やどかり・にんにく・エイプリルフール・木の芽時・催花雨・霾など春の面白い季語

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やどかり

1.やどかり

ヤドカリCMプレサンスコーポレーションCMヤドカリ

「やどかり(宿借、寄居虫)」は、巻貝の殻に棲みつくエビ目ヤドカリ下目の甲殻類で、古くは「ごうな」と呼ばれました。

実際に生きたやどかりを目にした人は少ないのではないかと思いますが、マンションデベロッパーの「プレサンスコーポレーション」のテレビCM(上の画像)でおなじみですね。

「やどかり」は、何ともひょうきんでユーモラスな感じがします。

子季語・関連季語には、「ごうな」「本やどかり」「ごうな売り」「やどかり売り」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・宿大き すぎて寄居虫 涙ぐみ(林 翔)

・難儀して 寄居虫ひねもす 宿探す(高澤良一)

・寄居虫の 口惜(くちお)しき足 見せにけり(河東碧梧桐

・海女(あま)行けば  寄居虫ずり落つ 忘れ潮(山口誓子

2.にんにく

にんにく

「にんにく(蒜)」は、ヒガンバナ科ネギ属の多年草です。

子季語・関連季語には、「葫(にんにく)」「ひる」「大蒜(おおにんにく)」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・墓畠 蒜の花 咲きいでぬ(飯田蛇笏)

・蒜の 臭さに馴れて 夜店見る(木下いさむ)

・にんにくに 出来る頭や 春近し(広江八重桜)

・にんにくの 芽に親しめば 日差し来ぬ(小池一覚)

3.エイプリルフール

「エイプリルフール」は、毎年4月1日(厳密には「4月1日の午前中だけ」)には嘘をついても良いという風習です。「四月馬鹿」「万愚節」とも呼ばれます。

子季語・関連季語には、「四月馬鹿」「万愚節」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・エイプリル フールに決まる 元号も(稲畑汀子)

・宙を飛ぶ ピザ生地 エイプリルフール(千田百里)

・抜擢の 人事伝はる 四月馬鹿(佐方敏明)

・上賀茂に 河童が出たよ 四月馬鹿(福村壽子)

4.木の芽時(このめどき)

木の芽時

「木の芽時」は、木々が芽を吹き、虫たちが冬を終えて動き出す3月から4月にかけての季節のことです。

この時期は、暖かかったと思ったら急に寒くなったりと寒暖差が激しく、天候が不順で気圧が低いことも多いのです。それに人間の体や心が対応し切れずにストレスが溜まって自律神経のバランスを崩しやすく、精神的に不安定となり、体調不良を訴える人が多くなります。

「やる気が出ない」「疲れが取れない」「体がだるい」といった症状が現れます。気象変化による病的な症状のため、「気象病」と呼ばれています。

子季語・関連季語には、「芽立時(めだちどき)」「芽立前(めだちまえ)」「木の芽風(このめかぜ)」「木の芽晴(このめばれ)」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・夜の色に 暮れゆく海や 木の芽時(原 石鼎)

・楢山の 窪に蝌蚪(かと)生(お)ふ 木の芽季(水原秋櫻子)

(注)「蝌蚪(かと)」とは、「おたまじゃくし」の別名です。

・舟を得て 故山に釣るや 木の芽時(飯田蛇笏)

・雨みんな 砂にすはるる 木の芽どき(下村槐太)

5.ボートレース

ボートレース早慶レガッタ

季語となっている「ボートレース」は、公営賭博の「競艇(きょうてい)」のことではありません。

ボート内の座席が前後に動き、オールを使って船を進めるレースのことです。八人で漕ぐエイトや、四人のフォア、二人のペアなどの競技があります。

隅田川の花散る中の「早慶レガッタ」が有名ですね。

ザ・ボートレース

イギリスでも、ロンドンを流れるテムズ川で、「ザ・ボートレース」と呼ばれるオックスフォード大学とケンブリッジ大学対抗の伝統あるボートレース(第1回大会は、1829年)が毎年4月中旬に行われます。

「ザ・ボートレース」は、「ザ シーズン」と呼ばれるイギリスの上流階級のスポーツにまつわるイベントではその年最初の大きな大会です。

元々「大学対抗ボートレース」又は「オックスフォード対ケンブリッジボートレース」と呼ばれていましたが、2015年に男女とも同じ日に同じ水域を使用するようになってからはまとめて単に「THE BOAT RACE」と呼んでいます。

通常のローイング大会はヘンリー・ロイヤル・レガッタのように「何々レガッタ」となりますが、この大会は特別でイギリスでボートレースと言えばオックスフォード大学対ケンブリッジ大学の対抗試合を意味します。

子季語・関連季語には、「競漕(きょうそう)」「競漕会(きょうそうかい)」「レガッタ」「お花見レース」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・夕日影 競漕赤の 勝とかや(高浜虚子)

・競漕の 雨となりけり 桜餅(高野素十)

・競漕の 空しき艇庫 潮さしぬ(山口誓子)

・競漕の 赤ばかり勝つ 日なりけり(原 石鼎)

6.催花雨(さいかう)

催花雨

「催花雨」とは、春の開花を促すようなしとしと降り続く長雨のことです。桜をはじめ、いろいろな花を催す(早く咲くように急かせる)雨のことで、当然ながら「春」の季語です。

春の雨の呼び名としては、「菜種梅雨(なたねづゆ)」の方がよく耳にしますが、「催花」の読み(さいか)が「菜花」に通ずることから、「催花雨」⇒「菜花雨」となり、後に「菜種梅雨」という言葉ができたという説もあります。

子季語・関連季語には、「菜種梅雨」「春の長雨」「春霖(しゅんりん)」「春霖雨((しゅんりんう)」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・人来ては 籏ことを語る 菜種梅雨(石田波郷)

・春霖や たちまち玻璃(はり)は 不透明(嶋田光枝)

・わが魔羅の 日暮の色も 菜種梅雨(加藤楸邨)

・くらしの灯 いきいき点(とも)す 菜種梅雨(鈴木真砂女)

7.霾/土降る(つちふる)

春、空から砂塵が降ること。中国大陸の黄河流域の砂や土が春風に舞い上がり、海を越えて日本列島に降りしきるものです。多いときには遠くが黄色く霞んで見え、地上が黄色に染まることもあります。

子季語・関連季語には、「黄砂/黄沙(こうさ)」「黄塵万丈」「蒙古風」「霾天(ばいてん)」「霾風(ばいふう)」「つちかぜ」「霾晦(よなぐもり)」「つちぐもり」「よなぼこり」「胡沙来る(こさきたる)」「胡沙荒る(こさある)」「春塵」などがあります。

例句としては、次のようなものがあります。

・真円 (まんまる) き 夕日土降る なかに落つ(中村汀女)

・霾るや 鳴門大橋 来たる人(山尾玉藻)

・霾りし ことあきらかに 駐車場(稲畑汀子)

・霾るも ふらぬも家に ゐたりけり(岡本高明)

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