何と言うタイトルだったか忘れましたが、森繫久彌(1913年~2009年)が主演する映画で、森繫が「インチキ祈祷師(占い師?)」を演じたものがありました。
森繫が、祈祷客が帰った後でだらしなく腹ばいになりながら、弟子か誰かに「あんなもの(祈祷か占い)は、適当にむにゃむにゃ言っておけば、有難がって、喜んでお金を置いて帰るもんさ」と嘯(うそぶ)く場面がありました。
1.私のまじない祈祷体験記
私は、子供のころから、宗教や祈祷・占いの類は全く信じないのですが、高校2年生の冬休みに「若年性再発性網膜硝子体出血(眼底出血)」を患った時に、近所のお婆さんが、「よく効くまじないをする寺がある」と母に勧めたので、不本意ではありましたが祈祷を受けたことがあります。
その寺は、「中風・痔封じのまじない」を看板にしていて、住職は10年以上もの間、全国各地で「荒行」の修行を積んで来たという触れ込みでした。
後で分かったことですが、その寺は口利きをしたお婆さんの親戚の人が住職をしている「祈祷寺」だったのです。お客を一人紹介したという訳です。
本堂の大広間で、大きな太鼓をおどろおどろしく打った後、何か呪文を15分くらい唱えていました。そしてその後、「ピンク色のガーゼ」を私に渡して、「このガーゼは消毒してあるから心配しなくても大丈夫。これを毎日、目の患部にあてなさい。ただし、お医者さんにはきちんと通うように。」と耳打ちしました。
私は、この発言から、今日受けた「まじない祈祷」は何の霊験も効能も無いことを、住職自ら認めたものと確信しました。この怪しげなピンク色のガーゼは帰宅後すぐに捨てました。
家族の誰かに病気の人がいる家へは、「新興宗教」が勧誘によく来るという話を聞いたことがあります。
私の知っている人で、祈祷師に多額の財産を注ぎ込んだ人がいます。その人の息子が重度の病気になった時に、「霊験あらたかな祈祷師」がいるという話を聞き、藁にも縋る思いでその祈祷師を頼りました。しかし息子の病気は治らず、多くの財産を失っただけに終わりました。
余談ですが、芹沢光治良に「人間の運命」という自伝的大河小説があります。そこには裕福な網元だった彼の父親が天理教の信仰に入ったために多くの財産を失い、彼の祖父母や母をも貧窮生活に陥れたことが描かれています。
「霊視商法」「霊感商法」などの悪徳商法・詐欺商法がありますが、今述べた祈祷師は、「詐欺」の疑いが強いと私は思います。
2.「まじない」の語源
「まじない」は動詞「まじなう(蠱なう)」の名詞形です。
まじないの「まじ」は、「まじこる(蠱る)」「まじもの(蠱物)」と同じく「呪術」を意味しています。