最近、「東大王」などのクイズ番組で、「難読漢字」の問題がよく出て来ます。私は以前から漢字には興味のある方なので、熱心に見ています。
中には、聞いたことも見たこともないような「漢字」や「熟語」が出て来ることもあります。普段使っている言葉でも、「漢字ではどう書くのか知らないもの」もたくさんあります。
今回は、漢字にまつわる面白い話をご紹介したいと思います。
1.面白い漢字や変わった漢字
次にご紹介する漢字の「読み方」や「意味」が何かを、皆さんお考え下さい。答えは最後にあります。
ちなみに、「同じ漢字を2つ組み合わせて構成される漢字」のことは「理義字(りぎじ)」と呼ばれます。また広く形態が奇妙な漢字や、面白い形をした漢字のことを「理義字」と呼ぶ場合もあります。なお「同じ漢字を3つ組み合わせて構成される漢字」のことは「品字様(ひんじよう)」と呼ばれます。
(1)嬲
(2)嫐
(3)麤
(4)鱻
(5)龖
(6)閄
(7)砉
(8)丫
(9)犇
(10)猋
(11)鱻
(12)焱
(13)燚
(14)驫
(15)淼
(16)劦
「読み方」(1)ジョウ・ニョウ、なぶる(2)ドウ・ノウ、なぶる・うわなり(3)ソ、あらい(4)セン(5)トウ(6)コク(7)ケキ・カク(8)ア、ふたまた・あげまき(9)ホン、はしる・ひしめく(10)ヒョウ、はしる・つむじかぜ(11)セン(12)エン。ほのお(13)イツ(14)ヒョウ、はしる・とどろく(15)ビョウ、はるか・ひろい(16)キョウ、かなう・ととのう
「意味」(1)いじめる、手でもてあそぶ、からかう(2)いじめる、手でもてあそぶ、からかう。「うわなり」と読む場合は「後妻」のこと(3)粗雑な、あらい(4)新しい、生魚、魚の臭い(5)二匹の龍、龍が空を飛ぶさま、恐れる(6)物陰から急に飛び出して人を驚かせるときに発する声(7)皮と骨が離れる時の音(8)「ふたまた」と読む場合は木の股、「あげまき」と読む場合は昔の子供の髪型、つのがみ(9)牛の群れが驚いて走る、大勢が押し合って騒ぎ立てる(10)犬が群がり走る、つむじ風(11)魚類、活魚、新しい(12)焔(13)火の燃えるさま(14)多くの馬が走るさま(15)水がいっぱいに広がっているさま(16)力を合わせる(「協」のもとになった漢字)
<番外編>
「木」が2つで「林」、3つで「森」ですが、「木」が8つもある漢字(下の画像)が存在します。
〔読み〕サツ、キ 〔画数〕32画 〔部首〕木偏〔意味〕未詳(*)
(*) 『大漢和辞典』(諸橋轍次著・大修館書店)には「義未詳」とあり、漢字の意味や使い方ははっきりしていません。
この漢字は、「林」が4つあるように見えますが、よく見ると、一番右の列だけが「木」で、あとは全て「木偏」です。
2.日本で一番画数の多い漢字
「雲」という漢字と、「龍」という漢字をそれぞれ3つずつ組み合わせたもので、読み方は「たいと(だいと)、おとど」です。画数は84画です。
「難読姓氏辞典」にあるそうですが、実際に存在したかどうか不明の「伝説の苗字」です。「おとど」は「大殿、大臣」のことですから、高貴な殿上人(雲上人)の苗字だったのかもしれませんね。
ところでこの漢字は、中国伝来ではなく、我が国で作られた「国字(こくじ)」と呼ばれる「和製漢字」です。
蛇足ながら、国字は結構あります。いくつか例を挙げるとつぎのようなものです。
働・俤(おもかげ)・凪(なぎ)・凩(こがらし)・匂・塀・峠・栂・枠・栃・樫・榊・畑
3.漢字の成り立ちの豆知識
漢字は、アルファベットやひらがな・カタカナなどと違って、漢字自体が意味を持っています。ですから、知らない漢字でも意味を推測できる場合があり、そういう意味で大変興味深いものです。
漢字は「どのようにしてできたか」という観点から次の四種類に分類されています。
(1)象形(しょうけい)文字
目に見えるものの形を線で描いた絵をもとに作られた漢字です。
(例)日、月、人、木
(2)指事(しじ)文字
形として表しにくいことがらを、点や線で示し、その図をもとに作られた漢字です。
(例)上、下、天、末
(3)会意(かいい)文字
象形文字や指事文字などを二つ以上組み合わせ、もともとの漢字とは別の意味を表す文字となった漢字です。
(例)岩、森、明
(4)形声(けいせい)文字
発音を表す漢字と、意味を表す漢字が組み合わさって出来た漢字です。漢字の80%以上が形声文字です。
(例)晴:「日」と「青」を組み合わせた文字で、発音を表すのは「青(セイ)」
問:「門」と「口」を組み合わせた文字で、発音を表すのは「門(モン)」
4.難しい漢字の覚え方
「鬱」とか「壽」のように、画数が多い漢字は、一見して「難しい漢字」と思いがちです。しかし、大半の漢字の成り立ち方である「形声文字」なので、どういう漢字が組み合わさって出来ているのかをよく見れば、意外と覚えやすいものです。
そのための簡単な方法は、「文字を拡大して、よく観察すること」です。例えば次のように。
鬱・壽
そうすると、小さい文字の時には見えにくかった組み合わせがよくわかり、覚えやすいのです。私も、この二つの文字は、虫眼鏡で漢和辞典を拡大して、よく組み合わせを見て覚えました。
余談ですが、私は難しい漢字(たとえば、「壽」や「鬱」など)を覚える時、その漢字を紙に大きく書いて、部首を分解してから覚えるようにしていました。これは「分解してから再構成する」という意味で、「ゲシュタルト崩壊」を逆手に取った方法と言えるかもしれません。
5.難しい漢字をラクラク暗記「秒で漢字暗記」シリーズ
最近、漫才コンビ「オジンオズボーン」のボケ担当の篠宮暁さんが考案した「秒で漢字暗記」というのが話題になっています。
彼は独特の発音やリズムが特徴の芸人ですが、それを漢字の覚え方に生かした活動だそうです。漢字を分解して、細かく分けて叫ぶリズムで表現するものです。
具体的には次のような例があります。
①颯爽
「タチカゼ メメメメダァ~イ」
②鬱
「きかんきわきょう ワチョワチョワチョワチョヒミ~」
③薔薇
「くさつちじんじんかーい くさびぃーん」
彼が「秒で漢字暗記」を始めたきっかけは、「安易な考えですが、漢字検定1級取ったらクイズ番組とかに呼んでもらえるんじゃないかと思って漢字の勉強を始めた」のだそうです。
彼は漢字を「語呂合わせ」で覚えていたそうですが、ある時「難しい漢字ほど、ばらした時単純だ」ということに気付いたそうです。
つまり「秒で漢字暗記」は、「クイズ番組に出たくて始めた漢字の勉強中に偶然編み出した暗記法」だったのです。ちなみに彼は「漢字検定準2級」を取得しています。