「一」から「万」の数字を含むことわざ・慣用句(その23)「万」

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人間万事塞翁が馬・絵

数字を含むことわざ・慣用句と言えば、「三人寄れば文殊の知恵」とか「三つ子の魂百まで」などたくさんあります。

前回は「人数・年齢・回数・年月や時間・距離・寸法」を表す数字を含むことわざ・慣用句を紹介しました。そこで今回は、その他の「一」から「万」までの数字を含むことわざ・慣用句をまとめてご紹介したいと思います。

なお面白い数字の単位についての話は、前に「数字の単位は摩訶不思議。数字の不思議なマジック・数字の大字も紹介!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧下さい。

23.「万」を含むことわざ・慣用句

(1)人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま):人生における幸不幸は予測しがたいということ。幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないというたとえ。

人間は「じんかん」とも読み、「人類」ではなく「世間」を意味します。

次のような故事に由来します。

昔、中国北方の塞(とりで)近くに住む占いの巧みな老人(塞翁)の馬が、胡の地方に逃げ、人々が気の毒がると、老人は「そのうちに福が来る」と言った。
やがて、その馬は胡の駿馬を連れて戻ってきた。
人々が祝うと、今度は「これは不幸の元になるだろう」と言った。

すると胡の馬に乗った老人の息子は、落馬して足の骨を折ってしまった。
人々がそれを見舞うと、老人は「これが幸福の元になるだろう」と言った。

一年後、胡軍が攻め込んできて戦争となり若者たちはほとんどが戦死した。
しかし足を折った老人の息子は、兵役を免れたため、戦死しなくて済んだ。

(2)風邪は万病のもと(かぜはまんびょうのもと):風邪はあらゆる病気を引き起こす原因になるから、用心が必要であるということ。たかが風邪と甘く考えないように戒める言葉。

「風邪は百病の長」とも言います。

風邪は万病のもと

(3)万事休す(ばんじきゅうす):もはや施す手段がなく、万策尽きること。もはやおしまいで、何をしてもだめだということ。「宋史」荊南高氏世家から。

なお、「万事窮す」と書くのは誤りです。

万事休す

「万事」とは、すべてのこと。
「休す」とは、休む(憩う)の意味ではなく、すべておさまるという意味。
今さら何をしてもだめだ、もうおしまいだ、という意味。

荊南を継いだ王子の保勛は甘やかされて育った。人が怒ってにらんでもにこっと笑う保勛に、荊南の人々が「万事休すだ」と言ったという故事(王が保勛を溺愛し、それを見た人々が「万事休すだ」と嘆いたという説もある)に由来します。

その後、保勛が四代目当主になってから政治は乱れ、国は滅びました。

(4)万能足りて一心足らず(まんのうたりていっしんたらず):あらゆる技芸に達しているが、肝心の心の修養が足りないこと。万能よりも一心が大切だという教え。

「万能」は「ばんのう」とも読みます。四字熟語では「万能一心(ばんのういっしん/まんのういっしん)」です。

万能足りて一心足らず

(5)長者の万灯より貧者の一灯(ちょうじゃのまんとうよりひんじゃのいっとう):金持ちが見栄をはって差し出す大量の寄進より、たとえわずかでも貧乏人が心を込めて捧げる寄進の方がまさっている(功徳が大きい)ということ。

形式よりも真心が大切であるということのたとえ。「貧者の一灯」とも言います。

貧者の一灯

(6)万死に一生を得る(ばんしにいっしょうをえる):ほとんど助かる見込みのないような危険な状態を脱して、かろうじて命が助かること。

「万死」とは、とうてい生命の助かる見込みがないこと。

(7)人間一生二万日(にんげんいっしょうにまんにち):人間の平均寿命はかつては五十年とされ、日数にすると約二万日ということになり、一生は長いようにも短いようにも思われるということ。

(8)千万人と雖も吾往かん(せんまんにんといえどもわれゆかん):自分の信じた道は、たとえ千万人の敵がいても、恐れることなく立ち向かっていくということ。

(9)一人虚を伝うれば万人実を伝う(いちにんきょをつたうればばんにんじつをつたう):一人がでたらめを伝えれば、大勢の人が次々にそれを言いふらして事実にしてしまうということ。

(10)一天万乗の君(いってんばんじょうのきみ):天下を治める天子のこと。

「一天」は天下、「万乗」は兵車一万台。

中国の周代、天子は戦いの時に一万台の兵車を出すことができたことから。

「万乗の君」とも言います。

(11)一波纔かに動いて万波随う(いっぱわずかにうごいてまんぱしたがう):一つの小さな事件の影響が、いろいろな方面に及ぶことのたとえ。

波が一つ起きると、そこからたくさんの波が続いて起きるということから。

(12)一夫関に当たれば万夫も開くなし(いっぷかんにあたればばんぷもひらくなし):地形がきわめて険しく、守備が固い場所のこと。

たった一人が関所を守っていれば、万人の兵が攻めても突破できないとの意から。

(13)家書万金に抵る(かしょばんきんにあたる):旅先で受け取る家からの手紙は、万金に匹敵するほど貴重だということ。

(14)食後の一睡、万病円(しょくごのいっすい、まんびょうえん):食後のひと眠りはからだによいというたとえ。「万病円」は、万病に効果があるといわれる丸薬。

(15)食後の一睡、万病丹(しょくごのいっすい、まんびょうたん):食後のひと眠りはからだによいというたとえ。「万病丹」は、万病に効果があるといわれる丸薬。

(16)先手は万手(せんてはまんて):機先を制することが、どんな手段より効果的だということ。