テレビには「嘘が多い」ことはよく知られています。旅番組でも「仕込み」がなされていて、偶然のような形でうまい具合に「出会い」が演出されています。
NHKの「鶴瓶の家族に乾杯」のような「ぶっつけ本番」の番組は少ないのではないでしょうか?わざわざ「ぶっつけ本番」と銘打つところが、「普通は仕込んでいます」ということの裏返しとも言えます。「テイク2」や「テイク3」、「再現ビデオ」などもざらにあるのでしょう。
前に記事に書きましたが、「感動的な写真」として有名な報道写真も「テイク2」だったということがあります。
1.「ドキュメンタリー番組」での「やらせ」「仕込み」問題
ところで、「ドキュメンタリー番組」と銘打っているのに、「やらせ」や「仕込み」があったことが問題になることがよくあります。
1985年にはテレビ朝日の「アフタヌーンショー」で、「ディレクターが暴走族にリンチを依頼した」とされる「やらせリンチ事件」がありました。
2018年11月のNHK国際放送のドキュメンタリーで、「家族や友人をレンタルする会社」を紹介した際の「利用客」3人が、実は「取材先が用意したスタッフ」だったことが判明し、NHKは「再発防止策を講じた」とのことでした。
ところが、2019年12月9日の、早朝のニュース番組「おはよう日本」の中のビジネス情報を扱う「おはビズ」のコーナーで、一般客を装って取材先の関係者がコメントしていたことが発覚しました。
当日は都市部に増えている「キャビン型ホテル」の話題を取り上げ、「シューズの貸し出しサービスの利用者」の声を紹介していました。しかし「常連客」として登場した人は、「シューズ提供メーカーの社員」で、「宿泊の経験もなかった」とのことです。視聴者からの問い合わせでNHKが調査した結果判明したそうです。
2.「やらせ」「仕込み」問題の背景
(1)下請けの制作会社への外注
上にあげた「おはビズ」で取材したのは、「外部の制作会社ディレクター」で、施設側が利用者として紹介してきた男性に勤務先を確認したが、うその勤務先を答えていたそうです。
NHKは、「確認の 精度を高めるなど、再発防止に努める」としています。
私は部外者なので詳しいことはよくわかりませんが、NHKに限らず民放でも、番組制作は実質的に下請けの制作会社に外注することが少なくないようです。大手ゼネコンが多くの下請け会社・孫請け会社を使ってビル建設などをするのと似ていますね。
しかし「下請け会社に丸投げ」で「裏付けやチェックが甘い」のは問題です。
「バラエティー番組」や「娯楽番組」であれば、「やらせ」や「仕込み」があってもさほど問題ではないと思いますが、「ドキュメンタリー番組」では許されないことだと思います。「ノンフィクションで真実を伝える」はずの「ドキュメンタリー番組」での「捏造」は「視聴者を欺く行為」に他ならず、「視聴者の信頼を損ねる行為」だからです。
(2)テレビ局の視聴率競争
かつてNHKの人気情報番組「クローズアップ現代」でも「過剰な演出があった」ことが発覚しました。
テレビ局は何とか面白い番組を作って視聴率を上げようと激しい競争をしていますし、下請け制作会社の方でも、「いかにも真相に迫るような番組」を作ってテレビ局に評価してもらおうと必死なのでしょう。せっかく取材しても「空振り」や釣り人が良く言う「坊主」に終われば、取材時間やスタッフなどの費用も無駄になってしまいます。
そこに「やらせ」や「仕込み」の誘惑が芽生えるのではないかと思います。しかし、それは放送倫理に反する「視聴者に対する背信行為」であり、自分で自分の首を絞めることになりかねません。
前にNHKの「街録」という街行く人を対象にしたインタビュー番組や「ドキュメント72時間」というドキュメンタリー番組を、面白い番組として紹介する記事を書きましたが、もしここでも「やらせ」や「仕込み」があったとすれば、失望以外の何物もありません。