日本語の面白い語源・由来(い-⑬)一姫二太郎・歪・一味・一生懸命・鼬ごっこ

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一姫二太郎

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.一姫二太郎(いちひめにたろう)

一姫二太郎

一姫二太郎」とは、子を持つならば、一番目は女の子で、二番目は男が良い(理想的だ)ということです。

一姫二太郎の由来は、女の子の方が男の子よりも夜泣きが少なく、病気にもなりにくいのが一般的で、女の子の方が母親の手助けを早くからしてくれるため、女の子を最初に産むと理想的な育児が出来るという意味で良いとされました

また、昔は最初に生まれる子は後継者となる男子が望まれていたため、「家督相続」(*)は普通は長男一人という旧民法の時代には、女の子が生まれて失望しないように、慰めの意味でも使われました。

(*)「家督相続」は、「戸主(こしゅ)」(一家の長)が死亡した場合のほか、戸主の隠居・国籍喪失、入夫婚姻(女の戸主との婚姻)など、被相続人の生存中に相続が開始されることがありました。

家督相続人となる者は1人で、まず直系卑属のうち、親等の近い者、男と女では男、年長者と年少者では前者が選ばれ、したがって普通は長男が相続しました。

直系卑属がない場合には、被相続人の指定した者、家族の中から一定の選定権者が選定した者などが相続することになっていました。

一姫二太郎を「女の子一人に男の子二人の三兄弟」と誤解されることも多いですが、『源氏物語』にも出てくるように、「太郎」は「男の子」という意味ではなく「長男」の称です。

一姫二太郎を「男の子二人」と解釈した場合、二人の長男という意味になり、たとえ双子が生まれたとしても、「長男」と「次男」は分けられるため全く意味が通じません。

なお、この言葉は二人目までの生まれる順番を言っているに過ぎません。そのため、「一姫二太郎」が姉と弟の二人兄弟とは限らず、女・男・男の順で生まれた場合に「一姫二太郎の三人兄弟です」と言うことは間違いではありません。

2.歪(いびつ)

楕円形の飯櫃

いびつ」とは、形や状態が整わず歪(ゆが)んでいるさまのことです。

いびつは「飯櫃(いいびつ)」が転じた語で、古くから「いいびつ」と「いびつ」の両方用いられました。

飯櫃とは炊いたご飯を入れておくお櫃のことで、昔のお櫃は楕円形であったことから、楕円形を意味するようになりました

楕円形は綺麗な円形ではないことから、江戸時代以降、いびつは形や状態が歪んでいる意味として用いられるようになりました

3.一味(いちみ)

一味

一味」とは、同じ目的を持って寄り集まった仲間、同志のことです。現代では、もっぱら悪事を企てる仲間をいいます。

ほかに、① 一つの味。また、副食物が一品だけの質素な料理のこと、② 漢方で、多くの薬種の中の一品、また、一般に一種類の薬品のこと、③ ある味わいがあること。どことなく趣が感じられることを指す場合(現代では「一味(ひとあじ)違う」などと使います)④「一味唐辛子(いちみとうがらし)」の略の意味もあります。

一味はもともと仏教語で、現象は多様であるが、真実絶対の立場では、実はすべて同一で、平等無差別であるということ、また仏の救いは平等であるという教えでした。

その意味から、一味は心を同じくして協力することや同志の意味となり、いつしか悪事を企む仲間の意味で用いられるようになりました。

4.一生懸命(いっしょうけんめい)

一生懸命

一生懸命」とは、全力を挙げて物事をするさま、命懸けで物事をするさまのことです。

一生懸命の本来の形は、「一所懸命(いっしょけんめい)」です。

一所懸命は、中世の武士が先祖伝来の所領(一所)を命懸けで守ったことに由来し、切羽詰った状態にも使われました。

近世以降、「一所懸命」は「命を懸けて何かをする」の意味だけが残ったため、「一所」が「一生」と間違われて「一生懸命」となり、発音も「いっしょけんめい」から「いっしょうけんめい」に変わりました。

5.鼬ごっこ(いたちごっこ)

いたちごっこ

いたちごっこ」とは、互いに同じようなことを繰り返すだけで、いつまでも進展しないことです。

いたちごっこは、江戸時代後期に流行った子供の遊びに由来します。

二人一組となり、「いたちごっこ」「ねずみごっこ」と言いながら相手の手の甲を順につねっていく遊びです。両手が塞がったら一番下にある手を上に持っていき、また相手の手の甲をつねるという終わりの無い遊びです。

素早くつまみ合うところが、イタチやネズミの素早さと噛み付く様子に似ているため、「いたちごっこ、ねずみごっこ」と唱えられ、この遊びは「いたちごっこ」と呼ばれました。

いたちごっこ遊びは、交互に繰り返すだけで切りがないことから、お互いが同じようなことを繰り返し、埒が明かないこと(堂々巡りの状態のこと)を「いたちごっこ」と言うようになりました。