最近「エルニーニョ現象」に加えて「ラニーニャ現象」という言葉もニュースでよく耳にするようになりました。
そこで今回は「エルニーニョ現象」と「ラニーニャ現象」についてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.「エルニーニョ現象」
(1)「エルニーニョ現象」とは
「エルニーニョ現象」とは、「太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象」のことです。
もともと「エルニーニョ」とはスペイン語で「神の子」(または「男の子」)という意味で、これはペルーの漁師たちが、クリスマスの頃に海水温が高くなることにちなんで名付けたものです。
(2)「エルニーニョ現象」の発生原因
直接的な原因は、何らかの要因で「貿易風」と呼ばれる東風(東寄りの風)が弱まることです。
通常、この海域では、貿易風によって海面付近の暖かい海水が西に流され、海底から冷たい海水が湧き上がってきます。
しかし、何らかの要因で貿易風が弱まると、暖かい海水が西に流されないため、冷たい海水が湧き上がることができません。そのため、海面の水温が高い状態が続いてしまうのです。
なお、「エルニーニョ現象」発生の根本原因については、まだ十分解明されていません。
2.「ラニーニャ現象」
(1)「ラニーニャ現象」とは
「ラニーニャ現象」とは、「エルニーニョ現象とは逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象」のことです。
「ラニーニャ」とは、スペイン語で「女の子」という意味で、1985年にアメリカの海洋学者フィランダーがこの名称を提唱し、定着したそうです。
(2)「ラニーニャ現象」の発生原因
直接的な原因は、何らかの要因で「貿易風」と呼ばれる東風(東寄りの風)が強まることです。
貿易風が強まると、例年より冷たい海水の湧き上がる量が増加します。その結果、海水温が低い状態が長引くのです。
なお、「ラニーニャ現象」発生の根本原因については、まだ十分解明されていません。
3.日本への影響
このような「エルニーニョ現象」や「ラニーニャ現象」は、数年の周期で発生しており、ひとたび起こると日本を含め世界中で「異常な天候が起こる」と考えられています。
(1)「エルニーニョ現象」の影響
①冷夏
夏は「太平洋高気圧」の張り出しが弱くなることで、気温が低くなり日照時間が少なくなる傾向があります。また梅雨が長引きます。
②暖冬
冬は「西高東低」の冬型の気圧配置が弱まり、気温が高くなる傾向があります。
③台風への影響
西太平洋地域の海水温が低くなると、台風の発生する地域が例年よりも南から南東の地域に変化します。その結果、エルニーニョ現象が発生した年の台風は次のような傾向があります。
・7月~9月に発生する台風は例年より少なくなる
・ただし発生した場合は、中心気圧が平常時よりも低い「強い台風」になる
・秋に台風が発生した場合、台風が消滅するまでの寿命が長くなる
(2)「ラニーニャ現象」の影響
①猛暑
夏は「太平洋高気圧」が張り出しやすく、気温も高くなる傾向があります。
②厳冬
冬は「西高東低」の冬型の気圧配置が強まり、気温は低くなる傾向があります。
(3)農業・漁業への影響と生産者・消費者への影響
このような気象変化に一番影響を受けるのが「農作物」や「漁獲量」です。
農作物の不作や漁獲量の減少で価格が高騰することがあります。そういう意味で生産者にとっても消費者にとっても有難くない現象です。
まだ根本原因は解明されていませんが、今後観測データの蓄積により、原因特定と対策の確立が期待されます。