最近の中国による東シナ海や南シナ海における傍若無人の振る舞いは目に余るものがあります。国際社会や日本政府の表現を借りると「力を背景とした一方的な現状変更の試み」です。
直接日本に影響を及ぼす中国の行動の代表的なものは、「尖閣諸島周辺の日本の領海への侵入」です。
日本政府は「尖閣諸島は日本が実効支配している」と繰り返していますが、中国海警の武装公船の領海侵入や日本漁船追尾に対して海上保安庁の巡視船が「退去を呼び掛ける対応」をしているだけで、より強力で実効性のある措置は取っていません。
2020年11月に茂木外相が王毅外相との会談後の共同記者会見で、王毅外相の「尖閣諸島が中国の領土であるかのような事実に反する発言」に対して、茂木外相がその場で明確な反論をしなかったことも致命的なミスです。
1.尖閣諸島が日本固有の領土である根拠
1885年 沖縄県が尖閣諸島を現地調査し、どの国の支配も及んでいないことを慎重に確認
1895年 閣議決定により尖閣諸島を日本の領土に編入し、沖縄県の所轄とする
1896年 以降、多くの日本人が尖閣諸島に居住し、漁業を中心に鰹節工場や羽毛の採集に従事した。
1951年 サンフランシスコ平和条約で尖閣諸島はアメリカの施政下に置かれるも、日本の領土として残る。
1969年 国際連合アジア極東委員会報告書において、東シナ海に石油が埋蔵している可能性があると指摘
1971年 台湾と中国が公式に尖閣諸島の領有権を主張
1972年 沖縄返還協定により、尖閣諸島を含む沖縄の施政権が日本に返還される
2008年 中国公船が初めて尖閣諸島周辺の領海に侵入
2010年 石垣市が1月14日を「尖閣諸島開拓の日」とする条例を制定
2012年 9月11日に日本が尖閣諸島を国有化
2.中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めた理由
(1)1969年の国連報告で東シナ海に石油埋蔵の可能性を指摘したこと
(2)中国の太平洋への海洋進出のために尖閣諸島が重要な拠点になること
(3)尖閣諸島を奪取すれば沖縄の米軍にとって脅威となり米軍を無力化できること
(4)台湾の分離独立阻止と中国軍による台湾占領を見据え、重要な拠点になること
3.尖閣諸島に各種施設を建設し公務員を常駐させるなどより実効性のある措置を講じるべき
中国が南シナ海でフィリピンやベトナムから島々を奪って、中国の国旗を立て、軍事施設(強固な建物と滑走路)を建設した事例を見ると、尖閣諸島で同様のことが行われる可能性は容易に想像がつきます。
中国は今、南シナ海に三沙市という新しい行政区を作り上げ、中国の一部とする行政組織も完成させています。
2021年2月1日に施行された海警法によって、中国海警には武器使用が認められるようになりましたので、日本がより実効性のある措置を講じなければ、中国の領土侵犯は止められないと思います。
「尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用対象」とアメリカの国防長官が「アメリカの防衛義務を確認」したところで、それだけでは中国への抑止力にはなりません。犬の遠吠えのようなものです。
以前から元東京都知事の石原慎太郎氏やジャーナリストの櫻井よしこさんが主張していたように、「尖閣諸島に上陸して各種施設を建設し公務員を常駐させるべき」だと思います。
また最近は危機感を募らせた自民党内からも「尖閣諸島周辺での自衛隊と米軍の共同演習の要望」が出ているようです。
具体的には次のような対策が考えられます。
①公務員(海上保安庁・気象庁・環境省職員)の常駐
②港湾施設(船溜まり)の建設
③ヘリポートの建設
④気象台の建設
⑤灯台の建設
⑥高台の通信施設・レーダー施設の建設
⑦海上保安庁の巡視船と人員の増強
⑧海上保安庁に取り調べその他の法的権限の付与
⑨海上保安庁の補給基地の建設
⑩海上自衛隊の機動的出動
自衛隊による「自衛権」発動が必要な事態にならないことを祈るばかりです。
尖閣諸島に限らず、朝鮮半島が赤化統一されれば対馬が最前線基地となるなど「島嶼防衛強化の必要性」が近年高まっています。
日本政府にはぜひ万全の態勢を構築してほしいものです。
4.尖閣諸島の接続水域への中国公船の侵入状況
尖閣諸島国有化(2012年9月14日)以降の中国公船(中国海警局の船)の接続水域(うち「領海侵入」はカッコ内の数字)への侵入状況は以下の通りです。
2021年2月1日以降は「海警局の武装公船」というよりも、「第二海軍の船」「準軍艦」と言った方が実態に合っているように思います。
2012年 79回/延べ428隻(うち「領海侵入」20回/延べ68隻)
2013年 232回/延べ819隻(うち「領海侵入」54回/延べ188隻)
2014年 243回/延べ729隻(うち「領海侵入」32回/延べ88隻)
2015年 240回/延べ709隻(うち「領海侵入」35回/延べ95隻)
2016年 211回/延べ752隻(うち「領海侵入」36回/延べ121隻)
2017年 171回/延べ696隻(うち「領海侵入」29回/延べ108隻)
2018年 159回/延べ615隻(うち「領海侵入」19回/延べ70隻)
2019年 282回/延べ1,097隻(うち「領海侵入」32回/延べ126隻)
2020年 333回/延べ1,161隻(うち「領海侵入」29回/延べ88隻)2021年 29回/延べ108隻(1/1~2/4)(うち「領海侵入」3回/延べ6隻)