前に「春の七草」と「秋の七草」の記事を書きましたが、「夏の七草」や「冬の七草」ってあまり聞きませんよね。
果たして「夏の七草」や「冬の七草」ってあるのでしょうか?今回は「夏の七草」について調べてみました。
実は「夏の七草」として8つも選定されています。古来の「秋の七草」と重複する植物もありますが、これは旧暦と新暦の違いによるものと思われます。
1.「夏の七艸考」楓園鈴木重瑊 著(明治37年<1904年>)
美しい夏の花を選んだオーソドックスな「夏の七草」です。
①ナデシコ(撫子)
②オモダカ(沢瀉)
ちなみに歌舞伎役者の屋号に「澤瀉屋(おもだかや)」がありますね。
これは、初代市川猿之助(二代目市川段四郎)の生家が副業として薬草の澤瀉を扱う薬屋を商っていたといわれることに由来します。
③ユウガオ(夕顔)
④ヒルガオ(昼顔)
⑤ハチス(蓮)
⑥ユリ(百合)
⑦アザミ(薊)
2.「懸葵(かけあおい)8巻6号」つくも生 著(明治44年<1911年>)
これは夏らしい水草ばかりを選んだ「夏の七草」です。
①スイレン(睡蓮)
②ミズアオイ(水葵)
③ガマ(蒲)
④ヒシ(菱)
⑤タヌキモ(狸藻)
⑥ヒンジモ(品字藻)
⑦ミズアサガオ(水朝顔)
3.「観賞植物大図鑑8月巻」安達潮花 著(大正10年<1921年>)
この「夏の七草」も、夏らしく水辺や湿地の植物を選んでいます。
①サワギキョウ(沢桔梗)
②ヒツジグサ(未草)
③ホシクサ(星草)
④ミソハギ(禊萩)
⑤ミズアオイ(水葵)
⑥サンショウモ(山椒藻)
⑦デンジソウ(田字草)
4.勧修寺経雄(*)が詠んだ次の和歌によるもの(昭和初期)
「涼しさはよしいおもだかひつじぐさはちすかわほねさぎそうの花」
この和歌に詠まれた「夏の七草」はなかなか風流で雅趣があります。
(*)勧修寺経雄(かじゅうじつねお)(1882年~1936年)は、旧貴族院議員で伯爵
①ヨシ(葦)
②イ(藺)
③オモダカ(沢瀉)
④ヒツジグサ(未草)
⑤ハチス(蓮)(現在の呼び名は「ハス」)
⑥カワホネ(河骨)(現在の呼び名は「コウホネ」)
⑦サギソウ(鷺草)
5.日本学術振興会学術部・野生植物活用研究小委員会 選定(昭和20年<1945年>)
1945年6月20日に「戦時中の食糧難の時節にも食べられる植物」として選定したものです。
①アカザ(藜)
②イノコズチ(猪子槌)
③ヒユ(莧)
④スベリヒユ(滑莧)
⑤シロツメクサ(白詰草)
⑥ヒメジョオン(姫女苑)
⑦ツユクサ(露草)
6.「植物図絵」本田正次 著(昭和23年<1948年>)
①ヒユ(莧)
②アカザ(藜)
③シロツメクサ(白詰草)
④ヒメジョオン(姫女苑)
⑤スベリヒユ(滑莧)
⑥イノコズチ(猪子槌)
⑦ツユクサ(露草)
7.「学習植物図鑑」理科教育研究委員会 編(昭和26年<1951年>)
①ヒメジョオン(姫女苑)
②シロツメクサ(白詰草)
③アオビユ(青莧)
④スベリヒユ(滑莧)
⑤ツユクサ(露草)
⑥アカザ(藜)
⑦イノコズチ(猪子槌)
8.自然写真家・亀田龍吉 著「写真でわかる雑草の呼び名事典」(平成24年<2012年>)
①チガヤ(白茅)
②ヒルガオ(昼顔)
③ヤブカンゾウ(藪萱草)
④ドクダミ(蕺)
⑤ミツバ(三葉)
⑥ノアザミ(野薊)
⑦ツユクサ(露草)