同音類義語の使い分け(その6)体制と態勢と体勢、実態と実体、配布と配付

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体制と態勢と体勢

発音は同じだが、互いに区別される語」である「同音異義語」(英語では「homophone(ホモフォン)」と言います)は、「いどう」(移動・異動・異同・医道など)、「かんし」(監視、看視、環視、冠詞、諫止、漢詩、菅氏など)、「きかん」(期間、機関、器官、気管、帰還、基幹、季刊など)のように日本語にはたくさんあります。

しかしこれらはそれぞれ全く意味が異なる言葉なので、使い方に迷うことはありません。

一方、「発音が同じで、意味もよく似た語」である「同音類義語」については、使い分けに悩むことも多いのではないでしょうか?

前に「同音類義語の使い分け(その1)事典と辞典と字典、製作と制作、更生と更正」「同音類義語の使い分け(その2)食糧と食料、生育と成育、特徴と特長、稼働と稼動」「同音類義語の使い分け(その3)発憤と発奮、暗唱と暗誦と諳誦、相違と相異」「同音類義語の使い分け(その4)重体と重態、不気味と無気味、開放と解放」「同音類義語の使い分け(その5)意思と意志、追求と追及と追究、共同と協同と協働」という記事を書きましたが、ほかにもまだまだありますのでご紹介します。

1.体制と態勢と体勢

テレビや新聞が伝える政治・政局関連ニュースの中で、「総選挙に向けた○○党内の態勢[タイセイ]づくり…」などといった表記・表現を見たり聞いたりします。[タイセイ]には、このほか「体制」「体勢」など、よく似た語もありますが、どのように使い分けているのでしょうか?

(1)体制

体制」は、 「統一的、持続的な国家・社会・組織などの長期にわたる仕組み、システム」のことです。

使用例としては、次のようなものがあります。

政治~ 支配~ 社会~ 責任~ 新(旧・現)~ 反~ ~側(派) 戦時~ 資本主義~ ベルサイユ~ 幕藩~

(2)態勢

態勢」は、「一時的・部分的な対応・身構え」のことです。

使用例としては、次のようなものがあります。

受け入れ~ 独走~ 臨戦~ 厳戒(警戒)~ 着陸~ スト~ 選挙~ (○○選に向けた)~固め(づくり)

なお、警備[タイセイ]や24時間[タイセイ]などは、それが長期的なのか短期的・一時的なのか内容や状況によって「体制」または「態勢」のいずれかに書き分ける必要があります。

例えば、「24時間タイセイ」について、永続的・恒久的に24時間シフトを敷く場合には「24時間体制」、臨時または短期的に24時間シフトを敷く場合には「24時間態勢」となります。

(3)体勢

体勢」は、 「体の構え・勢い・姿勢、フォーム」のことです。

使用例としては、次のようなものがあります。

射撃~ ~が崩れる 有利な~ 得意な~に持ち込む

2.実態と実体

(1)実態

実態」とは、「実際の状態」という意味の言葉です。外側からではうかがい知れない物事の本当のありさまを指します。

「組織の実態について調べる」「不法投棄についての実態調査を行う」のように使われます。「実態」の「実」は「まこと」「本当」などの意味を持ち、「態」は「ものごとの様子」「ありさま」の意味を持ちます。

「実体」との違いについて言えば、「実態」は「ものごとの様子や状態」について使われるという点がポイントとなります。例えば「組織の実態」という場合、表面を見ただけではわからない、ある集団の内部事情や活動状況などを表しています。

このように、「ふだんは人目に触れないものごとの内側の様子」を表すのが「実態」の特徴であり、「実体」との大きな違いになります。

(2)実体

実体」とは、「本当の姿」という意味の言葉です。あるものが持つ物理的な存在としての姿形や、本質的な正体を言います。

「実体のない幽霊のようなものだ」「噂の生物の実体を見ることができた」「あの人の実体に気付いた」のように使われます。

「実体」の「実」は前述のように「本当」を表し、「体」はこの場合、「姿」を表しています。

「実態」との違いで言うと、「実体」は「ものの姿や形、正体」に対して使われるという点が異なります。上記のように、「実態」は「ものごとの内側の様子や状態」を指して言う言葉ですが、「実体」にこのような意味はありません。

「実体」は「姿形」や「実質」を指す言葉で、「実体がない」「実体をあらわす」などと使われるようになっています。

たとえば、「団体の名称はあっても、それがどういう団体であるか分からない場合」は「実体が分からない」と言い、「どういう活動状況にあるか分からない場合」は「実態が分からない」と言うのです。

3.配布と配付

(1)配布

配付」の「付」には、「人に手でものを渡す」「そこまで持っていく」という意味があります。これに「配(くばる)」をつけた「配付」は、「特定の人々一人一人に配る」「関係者めいめいに与え渡す」ことを意味することばです。

(2)配付

一方、「配布」の「布」は、「広い範囲に(あまねく)行き渡る(渡らせる)」ことを意味する言葉です。これに「配」をつけた「配布」は、「広く配って行き渡らせる」「あまねく一般に行き渡るように配る」ことを意味します。

したがって、あるモノを「各人に配り渡す」場合は「配付」、「(不特定の)おおぜいに渡す」場合には「配布」と表記します。

正しい使用法は次の通りです。

「配付」…議案の~ 資料の~

「配布」…ビラを~する

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