最近、「製造業」の「工場」だけでなく「サービス業」でも、「ISO認証」を取得する企業が増えています。
この「ISO認証」とはどういうもので、どういうメリットとデメリットがある制度なのでしょうか?今回はこれについて幅広く考えて見たいと思います。
1.「ISO認証」とは
まず、「ISO」とはInternational Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称で、国際的に通用する規格を制定している国際機関です。
本部はスイスのジュネーブにあり、世界160ケ国以上が加盟しています。各国の国家規格を策定する標準化団体で構成され、日本からは「日本工業規格(JIS)」を策定する「工業標準調査会(JISC)」が参加しています。
この「ISO」が制定した規格のことを「ISO規格」と言い、製品やサービスを提供する際、世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供するための国際的な基準となっています。
「ISO規格」の代表的なものは、「非常口のマーク」や「カメラの感度」などですが、一方で「ISO規格」には製品そのものではなく、組織の品質活動や環境活動を管理するための仕組み(マネジメントシステム)を制定しているものもあります。
2.「ISO認証」の種類
ここでは、製品ごとのISO規格ではなく、「マネジメントシステム」のISO規格をいくつかご紹介します。
(1)ISO9001:品質マネジメントシステム
(2)ISO14001:環境マネジメントシステム
(3)ISO22000/FSSC22000:食品安全マネジメントシステム
(4)ISO27001:情報セキュリティマネジメントシステム
(5)ISO39001:道路交通安全マネジメントシステム
(6)ISO22301:事業継続マネジメントシステム
(7)ISO45001:労働安全マネジメントシステム
3.「ISO認証」取得のメリットとデメリット
ところで、「ISO認証」取得のメリットとデメリットはどのようなことがあるのでしょうか?
(1)メリット
①作業手順が明確になる
②責任と権限が明確になる
③「PDCA」を回す仕組みが作られる
「PDCA」とは、ルールを作って(Plan)、ルール通りに実施し(Do)、ルールが守られているかどうかをチェックし(Check)、ルールをさらによいものへと改善させていく(Action)という流れの仕組みのことです。
④第三者審査による信頼
(2)デメリット
①審査を受ける段階で「作業の洗い出しや分類」などの膨大な準備作業がある
実は、私もある会社でISO認証取得のための準備作業に携わったことがあります。「作業分析」など非常に手間のかかる膨大な作業でしたが、果たしてこのような各企業の作業内容が、審査するISO側の人間に十分理解できるのかがはなはだ疑問でした。
②「メリット」に挙げたような効果が上がる保証はない
③初期費用だけでなく、継続的に費用がかかる
具体的には、「ISOの登録料」「文書審査料」「実地審査料」といった「ISO取得費用」として、最低限の規模の審査でも50万円~100万円必要になります。
また「ISO認証」の有効期間は3年のため、3年後には更新のために新たな審査を受ける必要があります。3年後の更新審査とは別に1年毎の維持審査も受ける必要があります。
費用は、維持審査が初期費用の約3割、更新費用が初期費用の6~7割かかります。
④コンサル費用がかかる
ただし、これは「コンサルを利用する場合」に限った話ですが、各企業が独力でISO認証を取得することはむずかしいようです。
「モンドセレクション」の場合と同じか、あるいはそれ以上に「ISO認証」に要する手続きは煩雑なようです。しかも、全社員に「ISO認証」の意義などを継続的に周知徹底する必要があるため、「ISOコンサル」というビジネスが多数存在しています。
コンサル費用はどの程度任せるかで大きく異なりますが、「ISO認証取得の意識付けの研修から文書の作成まで」全てを任せた場合は、相当な費用となります。
④維持審査や更新審査で「不認可」となった場合の「レピュテーションリスク」が大きい
一旦「ISO認証」を取得すると、ずっと認証されて当然という認識を持たれるようになるので、その認証が「不認可」となり取り消されると、「レピュテーションリスク」(信用やブランド価値の低下、評判の下落リスク)が心配になります。
「ISO認証」を取得するか否かは、経営者が自由に判断すればよいのですが、膨大なコストがかかったり、社員の負担が重くなる割には、メリットが少ないように私は思います。