1.クワガタムシを詠んだ俳句
クワガタムシも、カブトムシと並んで俳句の夏の季語ですが、クワガタムシを詠んだ俳句は歳時記を繰っても見当たりません。力強いカブトムシに比べるとインパクトが弱くて、マイナーなイメージがあるからでしょうか?
私が小学生時代に夢中になった昆虫の双璧は「カブトムシ(兜虫)」と「クワガタムシ(鍬形虫)」です。あの頃は、「かぶと」「げんじ」と呼び習わしていました。
2.クワガタムシの魅力
私はカブトムシも大好きですが、クワガタムシの魅力も捨てがたいものがあります。最近は「オオクワガタ(大鍬形)」が大人気で、オオクワガタが多く生息することで知られる大阪能勢町の三草山などでは、業者が大量に捕獲して行くので、個体数が減ったという話も聞きます。
私は、オオクワガタにはあまり魅力を感じません。それよりも「ミヤマクワガタ(深山鍬形)」と「ノコギリクワガタ(鋸鍬形)」が私のお気に入りでした。
中でも優美な曲線の「大顎(おおあご)」(普通、角と呼んでいる頭部の部分)を持ったノコギリクワガタはとても魅力的でした。クワガタムシは英語で「stag beetle」(雄鹿のような甲虫)と呼ばれるように優美な曲線の立派な角は、私の憧れでもありました。
オオクワガタは黒褐色、ミヤマクワガタは茶褐色の体色ですが、ノコギリクワガタはカブトムシに似た赤褐色のものが多かったようです。
(1)ミヤマクワガタ
ミヤマクワガタは、ごつごつした甲冑を纏ったような感じで、体表に金褐色の細かい微毛が生えています。「深山」と名前に付いていますが、「深山幽谷」に生息しているわけではなく、人里近くの里山の櫟(クヌギ)林で見つけることが出来ました。私は小学生の頃、摂津峡の桜公園から青少年キャンプ場へ行く途中の櫟林で採集しました。
7月下旬の早朝に、櫟の木の幹を足で蹴ると、幹や木の葉につかまって休んでいたクワガタムシが落ちて来ます。それを見逃さずに、木の根元付近の草むらを捜すわけです。クワガタムシが簡単に落ちてくるのは、脚の握力がカブトムシに比べて弱いこともあるかも知れませんが、「防御反応」のようです。外敵が来たと悟って、木の上にいるのは危険だとばかりに、脚を幹や葉から離して落下し、「死んだふり(擬死状態)」をするわけです。そして、万一見つかっても草むらで体を硬直させて死んでいるように見せかけ、外敵を欺くのです。私も動かないクワガタムシを拾い上げて、指で背中を何回か弾いて生きていることを確かめたものです。
ある時、「樹液酒場」と呼ばれる樹液の沢山出ている櫟の木があり、そこに「カナブン(金蚉)」や「ゴマダラチョウ(胡麻斑蝶)」のほかにクワガタムシもいたのですが、「オオスズメバチ(大雀蜂)」も樹液に群がっており、刺されては大変なので、クワガタムシの採集を断念したことがあります。
(2)ノコギリクワガタ
ノコギリクワガタの大顎は、優美な曲線を持つものが多いのですが、中には雌の大顎を伸ばしたような、ほぼ直線のものもいます。しかし、これは私には全く魅力がありません。なぜこういう変化が出るのか、本当に同じ種類かと疑うほどです。
3.カブトムシとクワガタムシのどちらが強いか
「異種格闘技」ではありませんが、カブトムシとクワガタムシを戦わせたこともありますが、大抵はカブトムシの方が強くて、体が扁平で薄いクワガタムシを、角で挟んで投げ飛ばすことが多かったように記憶しています。
確かにクワガタムシは、横から見ると本当に扁平で薄っぺらい体つきをしています。一方カブトムシは逞しい分厚い胸板で、見るからに強そうです。
4.ミヤマクワガタにまつわる「痛い」思い出話
小学校5年の時だったと思いますが、例の摂津峡の櫟林で体長7cm以上もある「ぬし」のような大きなミヤマクワガタを捕まえて、夏休みの宿題の「昆虫標本」として出したことがあります。その時、担任の先生がその巨大さに驚いたのか、学校に寄贈してくれるよう依頼されたので、先生に預けました。その後、ホルマリン漬けにするか、標本箱のまま防虫剤を入れて大切に保管されているのか、もう捨てられてしまったのかわかりません。もし、まだ保存されているようなら、もう一度再会したいものです。
この大きなミヤマクワガタには、「痛い」思い出が二度あります。一回目は、採集した直後のこと、持参した煙草の「ピース缶」は小さすぎで簡単に入り切らず、押し込もうとして指を挟まれてしまいました。同行してくれた父がすぐに飛んで来て、大顎を広げてくれたので事なきを得ました。しかし、大型のミヤマクワガタはカブトムシを羽交い締めにして、大顎で身体に穴を開け、深い傷や致命傷を負わせることもあるそうなので、注意が必要で侮れません。
二回目は、飼い始めて数日経った頃、このクワガタが全く動かなくなったのです。それで死んだものと思い、昆虫標本にする為、「昆虫標本セット」の殺虫剤と防腐剤を注射することにしました。ところが注射針を刺して殺虫剤を注入した途端に脚をばたつかせ始めたのです。しかし、もう体に穴を開けてしまったので、長生きは無理と諦め、そのまま「安楽死?」させました。クワガタが「擬死状態(死んだふり)」を演じることを忘れていたのです。
色々と思い出して書いて行くと切りがありませんので、この辺にしておきます。