「歴史総合」とは?導入の要因と具体的内容は?導入にあたって注意すべき点は?

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歴史総合

我々団塊世代が高校生の頃は、1年で人文地理、2年で世界史、3年で日本史を勉強しました。国立大学の試験科目は、英・数・国・理・社で、文系の場合、数学は数学ⅡBで、理・社は選択(私は生物と世界史Bを選択)だったと思います。

ところで、その頃は、世界史にしても日本史にしても、近現代史(特に現代史)については、「時間があれば教科書を読んでおくように」という程度でお茶を濁されていました。今もそうなのかもしれません。

また、世界史と日本史との関連については、あまり触れられませんでした。たとえば日本の戦国時代(15世紀末~16世紀末)は、イギリス(イングランドとアイルランド)ではエリザベス1世の時代であったということは、年代を見ればわかることですが、高校生当時の私はほとんど考えませんでした。

欧米列強は16世紀の「大航海時代」(15世紀半ば~17世紀半ば)以降、「帝国主義」による「植民地支配」を開始します。これは日本の戦国時代から江戸時代にかけての世界の趨勢です。

明治時代の日本の富国強兵政策や、日清戦争・日露戦争の原因もそこにあります。日中戦争やそれに続く太平洋戦争もこの流れの中にあります。

そういう意味で、「日本史」「世界史」という区分を廃して「歴史総合」という新科目を作ることは大変重要なことだと思います。

1.現在の高校の「社会科」の授業科目

現在の高校の授業科目に、「社会科」は存在しません。

中学校では「社会科」という科目があり、「地理的分野」「歴史的分野」「公民的分野」の3つに分かれています。それに対して、高校では「社会科」ではなく、「地理歴史科」と「公民科」の2つが設けられています。

「地理歴史科」のうち、「歴史科」は、世界史A、世界史B、日本史A、日本史Bの4つに分類されています。

●世界史A(2単位)近現代を中心とする世界史

●世界史B(4単位)古代から現代までの世界史

●日本史A(2単位)近現代を中心とする日本史

●日本史B(4単位)古代から現代までの日本史

世界史については、世界史Aか世界史Bのいずれか1科目を必修。日本史については、日本史A、日本史B、地理A、地理Bから1科目を必修となっています。

つまり、世界史は全ての高校生が学びますが、日本史は地理との選択履修なので、学ばない高校生もいるのです。

2.「歴史総合」とは

歴史総合・検討素案

2015年8月5日、文部科学省が発表した新学習指導要領の素案によると、高校の歴史科は次のように変化します。

◇日本史Aと世界史Aを融合した「歴史総合(仮称)」を新設し、必修科目とする

◇世界史は必修ではなくなる(見通し)

日本史Aと世界史Aは、それぞれ近現代史を中心とした内容です。

つまり、2022年からは、すべての高校生が「歴史総合」で「日本と世界の近現代史」を学ぶことになるのです。

3.「歴史総合」導入の要因

(1)近現代史分野の学習不足

2005年に国立教育政策研究所が行った「教育課程実施状況調査」では、日本史Bの近現代史分野(第一次~第二次世界大戦期)において、生徒の90%近くが標準的な正答率を下回ったという結果になりました。以降も、高校生の近現代史の学習不足が継続的に見られました。

従来の歴史の授業は古い時代から順に学ぶ傾向があり、近現代史の内容がおろそかになりやすいことが、原因の1つと考えられます。

(2)日本史の必修化を求める声

現行の学習指導要領では、世界史が必修で日本史は選択となっています。そのため、理系クラスの生徒を中心に、日本史の授業を一度も受けないまま高校を卒業する生徒も少なくありません。

「これからの社会を担う若者が、自分の国の歴史を学ばないままでいいのだろうか……」という考えから、「日本史を高校の必修にしてほしい」という声は以前から上がっていました。

これらの問題を踏まえて生まれようとしているのが、「歴史総合」という必修科目です。世界史と日本史を融合し、これまで学習不足が目立っていた近現代分野を中心に学ぶことで、上記の問題の改善が期待されます。

(3)グローバル化への対応

近現代以降の歴史を学ぶためには、世界大戦に代表されるように、国と国のつながりを捉えることが重要です。日本の近現代史はもちろん、現代の国際情勢を学ぶ上でも、諸外国との関係や世界情勢と切り離して考えることはできません。

そのため、従来のように「日本史」と「世界史」を分けて歴史を学ぶのではなく、2つを融合した「歴史総合」という科目が求められたという側面もあるようです。

「歴史総合」を新設することによって、時代認識や国際感覚を磨き、グローバル化した社会で活躍する人材を育成したいという目的もあります。

4.「歴史総合」の具体的内容

(1)具体的な授業内容

「歴史総合」の具体的な内容については、2022年のスタートを目指して現在も検討が続いています。現時点でわかっているのは、次のような授業になるということです。

◇日本と世界の動きを関連づけて、歴史の流れをつかむ

◇年号を詰め込むのではなく、生徒たちが調べたり議論したりする

以上から予想できることは、暗記に頼った勉強法は通用しなくなるということです。そして、日本や世界の歴史に興味・関心を抱き、自ら学ぶ姿勢が重要になるということです。

日頃からニュースや新聞で世界の動きに目を向け、親子で話し合ったり、自分で調べる力を身につけたりすることが、「歴史総合」の力を養うことにつながるでしょう。

(2)育成する資質・能力

・今回新たに設置された「歴史総合」は、「近現代の歴史の変化に関わる諸事象について、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉え、資料を活用しながら歴史の学び方を修得し、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察、構想する科目」です。

・活動の中心は、「社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動」(学習指導要領の目標の注書)であり、それを通じて育成される資質・能力が、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」です。

(3)「歴史総合」で働かせる見方・考え方

・「歴史総合」で働かせる「見方・考え方」とは、「社会的事象の歴史的な見方・考え方」です。

・言い換えれば、「社会的事象を、時期、推移などに着目して捉え、類似や差異などを明確にし、事象同士を因果関係などで関連付け」て働かせる際の「視点や方法(考え方)」です。

・具体的に以下の5つの視点と方法があげられています。
①時系列に関わる視点……………………時期・年代など
②諸事象の推移に関わる視点……………展開・変化・継続など
③諸事象の比較に関わる視点……………類似・差異など
④事象相互のつながりに関わる視点……背景・原因・結果・影響・関係性・相互作用など
⑤現在とのつながり
上記5点などに着目して、比較したり関連させたりして社会事象を捉えることです。

(4)いかにして「歴史的な見方・考え方」を働かせるか

・「社会的事象の歴史的な見方・考え方」、つまり、上記の視点・方法を働かせることとは、次の2点です。

①時期・推移などに着目して因果関係などで関連付けて捉え、現代的諸課題の形成に関わる近現代の歴史について考察すること

②歴史に見られる課題や現代的諸問題について、複数の立場・意見を踏まえて構想すること

上記2点を用いることによって、獲得する知識の概念化、理解の一層の深化、課題を主体的に解決しようとする態度を進めることです。

5.「歴史総合」導入にあたって注意すべき点(私の個人的意見)

(1)近現代史についての「正しい歴史認識」が必要

日本を取り巻く国際情勢が厳しい近現代史についての「正しい歴史認識」なしに、日本人の真のグローバル化はありえません。

(2)GHQによる日本人洗脳プログラム「WGIP」の呪縛からの解放が必要

日本は太平洋戦争での敗戦後、占領軍のGHQによる原爆投下を正当化し、日本人の愛国心を奪う日本人洗脳プログラム「WGIP」が実施されました。この影響(悪影響)で現在も多くの日本人は「自虐史観」を持っています。

なお、戦勝国による一方的な「極東国際軍事裁判」において「A級戦犯」「BC級戦犯」が裁かれましたが、この「戦犯」について、多くの日本人が正しく理解していないと思われますので、これをきちんと教えることも必要だと思います。

(3)中国や韓国による「反日教育」への批判的視点が必要

中国や韓国は、現在も「国家ぐるみのヘイトスピーチ」とも言うべき偏向した「反日教育」を行っています。これを無批判に受け入れるべきでは決してありません。

(4)日本固有の領土である尖閣諸島・竹島・北方領土の現実をきちんと教えることが必要

現在も北方領土はロシアに不法占拠されたままであり、竹島は韓国に実効支配されています。尖閣諸島周辺には中国が頻繁に領海侵入を繰り返し実効支配を狙っています。

この現実を正しく教える必要があります。

(5)国際連合は第二次大戦の戦勝国(常任理事国)中心の組織で機能不全に陥っている

国際連合では、第二次大戦の戦勝国が「拒否権」を持ち、敗戦国の日本はどれだけ資金拠出していても、発言権はほとんどない機能不全の組織であり、税金の無駄遣いとなっています。

また従軍慰安婦などに関する国連報告のように、日本の国益に反する「事実に基づかない誤った報告」が独り歩きしている現実があり、百害あって一利なしです。

ユネスコによる「世界自然遺産」や「世界文化遺産」にも問題がたくさんあります。

(6)「天皇制」はGHQの占領政策の都合で存続された時代錯誤の身分制度

「天皇制」は、本来民主主義国家日本にはふさわしくない時代錯誤の身分制度ですが、GHQが日本の共産主義化を恐れて存続させたものです。

今年「憲法改正」論議が本格的に始まります。覇権主義的・侵略主義的国家である中国やロシアやいつ暴発するかわからない北朝鮮の脅威を受けている日本としては自衛隊の明文化は当然必要ですが、「天皇制廃止」も含めて検討されるべきものです。また、「昭和天皇の戦争責任」についても考える必要があります。

それに、「明治天皇は即位直後に暗殺されて長州人の大室寅之祐にすり替わった」という信憑性の高い説もありますので、「皇位継承者確保策」を検討するよりも、そもそも論として「現在の天皇家の正統性」の歴史的検証も必要ではないかと思います。

(7)「発展途上国支援」は独裁者の私腹を肥やす結果になったことをきちんと教えること

日本は敗戦後、インドネシアなどへの国家賠償だけでなく、ODAなどで多額の「発展途上国支援」を行ってきました。しかしそのかなりの部分が独裁者の私腹を肥やす結果になっていることをきちんと教えるべきです。

むしろ、発展途上国支援を削減し、「相対的貧困率」が高い日本の貧困者への支援を拡充すべきとの認識が必要です。

(8)「温暖化対策」や「脱炭素」「電気自動車」「再生エネルギー」の問題点を教えること

今の社会風潮として、「温暖化対策」や「脱炭素」「電気自動車」「再生エネルギー」が当然の常識のようになっていますが、これが必ずしも正しい選択ではないことを、デメリットも含めてきちんと教える必要があります。

(9)テレビなどのマスコミや社会風潮に惑わされない確固としたプリンシプルを持つこと

日本人の「国民性」かもしれませんが、信念がなく状況の変化に応じて「変節する」というか安直にころころ考え方を変え、必要以上に同調性を発揮して「プリンシプル」がありません。たとえば太平洋戦争の敗戦を境に「鬼畜米英」から「アメリカ礼賛」に変わるように・・・。

前に「日本の新聞に不偏不党はあり得ない」という記事を書きましたが、マスコミに騙されてはいけません。この2年間の「コロナ報道」を見ていると、「フレーミング効果」による「認知バイアス」を誘うものが多く見られました。

歴史を学ぶことを通じて「この世の中には嘘が多い」ということと、自分の考えをしっかり持つことの重要性をきちんと教える必要があると私は思います。

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