「覆水盆に返らず」ということわざの「盆」とはどんな盆か?

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覆水盆に返らず

「覆水盆に返らず」という有名なことわざがあります。

英語にも、これとよく似た次のようなことわざがあります。「こぼしたミルクを嘆いてもしょうがない」という意味です。

It is no use crying over split milk.

最近、私は年を取ったせいか、手元が狂って湯呑みの茶をこぼしたりすることがたまにあります。

ところで、「覆水盆に返らず」ということわざの「盆」とはどんな盆なのでしょうか?

「盂蘭盆会」の「お盆」のことでないことは明らかですが、下のような「お盆」に水を入れる人はいないでしょうから不思議ですね。

お盆

1.「覆水盆に返らず」ということわざの意味

もともとは「一度離婚した夫婦は元に戻ることはできない」という意味で、転じて「一度起きてしまったことは二度と元には戻らない」「一度してしまった失敗は取り返しがつかない」ということのたとえです。

「覆水収め難し(ふくすいおさめがたし)」「覆水不返(ふくすいふへん)」「覆水難収(ふくすいなんしゅう)」「覆水不可収(ふくすいふかしゅう)」とも言います。

ここで言う「盆」は、「平たいお盆」のことではなく、「底の浅い丼鉢(どんぶりばち)」のことです。周りを山に囲まれた「盆地」の「盆」がこれに当たります。

2.「覆水盆に返らず」ということわざの由来

覆水盆に返らず・ことわざ

太公望が周に仕官する前、ある女と結婚しましたが太公望は仕事もせずに本ばかり読んでいたので、あまりの貧しさに耐えかねた女から離縁されました。

しかし太公望が周の文王に見出されて頭角を現し、斉に封ぜられ国王になると、女は臆面もなく現れておずおずと太公望に復縁を申し出ました。

そこで太公望は水の入った盆を持ってきて、水を床にこぼし、「この水を盆の上に戻してみよ。」と言いました。女はやってみましたが当然できませんでした。

太公望はそれを見て、「一度こぼれた水は二度と盆の上に戻ることはない。それと同じように、私とお前との間も元に戻ることはありえないのだ」と復縁を断りました。(出典:後秦の時代に成立した「拾遺記」)

中国語の「盆」(拼音: pén)は日本語の「お盆」ではなく、鉢・ボウル状の容器のことです。

なお、この話は太公望の数多くの伝説の一つであって、必ずしも史実とは限りません。その理由は、前漢の人物である朱買臣(?~B.C.115年)についても、同様の逸話があるからです。

一般に太公望という名前で知られる呂尚(りょしょう)(生没年不詳)は、紀元前11世紀頃の古代中国・周の建国の功臣・軍師で、後に斉の始祖となった人物です。

3.「盆」を含む言葉

(1)旧盆(きゅうぼん)

陰暦の七月十五日に行う盂蘭盆会。

(2)新盆(にいぼん)

その人が亡くなった後初めてむかえ

る盆。「初盆(はつぼん)」とも言います。

(3)盆暮/盆暮れ(ぼんくれ)

盆と年末。また、その頃。

(4)盆地(ぼんち)

周囲を山に囲まれた平地。

(5)盆の窪(ぼんのくぼ)

首の後ろの中央、後頭部から首すじにかけてのくぼんだ部分。

4.「盆」を含む四字熟語

(1)盂蘭盆会(うらぼんえ)

陰暦の七月十五日に祖先の霊をまつる行事。盆や精霊会ともいう。現在は八月十五日に行うことが多い

(2)傾盆大雨(けいぼんのたいう)

激しく降る雨、豪雨のたとえ。「盆」は水や酒を入れるための大きい器、鉢。
鉢をひっくり返したように見えるほどの雨ということから。

(3)戴盆望天(たいぼんぼうてん)

一度に二つのことを同時にすることは出来ないということのたとえ。
頭に盆を載せたままでは、盆が邪魔になって天を見上げることは出来ないという意味から。
司馬遷が死刑を宣告された友人に送ったとされる手紙の一節から。
「盆を戴きて天を望む」とも読みます。

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