「バイアス」とはどういう意味か?わかりやすくご紹介します。

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思考バイアスの壁

最近、「正常性バイアス」や「確証バイアス」「アンコンシャスバイアス」など「バイアス」という言葉をよく聞きますね。

冒頭に「思考バイアスの壁」という表を出しましたが、テレビの報道や情報バラエティー番組を見ていると、キャスターやコメンテーターが「第一の思考バイアス」(代表性バイアス・偶然性バイアス・過剰評価バイアス)に陥っていることがよくあるのに気づきます。

また、街頭インタビューや世論調査の結果などを見ると、「第二の思考バイアス」(利用可能性バイアス・多数派同調バイアス・一貫性バイアス)に影響されているのがわかります。

政治家や経営者には「第三の思考バイアス」(確証バイアス・責任バイアス・後知恵バイアス)の傾向があります。

前に「新聞に不偏不党はあり得ない」という記事を書きましたが、新聞社にもそれぞれ独自の考え方・バイアスがありますし、各個人も明確な自覚はなくても、それぞれの考え方・バイアスを持っています。

「バイアス」は「思い込み」「先入観」「偏見」「思想」などとどう違うのでしょうか?

今回はこの「バイアス」について、わかりやすくご紹介したいと思います。

1.「バイアス」とは

「バイアス(bias)」とは、もともと「偏り、かさ上げ、斜め」という意味です。

バイアスという言葉は、最近は「偏り、偏見、偏向」といった意味でよく使われていますが、英単語をカタカナで言うのは、学問的な分野で使われることが多く、日本語で「偏り」と言うと、どうしても先入観が入り込んでしまうためです。

「バイアスがかかる」「バイアスをかける」などと使います。「バイアスがかかる」とは、「あるものの見方が偏っている」「物事の見方が偏っている」という意味です。

2.「バイアス」の種類

(1)偏り・偏見

①偏り

「偏り」とは、統計学の用語で、「母集団の要素が標本として平等に選ばれていない、または推定すべき量を何らかの理由で高く、または低く推定しすぎていること」です。

「サンプリングバイアス」は、「不適切な標本抽出によって、母集団を代表しない特定の性質のデータが紛れ込んでいること」を言います。

②偏見

「偏見」とは、「偏った見方のこと」です。新聞やテレビの報道内容が「偏向」だとして批判する場合に使われたりします。

・認知バイアス:非常に基本的な統計学的な誤り、社会的帰属の誤り、記憶の誤り(虚偽記憶など)など、人間が犯しやすい認知の誤りのこと

・感情バイアス:感情的要因による認知と意思決定の歪み

・正常性バイアス:災害があっても自分だけは大丈夫と思うこと。特に自身に耳の痛い情報は入らないこと

・生存者バイアス:生還した者の意見は聞けるが、生還できなかった者の意見は聞けないこと

(2)かさ上げ

・ある数に特定の数を足してかさ上げすること。「ゲタばき」とも言います。

・電子工学の用語で、電子回路や磁気記録回路において、動作の基準としてあらかじめ回路に付加しておく電圧・電流・磁気のことです。

(3)斜め

・糸が斜めに走っていること。「バイアス織」「バイアス編み」と言います。

・斜めに裁つこと。「バイアス裁ち」と言います。

・生地を斜め45度にカットしてテープ状にした「バイアステープ」

・空気入りタイヤで構造材が斜めに入っている「バイアスタイヤ」

3.「偏見という意味でのバイアス」の種類と内容

確証バイアス

最近我々がよく聞く「バイアス」は、この「偏見という意味でのバイアス」です。

(1)認知バイアス

個人の先入観に基づいて他者を観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて、それにより自己の先入観を補強する「確証バイアス」は、事例証拠や法的証拠の信頼性を大きく歪めます。

適切な情報を無視することに起因する「事前確率無視」、不適切な情報に影響されることに起因する「フレーミング効果」、問題の中で重要ではないが突出した部分に過大な重み付けをすることに起因する「アンカリング」などが代表的なものです。

冒頭の表に掲げた「思考バイアス」も「認知バイアス」の一種の分類と言えます。

(2)感情バイアス

これは、感情的要因による認知と意思決定の歪みです。人間は一般に次のようにする傾向があります。

①たとえ相反する証拠があっても、心地よい感覚をもたらす肯定的な感情効果のあることを信じたがる。

②好ましくない、精神的苦痛を与えるような厳しい事実を受け入れたがらない。

これらの要因は、個人的かつ自己中心的(自己中心性)であるか、対人関係や集団の影響(同調、同調圧力)に結びついています。

(3)正常性バイアス

これは、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のことです。

自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下もあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価して逃げ遅れの原因となることです。

「正常化の偏見」「恒常性バイアス」とも言います。

(4)生存者バイアス

これは、何らかの選択過程を通過した人・物・事のみを基準として判断を行い、通過に失敗した人・物・事が見えなくなることです。「選択バイアス」の一種です。

生存者バイアスの例として、ある事故の生存者の話を聞いて、「その事故はそれほど危険ではなかった」と判断する事例があります。

それは、話を聞く相手が全て「生き残った人」のため、たとえ事故による死者数を知っていても、死んだ人たちの話は聞けないので、それがバイアスにつながるのです。

(5)アンコンシャスバイアス

アンコンシャスバイアス」(unconscious bias)とは、「無意識に偏見を抱いたり、思い込みを持ったりすること」です。「無意識の思い込み」「無意識バイアス」「無意識の偏見」とも言います。

つい先日メンタリストDaiGoさんが、自身の動画サイトでの「生活保護受給者」や「ホームレス」についての不適切な発言で大炎上しましたが、これも「アンコンシャスバイアス」です。

誰にでもあるアンコンシャスバイアスは、あることそのものに良し悪しはありません。

日本国憲法は第19条で「思想及び良心の自由」を保障しています。刑法でも「犯罪行為を実際に行う」ことがない限り、罪に問われません。つまり、人は頭の中で何を考えたとしても罪に問われないということです。

ただそれが「言動」となって現れた時に、相手を傷つけたり、新しい発見を台無しにしたり、イノベーションの芽を摘んでしまったり、自分自身の成長機会を失ったっりというようにネガティブな影響もあることが問題視されているのです。

2010年代頃にアンコンシャスバイアスが注目されるようになった背景には、非正規社員や女性、外国人、LGBTQ+などの増加による組織の多様化があります。

企業内で不祥事やハラスメントなどが多発したため、企業倫理を見直す必要性が高まり、組織のリーダーや管理職がアンコンシャスバイアスに注目するようになったのです。

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