最近、「高齢者が自分の預金を自由に引き出せない」ことが問題になっているようです。超高齢化社会となった日本で、今後この問題はますます切実になりそうなので、じっくり考えてみたいと思います。
1.特殊詐欺(振り込め詐欺など)対策
特殊詐欺の防止などの観点から、銀行は預金者が一定年齢以上の場合、預金の引き出しを制限したり、使途の詳しい説明を求めたりするケースが増えているそうです。
自分が認知症でもなく、振り込め詐欺でもなくて、事情があって高額の現金引き出しをする場合、銀行からあれこれ聞かれるのは煩わしいことは否めませんが、犯罪防止の観点から甘受しなければいけないということでしょうか?
2.認知症対策
金融機関では、一定年齢以上の顧客を対象に、「一律の対応ルール」を設けるところが増えています。目安は「70歳以上」だそうです。ほとんどの場合、ルールは公表していませんが、ある大手銀行は、「支店にもよるが、70歳以上の契約には代理人同伴が原則」ということです。
これは、地主の高齢者が、遊休土地にワンルームマンションを建設するため、ローンの借り入れを希望する場合、銀行としては、当該高齢者の借入意思確認を慎重に行う必要があるためでしょう。貸金庫を利用しようとする場合も、同様です。
3.銀行による引き出し制限
(1)高齢者の高額現金引き出し制限
高齢者が歩行が不自由になって自分で銀行に出向くことが困難になったり、認知症になって自分で現金引き出しの手続きが困難になった場合、配偶者や子供が「代理人」となっていないと、大変困ります。
<2021/1/8追記>銀行や保険会社が高齢者に対し、積極的に「代理人選任」を推奨
最近は銀行や生命保険会社の方から「代理人選任届」を出すよう積極的に呼び掛けています。私も取引銀行や契約している保険会社からの勧めもあり、妻と息子を代理人とする手続きをしました。
(2)長期間使用のないキャッシュカードの利用停止
ATMを過去一定期間(主に1年~3年以上)利用していないと、キャッシュカードでの出金をできないようにしている金融機関もあります。
(3)銀行ハラスメントの問題
普通預金は本来、預金者の求めがあれば直ちに払い戻さなければなりませんが、犯罪防止のため、一定の制限を課すことは法律上認められています。
しかし、「自分のお金なのに自由に引き出せない」という苦情や、「個人の金融取引になぜ警察が介入するのか」といった反発やトラブルも起きています。
立憲民主党の末松義規衆院議員は、2018年12月の衆院財務金融委員会でこのような金融機関の高齢者対応を問題視して、「銀行のハラスメントだ」と発言しました。
知人や家族が自分の預金をおろそうとしたところ、警察に通報され、警官に取り囲まれたなどの事例を複数挙げて、「真面目で健全な預金者の保護を」と訴えました。
金融庁は、「過度に画一的な対応を取り、迷惑をかけたり不愉快な思いをさせたりすることはあってはならない」とし、麻生太郎金融担当相は検討を示唆しました。
4.親が引き出せなくなった時に親の預金を銀行口座から引き出す方法
親が手足が不自由になって施設に入ったり、認知症になった場合に、「成年後見人」制度を利用するという方法もあります。しかし、申請に時間と費用が掛かる上に手続きが面倒だったりするなど問題も多いようです。そこで、普通は子供が親の預金を管理することになります。
その場合の注意点は次の通りです。これは元気な時に確認しておくことが必要です。
(1)通帳、印鑑、キャッシュカードの保管場所の確認
(2)暗証番号の確認
(3)定期預金は解約して普通預金にしておくこと
(4)ある程度の金額は現金化して手元に置いておくこと
最近は定期預金も超低金利なので、あまり抵抗感はないと思います。
このような準備をしておけば、親の入院や介護施設入所などの急な出費にも迅速に対応できると思います。上記の3.(1)でご紹介した「代理人選任届」を出しておくのが一番安心です。
5.終活とエンディングノート
最近は、高齢者の方が、後に残された者に迷惑を掛けずにこの世を去りたいと考えて、元気なうちに身辺整理・後始末をする「終活」や、知らせるべきことを書き上げる「エンディングノート」を活用する人が増えてきているようです。