前に「あいうえお」の順番がどのようにして決まったのかについての記事を書きましたが、今回は「アルファベット」の順番について考えて見たいと思います。
「アルファベット」は母音がばらばらに配置されているのはなぜでしょうか?
今のアルファベットの母胎を作ったのは、古代ギリシャ人です。そのギリシャ人が参考にしたのが、今の中東レバノンを拠点に地中海交易を盛んに行っていたフェニキア人の文字です。
フェニキア語とギリシャ語は全く異なる言語ですが、「文字」だけを借用したのです。
ギリシャ人は自分たちの言葉を文字で表すのに、子音と母音が必要でしたが、フェニキア語には母音を表す文字がなかったのです。
そこでギリシャ人は、フェニキアの言葉にはあって、ギリシャ語にはない子音の言葉を選んで、それで自分たちの言葉に必要な母音を表すことにしました。順番がばらばらなのは、ここに原因があるようです。
ABCD
EFGH
IJKLMN
OPQRST
UVWXYZ
と並べ順を変えると、左端が母音になりますが、「それがどうしたの?」ということであまり答えにはなりませんね。
もう少し由来を詳しく調べると次のようになります。
フェニキア人は、古代エジプトの象形文字から、フェニキア語の発音に必要な22文字を取って、
アレフ、ベート、ギメル、ダレト、エー、ワウ、ザイン、ヘート、テート、ヨード、カーフ、ラメド、メーム、ヌーン、サメク、アイン、ペー、ツァデー、コーフ、レーシュ、シーン、ターウ
と呼びました。ヘブライ語とフェニキア語は、ほとんど同じような言葉なので、そのままへブル文字になりました。
また、古代ギリシャ人もフェニキア文字からギリシャ語に必要な発音の字を取って、足りない文字を最後に付けました。それがユープシロン、フィー、キー、プシー、オメガです。
この時、アレフが「アルファ」、ベートが」「ベータ」になりました。この「アルファ」と「ベータ」が「アルファベット」の語源となりました。
そして、古代ローマ人も、ギリシャ文字からラテン語の発音に必要な文字を取りました。そこで、ややこしい名前を簡略化して、アー、ベー、ケー、デー、エー、エフ、ゲー、ハー、イー、カー、エル、エム、エヌ、オー、ペー、クー、エル、エス、テー、ウー、イクス、ユー(Y)、ゼータと呼びました。ドイツ語とよく似た発音ですね。
ラテン語では、「I」と「J」、 「U」と「V」は同じ文字でしたが、「 J」を「I」と違う発音、「 V」を「U」と違う発音をする国で、区別されるようになりました。それでも文字が足りない国で「W」が作られたということです。
以上は、小林標氏著の「ラテン語の世界」を参考にしました。
欧米言語のアルファベットも、本(もと)を正せば、古代エジプトの象形文字に遡る訳ですね。「世界四大文明」の一つの「エジプト文明」がいかに進んでいたかを実感します。
合わせて、日本語の「あいうえお」の順番のもとになったサンスクリット語を生んだ「インダス文明」の偉大さにも、改めて驚きます。