昔上皇様が持ち帰って繁殖したブルーギルを、不妊化で駆除する計画は疑問が多い

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ブルーギルゲノム編集

2019年9月11日、注目の小泉進次郎氏が環境大臣に就任しました。小泉大臣には、「環境問題」についてとかく注目されやすい「地球温暖化問題」や「海洋プラスチックごみ問題」についても、今一度立ち止まって今までの進め方が正しいのか再検討してほしいと思います。

それとともに、私が今一番問題だと思うのは、駆除対象となっている「特定外来生物の繁殖問題」と、保護対象となっている「野生鳥獣による農作物被害問題」と「カラスによる生ゴミの食い荒らし問題」です。この三つのほうが、日本にとって喫緊の課題です。新大臣の手腕で有効な対策を打ち出すことを大いに期待したいと思います。

1.ブルーギルの不妊化による根絶の研究

2019年7月31日の毎日新聞の報道で、「遺伝操作で外来魚駆除 ブルーギルを不妊化 琵琶湖で実用めざす」との報道がありました。

遺伝子を効率よく改変する「ゲノム編集」技術を使い、生態系に悪影響を与える外来魚のブルーギルを不妊化させて根絶させる実証実験です。国立研究開発法人「水産研究・教育機構」と三重大学の研究チームが平成26年からこの「遺伝子制圧方式」の研究を始めました。

平成26~28年度ですでに89百万円の予算を使っています。数年以内に、近畿地方の池に放流し、実験データを集めて琵琶湖での実施を目指しているそうです。

2.ブルーギル持ち込みの経緯

現在、琵琶湖の厄介者の外来魚の代表格は、「ブラックバス」と「ブルーギル」です。

このうち「ブルーギル」は、実は上皇様が皇太子時代に、アメリカを訪問された時に、シカゴ市長から寄贈され、日本に持ち帰ったのが最初だそうです。

Wikipediaには、次のように書かれています。

日本への移入は、1960年に当時の皇太子明仁親王が外遊の際、アイオア州グッテンバーグで捕獲されたミシシッピ川水系原産の15尾をシカゴ市長から寄贈され、日本に持ち帰った15匹が最初である。

その15匹は水産庁淡水区淡水研究所食用研究対象として飼育した後、1966年に静岡県伊東市の一碧湖に放流した。このことは、2009年に三重大学生物資源学部が発表したミトコンドリアDNAの解析結果により、全都道府県の56ヶ所で採取した1,398体全ての標本の塩基配列が、米国13地点で採取したサンプルのうちグッテンバーグで採取したものと完全に一致したことで証明された。

上皇様は「食用になるのではないか?」という軽い気持ちで、悪気はなかったはずですが結果的に今やその駆除に大変苦慮する事態となっています。皇居の水槽の中か、精々皇居の庭で飼育しておけば、いかに獰猛で在来魚を食べ尽くすような恐ろしい魚だということが分かったはずです。

しかし、皇太子から寄贈を受けた水産庁の研究所の方が責任重大です。その当時、ブルーギルについての知識が不足していて日本固有の在来魚と仲良く共存できると考えていたのか、生態系の破壊に関する知識が水産庁の研究所の人々に欠如していたのかわかりませんが、「取り返しのつかない大失態」を仕出かしたものです。

同じくWikipediaによれば、2007年には次のようなご発言がありました。

ブルーギルが今や外来種として深刻な問題を起こしていることについて、天皇即位後の2007年第27回全国豊かな海づくり大会において天皇は「ブルーギルは50年近く前、私がアメリカから持ち帰り、水産庁の研究所に寄贈したもの。食用魚として期待が大きく養殖が開始されましたが、今このような結果になったことに心を痛めています」と発言した

ブルーギルの繁殖力と生命力、捕食力、餌の競合、在来魚種の卵や稚魚の捕食などの点で、日本の池や湖の生態系には、大変な脅威となっています。しかも食用にも釣りの対象にも適していません。

3.「遺伝子制圧方式」による外来魚駆除は疑問

私は、専門家ではないので、科学的根拠は持っていませんが、このやり方には疑問があります。

(1)不妊化ブルーギルを実験的に池に放流するだけで、「生態系に悪影響」を及ぼす

(2)現在の琵琶湖のように、手が付けられないほど繁殖しているブルーギルに、さらに不妊化ブルーギルを追加放流するのは「火に油を注ぐ」ようなもの

(3)不妊化ブルーギルをはるかに上回るブルーギルがいる状態で、「一体何十年後に根絶できると考えているのか」疑問

アメリカの湖のデータを元にした試算では、「当初の生息数の10%弱を毎年放流、捕獲と組み合わせれば、琵琶湖などでも数十年で根絶できる可能性がある」とのことです。しかし、捕獲する中に不妊化ブルーギルも含まれるでしょうし、そもそも今の10%増しのブルーギルを放流することだけで、在来種の減少数はさらに増えると思います。

現在、琵琶湖のブルーギルは約1000トンだそうですが、毎年100トンのブルーギルを追加放流するというのは正気の沙汰ではないように思うのですが・・・

1960年当時の水産庁研究所による「ブルーギル放流という失敗」の上に、さらに失敗を重ねるような気がしてなりません。

4.ハブ退治にマングースを投入して失敗した例に学べ

前に「ハブとマングース」の記事を書きましたが、かつて、沖縄の人々が、ハブの被害に苦しんでいた時、東大の有名な動物学者が「マングースを投入すればハブを退治できる」との助言を与え、それを実行した結果、今ではマングースが増えすぎて駆除に苦慮しているそうです。

この「前車の轍を踏む」ことのないようにお願いしたいものです。

やはり、アナログかもしれませんが、たとえ上記の研究費相当額の1億円を漁業者に支払ってでも、愚直にブルーギルの徹底的捕獲・駆除に注力してもらうのがベストだと思います。捕獲したブル-ギルをそのまま食用にするのか、飼料にするのか、廃棄処分にするのかは研究の余地があると思います。

コメント

  1. 浮人 より:

    私のブログを見て下さって有難うございます。さっそく寄らせて頂きました。

    おっしゃるように、ゲノム編集を行ったブルーギルを琵琶湖に放つという行為は私も異を唱えますが、そもそも何故にブラックバス・ブルーギルが悪玉外来種の筆頭に捉えられるのでしょうか?
    日本には多くの外来種が存在しており、その中には人体に大きな影響を与えるものも少なくありません。しかし、それらの外来種が話題として取り上げられるのは一瞬で、ほとんどの場合、一過性のケースが多いにも関わらずブラックバス・ブルーギルに対してのみ、非常に長期にわたり取り上げられ続けています。
    なぜなのでしょうか?
    ブラックバス・ブルーギル問題を考えるとき、このことをまず考える(疑う)べきであると考えます。
    過去、現・東京都小池知事が知事選の街頭演説の折、アルピニストである野口健氏が応援に駆け付けた際に次のような事を延べておられました。
    「ブラックバスには利権があり自民党の圧力があったが、小池さんが『環境省としてやると決めたらやる』と言った」と実行力をアピールしておられました。
    野口氏の発言自体はあまりに無教養で浅はかなのですが、問題はこのように政治的な場面においても使われているということです。

    今回は琵琶湖におけるブルーギル撲滅のための記事でしたが、そもそも琵琶湖へブルーギルを逃がしたのは彦根にある滋賀県水産試験場です。
    淡水真珠の養殖を目的に導入したのですが、試験場の不備により全数が逸脱してしまったのがことの始まりです。

    長くなってしまいましたが、今後も寄らせて頂きたいと思います。