「絶対王政(絶対主義体制)」の歴史と現代の「共産党一党独裁国家」との類似性

フォローする



ルイ16世とマリーアントワネット

1.「絶対王政(絶対主義体制)」の歴史

(1)「絶対王政」とは

「絶対王政」とは、「王が絶対的な権力を行使する政治形態」のことです。「絶対主義体制」「絶対君主制」などとも呼ばれます。

歴史的には、西欧で「中世までの諸侯や貴族、教会の権力が地方に乱立し、分権的であった状態」から、「王が強大な権力を持って中央集権化を図り、中央官僚と常備軍(近衛兵)によって国家統一を成し遂げた時代の政治形態」です。

日本で言えば、戦国時代から「天下統一を成し遂げた織田信長、豊臣秀吉、徳川家康」と、それに続く「徳川幕府による幕藩体制」がこれに近いかもしれません。将軍は「天皇による征夷大将軍任命」という権威付けを利用しました。

(2)成立

16世紀から17世紀にかけて成立したイングランドの「テューダ王朝」、フランスの「ブルボン王朝」、スウェーデンの「ヴァーサ王朝・プファルツ王朝」などが代表的なものです。

絶対王政を理論づける思想は、イングランドの政治思想家フィルマーの「王権神授説」でした。

絶対君主は、「封建領主層(貴族・上位聖職者)」には「免税特権」を認めて、国王権力を支える官僚や軍人とし、有産市民層(ブルジョアジー)には「独占権」などを認めて、国王権力に依存させました。

その後、18世紀後半になると、「人権や平等の思想」を唱えるフランスの哲学者・思想家のヴォルテールの「啓蒙思想」の影響を受けて「啓蒙専制君主」が現れます。プロイセンのフリードリヒ2世やオーストリアのヨーゼフ2世などが典型で、ロシアのエカテリーナ2世もこれに近いと言えます。

彼らはイギリス・フランスなどの先進国に対抗して、国家の発展を産業や貿易の振興、軍事力の強化によって図ろうとしました。近代化を図るために「啓蒙思想」を学び、旧来の「王権神授説」に代わる統治理念としたのです。

(3)崩壊

まず、17世紀のイギリスにおいて、スチュアート朝の絶対王政を倒し、立憲民主制を実現させた「イギリス革命」が起こります。これは1642年~1649年の「清教徒革命(ピューリタン革命)」と1688年~1689年の「名誉革命」のことです。

そして1789年~1799年に起こった「フランス革命」が絶対王政崩壊の象徴です。ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは断頭台の露と消えました。

2.現代の共産党一党独裁国家との類似性

(1)中国

習近平主席は着々と「終身専制君主」体制を固めつつあるようです。

2018年3月に「全人代」で再選され、正式に2期目をスタートしましたが、自らの任期を延ばすため「任期制限をなくす憲法改正」も実現しました。

「自らの思想(習近平思想)を憲法に入れる」ことにも成功して独裁者の道をさらに進み、「集団指導体制」は有名無実となったようです。

今のところ、情報統制や検閲・監視体制によって表面的には秩序が保たれているようです。しかし言論の自由がないことや人権抑圧に対する「国民の声にならない不満」のマグマは根強い上に、香港でのデモや台湾で反中派の総統が当選したり、チベット族ウイグル族などの少数民族迫害が全世界に明らかになるなど国際的批判にもさらされています。

「米中貿易戦争」や「新型コロナウイルス肺炎」をめぐっての「医師の警告封殺による感染拡大」や「初動対応の遅れや不徹底により国外への感染を拡大させた責任」も追い打ちをかけそうです。

(2)ロシア

プーチン大統領も着々と「終身専制君主」体制を固めつつあるようです。

2020年1月にプーチン大統領はメドベージェフ首相をクビにして、後任に自らに忠実なミシュスチン税務庁長官を指名しました。そして「議会やその他政府機関の役割強化を目指す抜本的な憲法改正」を提唱しました。

プーチン氏は2000年から大統領もしくは首相として19年以上権力の座に居座り続けています。ロシアの現行憲法では、プーチン大統領は2024年の任期満了をもって大統領を退く必要があります。しかし、政府の「他の役職」に就き、「院政」のような形で引き続き権力を維持する可能性があります。

また、クリミア併合や北方領土の不法占拠の継続など帝国主義的な動きは相変わらずで、アメリカとの「第二次冷戦」など「覇権国家争いの野望」も気になるところです。

(3)北朝鮮

金正恩委員長も「金王朝三代目」として、着々と「終身専制君主」体制を固めつつあるようです。

彼については、前に「北朝鮮の金正恩委員長はソ連のスターリンとよく似た独裁者になって来た」という記事に詳しく書きましたので、ご一読ください。

(4)中国・ロシア・北朝鮮の独裁者の共通性

中国や北朝鮮のような「全会一致で選出」はいかにも「茶番劇」のようです。ロシアのように「一見民主的な選挙」による「76%の圧倒的支持を得ての選出」も、選挙不正疑惑があります。

そして、ライバルの政敵を次々と、「反革命」「国家反逆罪」「汚職撲滅」などの名目で「粛清」して行く「恐怖政治」「暗黒政治」です。独裁者自身も常に「暗殺の恐怖」にさらされています。

また現代において「帝国主義的政策」を取っているのは、皮肉にも共産主義国のロシアと中国です。これは、「新植民地主義」と呼ばれています。「100年遅れの帝国主義」とか「赤色帝国主義」とも言われています。

そういう意味で、現代の「共産党一党独裁国家」は「絶対王政」と「帝国主義国家」の二つの側面を兼ね備えていると言えそうです。

3.共産党一党独裁体制崩壊の可能性

これはなかなか厳しく、容易なことではなさそうです。しかし、可能性としては西欧諸国の絶対王政崩壊と同様、それぞれの国民の「不満のマグマの爆発」のような内部からの「市民革命による政府転覆」しかないと私は思います。

4.日本の天皇は昔から「象徴」に過ぎなかった

蛇足ですが「天皇」は日本国憲法を待つまでもなく、平安時代末期から江戸時代に至るまで「権威の象徴」に過ぎず、「実権者」ではありませんでした。

「保元・平治の乱」のような天皇家の皇位継承をめぐる内紛に藤原氏・平氏・源氏が入り乱れて争った内乱や、「承久の乱」「元弘の乱」のような天皇や上皇が武家に対して反乱を起こした場合は、必ず優勢な武家に鎮圧され配流の憂き目に遭っています。

崇徳上皇(讃岐)、後鳥羽上皇(隠岐)、土御門上皇(土佐)、順徳上皇(佐渡)、後醍醐天皇(隠岐)などがその例です。

明治時代から太平洋戦争終結までの天皇制は、「絶対主義天皇制」と言われることもありますが、実態はそうではないと思います。最終的な責任の所在はあるものの、政府や軍部に実権を握られていました。そういう意味では、江戸時代までと同様「権威の象徴」に過ぎなかったと言えます。