人類の文明の歴史観の一つとして「世界四大文明」というのがあります。四つの大文明が最初に起こり、その後の文明はその流れを汲むものだとする考え方です。
「世界四大文明」とは、メソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・黄河文明です。
古代文明の発祥地はその後、停滞期を迎えますが、黄河文明が開花した中国の文化や技術、物産は「シルクロード」を通じてヨーロッパにも広まりました。
今回は「古代中国の四大発明」とルネサンス期ヨーロッパの「世界の三大発明」との関係について分かりやすくご紹介したいと思います。
1.「古代中国の四大発明」
「古代中国の四大発明」とは、「紙」「印刷」「火薬」「羅針盤」ですが、このうち「印刷」「火薬」「羅針盤」は、ルネサンス期ヨーロッパの「世界の三大発明」と呼ばれているものです。
古代中国では、このほかにも磁器・マッチ・将棋・カードゲーム・紙幣・紡ぎ車・地震計・蛍光塗料・漆・吊り橋・凧・帆柱・火炎放射器・花火・地雷などが発明されました。
しかし日本人にとってありがたい最も重要な発明は、「漢字」ではないかと私は思います。
現代の共産党一党独裁体制の中国は、「パクリ国家」と揶揄されていますが、古代中国の人々が世界に先駆けてさまざまな発明を行い、世界文明の発展に貢献したことは間違いないようです。
(1)紙
紙は後漢の宦官であった蔡倫が105年に皇帝に献上したことをもって「紙の発明」とされていますが、近年の考古学の研究によると、それよりさらに300年ほど前(紀元前200年頃)から作られていたことがわかっています。
(2)印刷
「彫板印刷(木版印刷)」は6世紀~9世紀頃、「活版印刷」は11世紀に始まっています。ドイツのグーテンベルクが活版印刷を発明したのは15世紀のことです。
(3)火薬
火薬は9世紀頃の中国で発明されました。後に主に戦争の道具として開発されますが、もともと火薬は戦争の道具として作られたのではなく、「不老長寿のための仙薬」を作り出すため「方術士」(道教の道士)たちが試行錯誤を繰り返す中で偶然生まれたものです。
(4)羅針盤
羅針盤とはいわゆるコンパス・方位磁石のことです。この羅針盤の原型は、既に紀元前から使われていたそうですが、海の航海に使われるようになったのは9世紀~11世紀頃と言われています。
2.ルネサンス期ヨーロッパの「世界の三大発明」
ルネサンス期ヨーロッパの「世界の三大発明」と呼ばれる「印刷(活版印刷術)」「火薬」「羅針盤」は、実は「古代中国の四大発明」が起源で、ヨーロッパでそれを改良・実用化したものだと言われています。
そういう意味では、正確には「三大改良」と言うべきかもしれません。
(1)印刷(活版印刷術)
キリスト教の「聖書」を広めたり、歴史・技術を書き残すのに利用されました。
(2)火薬
火薬を利用することで戦争が有利になり、中国を含むアジアなどでの勢力拡大や植民地獲得に大いに貢献しました。
火薬はまた、産業の発展にも大きな影響を与えました。
(3)羅針盤
兵器や食料などの遠方への輸送に大いに役立ちました。大航海時代のヨーロッパ諸国のアジア・アフリカ・アメリカ大陸などへの航海とそこでの植民地獲得にも大いに貢献しました。
古代中国の人々が最初に発明したこれらの技術が、ヨーロッパ人によって改良・実用化され、逆に中国を含むアジア・アフリカの人々やアメリカ大陸の原住民を苦しめる結果になったのは皮肉なことです。