舞踏を学ぶ者を「梨園の弟子」といいました。

それが転じ、演劇や音楽など芸能の世界を表す語として、「梨園」が使われるようになりました。

日本では歌舞伎の成立とともに「梨園」の語が使われたため、演劇の中でも特に歌舞伎の世界を指すことが多くなりました。

また、歌舞伎役者の妻は一般的な役者の妻とは異なり、ご贔屓筋への挨拶や、お金やスケジュールの管理など、他にも多くの仕事をして夫を支えます。

そのため、歌舞伎役者の妻は「梨園の妻」と呼ばれ、芸能界の中でも特殊な世界(歌舞伎界)の妻であることが表されています。

2.料理(りょうり)

日本料理・瓢亭

料理」とは、「食材に手を加え、食べ物をこしらえること。また、その食べ物。調理。物事をうまく処理すること」です。

「物事をうまく処理すること」が本来の「料理」の意味に近いものです。
漢字の「料」は、「米」と「斗」を合わせた「計る」という意味を持つ字、「理」は「おさめる」といった意味で、「物事を適当に処置する」「世話をする」などを意味する漢語でした。

日本でもこのような意味で「料理」が使用された例はありますが、かなり早くから現在の意味に転じて用いられるようになりました。

中国でも食べ物をこしらえる意味で使われているため、その影響が強かった可能性もあります。

3.立錐の余地もない(りっすいのよちもない)

立錐の余地もない

立錐の余地もない」とは、「人や物が詰まっていて、少しの隙間もないこと」です。立錐の地なし。

立錐とは、木に穴を空ける道具「錐(きり)」を立てることです。
立錐の余地もないは、細い錐が立つだけの余地すらなく、ぎっしり詰まって隙間もないという、狭い土地をたとえたものでした。

そこから、人や物が詰まっていて、隙間のないことを「立錐の余地もない」と言うようになりました。

出典は中国『史記』の「呂氏春秋」為欲で、「いまや秦は六国の子孫を滅ぼして、立錐の地さえないようにした」から広まりました。

4.利息(りそく)

利息

利息」とは、「他人に金銭を貸す見返りとして、金額や期間に応じて受け取る報酬。利子」のことです。

利息は、中国最初の紀伝体の通史『史記』にある言葉「息は利の如し」に由来します。
「息は利の如し」の「息」とは、「息子」「男の子」を意味します。

つまり、この言葉は女の子よりも、男の子の方が利益に繋がることを意味します。
利息は「利益に繋がる」の意味から、現在使われる意味となりました。

5.流行(りゅうこう)

流行

流行」とは、「服装や言葉、思想や行動様式などがもてはやされ、一時的に世間に広まること。病気などが一気に世の中へ広がること」です。流行り(はやり)。

流行は、物事が川の流れのように分かれて世間に広まる意味の漢語で、徳が広まることや疫病が広がることをいいました。

日本では動詞「はやる」と混同され、近世以降、俳諧の世界で人々の好みに合わせ、句体が変化していくことを指すようになりました。

そこから移り変わるものというニュアンスが添えられ、時代を経ても変化しないことを意味する「不易(ふえき)」の対義語として、「流行」が用いられるようになりました。

さらにその意味から、流行は服装や思想などが一時的にもてはやされ、短期間で入れ替わることを意味するようになっていきました。

6.林檎(りんご)

林檎

りんご」とは、「アジア西部からヨーロッパ東南部が原産のバラ科の落葉高木」です。果実はほぼ球形で甘酸っぱく芳香があります。

りんごは、古く中国を経由して渡来し、西欧系のリンゴの普及以前に日本でも栽培されていました。
林檎は中国語で、「檎」は本来「家禽」の「禽」で「鳥」を意味し、果実が甘いので林に鳥がたくさん集まったところから、「林檎」と呼ばれるようになりました。

「檎」は漢音で「キン」呉音で「ゴン」と読まれることから、「リンキン」や「リンゴン」などと呼ばれ、それが転じて「リンゴ」となりました。

平安中期の『和妙抄』では「リンゴウ」と読んでいます。
また、中国語で林檎を「苹果(pingguo)」とも呼ぶことから、「林檎(リンゴン)」と「苹果(pingguo)」が混ざり、「リンゴ」と呼ばれるようになったとも考えられています。

「林檎」は秋の季語で、次のような俳句があります。

・わくらばの 梢あやまつ 林檎かな(炭太祇)

・世の中の 色に染めたる りんごかな(与謝蕪村

・空は太初の 青さ妻より 林檎うく(中村草田男

・金釘の 曲りて抜けし 林檎箱(長谷川櫂)

7.リンチ/lynch

リンチ

リンチ」とは、「正規の法的手続きをとらず、民衆や団体内において行われる暴力的な私的制裁。私刑」のことです。

リンチは、1770年代、アメリカバージニア州で私的法廷を主宰していたCaptain Wiliam Lynch(キャプテン・ウイリアム・リンチ)の名前が語源です。

リンチは私設法廷で正規の手続きによらず、残酷な刑罰を加えたことから、そのような刑罰を「lynch law」と呼ぶようになりました。

この「lynch law」は、日本で名詞として使われている「リンチ」と同じ意味で、英語で「lynch」は「リンチにかけて殺す」という意味の動詞になります。