日本語の面白い語源・由来(う-⑪)鰻・胡乱・嘘・嘯く・胡散臭い

フォローする



鰻丼

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.鰻(うなぎ)

鰻

うなぎ」は、ウナギ目の魚で、細長い円筒形です。成魚は川や湖に生息しますが、産卵・孵化は海で行われます。

万葉集』などに「むなぎ」とあるように、うなぎは古名の「むなぎ」が転じた語です。
むなぎの語源は諸説ありますが、「む」は「身」を意味し、「なぎ」は「長し(長い)」の「なが」からとする説が有力とされます。

この説では、「あなご」の「なご」とも語根が共通します。

その他、うなぎは胸が黄色いため「胸黄(むなき)」が変化したとする説や、「棟木(むなぎ)」に似ているからといった説もありますが、いずれも俗説です。

また、うなぎは鳥の鵜(ウ)が飲み込むのに難儀するから、うなんぎ → むなぎ → うなぎに変化という説もあります

余談ですが、鰻の産卵や遡上などの謎については、「ニホンウナギは日本から2500キロも離れて産卵する。様々なウナギの謎に迫る」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

鰻と言えば、平賀源内が「土用の丑の日」に鰻を食べるように大々的に宣伝するまでは、夏場は鰻があまり売れなかったようです。

しかし現在では、鰻と言えば夏、特に「土用の丑の日」と相場が決まっています。

俳句でも「鰻」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・旅疲れ 癒す鰻と 誘はるる(稲畑汀子)

・祭来る 顎で重ねて 鰻めし(角川春樹)

・鰻掻くや 顔ひろやかに 水の面(飯田蛇笏)

2.胡乱(うろん)

胡乱

胡乱」とは、怪しくて疑わしいこと、不確実なことです。

胡乱は室町時代に禅宗を通して日本に入った漢語で、「胡(う)」「乱(ろん)」ともに唐音です。

モンゴル高原で活躍した遊牧騎馬民族「匈奴(きょうど)」を「胡(えびす)」と言いましたが、胡が中国を攻撃した時、住民が慌てふためき乱れたという故事から、「胡乱」の語が生じたといわれます

また、「胡」の一字で「不審」の意味があり、秩序がない意味の「乱」をつけて「胡乱」になったとする説もあります

3.嘘(うそ)

嘘

」とは、事実とは異なることを信じさせようとすることや、その言葉。本当でないこと、偽りです。

嘘の語源は以下の通り諸説あり、正確な語源は未詳です。

関東地方では、近年まで「嘘」を「おそ」と言っていたことから、「軽率な」「そそっかしい」を意味する「をそ」が転じたとする説

漢字の「嘘」が、中国では「息を吐くこと」「口を開いて笑う」などの意味で使われていたため、とぼけて知らないふりをすることを意味する「嘯く(うそぶく)」の「うそ」からとする説

「浮空(うきそら)」の略とする説

また、「嘘」の意味として、奈良時代には「偽り(いつはり)」、平安前期には「空言(そらごと)」が使われ、平安末期から室町後期になり「うそ」が使われ始めています。

余談ですが、「この世の中には嘘がいっぱい」「嘘も百回つけば真実になるというプロパガンダの恐ろしさ」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

4.嘯く(うそぶく)

嘯く

嘯く」には、次のような意味があります。

とぼけて知らないふりをする

② 偉そうに大きなことを言う。豪語する

猛獣などがほえる。鳥などが鳴き声をあげる

④ 口をすぼめて息や声を出す。口笛を吹く。うそむく

⑤ 詩歌を小声で吟じる。うそむく

ちなみに、旧制三高の寮歌『紅萌ゆる』(『逍遥の歌』)に出て来る「都の花に嘯けば」は⑤の意味です。

うそぶくの「うそ」は、鳩などを呼ぶ時の口笛のことで、本来、嘯くは口笛を吹くことを意味しました。

嘯くが現在の意味に転じたのは、次のような説があります。

鳥の「ウソ」の鳴き真似をすることからという説

この口笛は、本物の鳴き声ではないという意味からとする説

嘘をついた時に、口笛を吹いてごまかそうとする仕草からとする説

5.胡散臭い(うさんくさい)

胡散臭い

胡散臭い」とは、何となく怪しくて疑わしいことです。

胡散臭いは、怪しいさまを意味する「胡散」に、「らしい」を意味する接尾語の「臭い」をつけて形容詞化された語で、近世以降に見られる言葉です。

胡散の語源には、「疑わしい」を意味する漢語「胡乱(うろん)」からとする説と、
茶碗の一種で、黒の釉(うわぐすり)をかけた天目茶碗の「烏盞(うさん)」が転じて、「胡散」になったとする説があり、このいずれかと考えられます。

その他、ポルトガル語で「怪しい人」を意味する「Vsanna(ウサンナ)」からとする説もありますが、「胡散」の語が使われ始めた時代と合いません。

胡散の「胡」を「う」と読むのは唐音、「散」を「さん」と読むのは漢音のため、「胡散」は和製漢語と思われます。