私が小学校低学年のころはまだ家にテレビがなく、テレビのある近所の家に行って見せてもらっていました。
日曜日夜の「月光仮面」と「ポパイ」が終わった後の8時前には、夕焼け小焼けの赤とんぼのメロディーとともに「週刊新潮は、あした発売されま~す」という女の子の声のコマーシャルが必ずあり、それを聞いてから家に帰るのが常でした。
1.谷内六郎とは
谷内六郎(1921年~1981年)は、東京出身の画家ですが、高等小学校を卒業後、見習い工員などをしながら絵を独学で学びました。
幼少時から喘息で入退院を繰り返しますが、絵筆は離さず、10代のころから新聞・雑誌にイラストや漫画が掲載されています。
1955年に第一回文芸春秋漫画賞を受賞し、1956年の「週刊新潮」創刊と同時に表紙絵を担当し、1981年に亡くなるまで26年間にわたって発表を続けました。
2.絵の特色
(1)昔懐かしい仄々(ほのぼの)とした子供の様子を描いた絵
谷内六郎は大正10年生まれですので、私の父母と同世代です。彼の描く子供たちは大正時代から昭和初期の子供たちと思われます。しかしなぜか私にもノスタルジー(郷愁)を感じさせる絵です。
(2)絵画の技術は稚拙で子供の絵のようなところがある
漫画的というか、子供が描くような感じがする部分もあり、絵画の技術は稚拙だと思います。しかし、彼独特の味がある絵です。
(3)恐怖や不安を感じさせる暗い絵もある
ほとんどが、明るい平和な感じの絵ですが、中には「木の涙」のような暗い絵もあります。彼は喘息による闘病生活のため、自由に外で遊んだりすることができなかったようで、明るい平和な感じの絵は、彼の憧れを表しているのかもしれません。また、「木の涙」の絵は、彼の病苦を表しているのかもしれません。
3.私の好きな絵と購入した版画
(1)鉄道員:蒸気機関車と、それを間近に見ている虫捕りの子供の後姿を描いています。
(2)水車もクルクル傘もクルクル:水車の回るのに合わせて自分の傘をクルクル回す女の子を描いています。背景の青空にはたくさんの雲が広がっています。
(3)紙ふうせん:晩秋から初冬の風景だと思います。姉が縁側で紙ふうせんで遊び、弟は囲炉裏端で絵本を読んでいます。障子には葉を落とした木の影が映っています。
(4)雪:雪の降り積もった里で、雪遊びに興じる姉弟と犬の姿を描いています。
私は、(3)と(4)の版画を購入して、秋と冬に飾って楽しんでいます。