漢文の訓読で読まない置字(おきじ)の意味・役割とは?読まない理由は何か?

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置き字

皆さんは「置字」「置き字」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか?

高校の漢文の授業で習ったことがあると思いますが、ほとんどの方は忘れているのではないでしょうか?

そこで今回は「置字」についてわかりやすくご紹介したいと思います。

1.置字とは?

「置字(おきじ)」(置き字)とは、漢文を「訓読」(日本語を用いて訳読)する際に、直接読まない字のことです

日本語の書き下し文にするときは、その意味に対応する送り仮名を前後の文字に付けて反映させます。

つまり、「置字」とは、語句と語句の関係を示したり、断定・完了などの文法的な機能を持つが、訓読の場合にその文法的機能を送り仮名によって示し、その結果として読みの対象から外れる字のことです。

2.置字になる漢字とその意味・役割

(1)置字になる漢字

兮 ・ 焉 ・ 矣 ・ 乎 ・ 于 ・ 於 ・ 而   が置字になる主な漢字です。

(2)それぞれの漢字の意味・役割

①兮(ケイ)

「兮」は韻文(韻を踏んだ文)の句中や句末に置かれ、ただ単に詩のリズムを整える為(整調)の語であり、文法的な機能はありません。

「兮」は漢文を中国語で読むときにリズムを整える音として読まれますが、文法的な機能は持たないため漢文を訓読(日本語を用いて訳読)する際は、無視されます。

置き字・ケイ

②焉(エン)

「焉」は文法的機能として、断定・完了・などの語気を表す(断定・強調)のに使われます。『焉』は文末に置かれ、直前の語に対してこれら(断定・完了など)の意味を加えます。

「焉」が断定の語気を表す場合は、断定の意味が加わる「焉」の直前の語に送り仮名の「ナリ(=断定の助動詞)」を付けます。

「焉」が完了の語気を表す場合は、完了の意味が加わる「焉」の直前の語に送り仮名の「リ(=完了の助動詞)」を付けます。

置き字・エン

③矣(イ)

「矣」は文法的機能として、断定・完了・意志などの語気を表す(断定・強調)のに使われます。「矣」は文末に置かれ、直前の語に対してこれら(断定・完了・意志など)の意味を加えます。

「矣」が断定の語気を表す場合は、断定の意味が加わる「矣」の直前の語に送り仮名の「ナリ(=断定の助動詞)」を付けます。

「矣」が完了の語気を表す場合は、完了の意味が加わる「矣」の直前の語に送り仮名の「リ(=完了の助動詞)」を付けます。

「矣」が意志の語気を表す場合は、意志の意味が加わる「矣」の直前の語に送り仮名の「ン(=意志の助動詞)」を付けます。

置き字・イ

④乎(コ)・于(ウ)・於(ヲ)

「乎」「于」「於」は文法的機能として、場所・対象・比較・受身(の動作主)を表すのに使われ、これらの語の前に置く前置詞として働きます。

「乎」「于」「於」が場所・対象・受身の前置詞となる場合は、「乎」「于」「於」の後に続いて場所・対象・受身の動作主を表す語の後に送り仮名の「ニ」を付けます。

「乎」「于」「於」が比較の前置詞となる場合は、「乎」「于」「於」の後に続いて比較対象を表す語の後に送り仮名の「ヨリ(モ)」を付けます。

置き字・コウヲ

⑤而 (ジ)

「而」の文法的機能は、語句と語句の接続(接続詞)です。接続には順接と逆接があります。

順接は、ある条件に対して予想される結果が現れる(ある条件と予想される結果が接続する)ことを示します。

「而」が順接の接続詞となる場合は、「而」の直前の語に送り仮名の「テ・シテ」を付けます。

逆接は、ある条件に対して予想される結果が現れない(ある条件と予想されない結果が接続する)ことを示します。

「而」が逆接の接続詞となる場合は、「而」の直前の語に送り仮名の「ドモ」を付けます。

置き字・而

3.置字が出てくる理由

訓読で読まない漢字が出てくるのは、前後の漢字の送り仮名にその意味が反映されていたり(而・于・於・乎など)、その漢字に対応するちょうどよい日本語がなかったり(焉、矣、兮など)するからである。

しかし、もとの漢文では文字として記されているので、 中国語では当然のことながらきちんと発音されます。訓読 で漢文を読んでいると、読まない置き字は軽視されがちですが、実は語調を整えたり、 微妙なニュアンスを出したりするなど見逃し得ない働きをしています。

文中で、語句と語句の関係を示したり、文末に置いて断定・完了・疑問などの意味を示したりする字のことを「助字」といいます。

この助字のうち、「也(なり)」や「邪(や・か)」などは訓読の際に読まれますが、一方で「而」「於」「于」などのような助字は、その字の文法的機能が助字の前後に置かれる字に付ける送り仮名によって示されるため、読みの対象から外される場合がほとんどなのです。

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