日本語の面白い語源・由来(た-⑬)大黒柱・盥回し・山車・他力本願・台無し・駄目・立ち往生・段取り

フォローする



大黒柱

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.大黒柱(だいこくばしら)

大黒柱

大黒柱」とは、民家の土間と床の境の中央に立てる最も太い柱、建物の中央に最初に立てる柱のことです。家族や国など集団の中心となり、それを支える人物。大極柱とも。

大黒柱の語源には、朝堂院の正殿「大極殿(だいこくでん・だいごくでん)」の柱を「大極殿柱」ということから、「大極柱」が転じて「大黒柱」になったとする説。
室町時代から、恵比寿大黒の大黒様は富を司る神として祭られていたため、大黒天にちなみ「大黒柱」になったとする説。
国の中の柱という意味の「大国柱」の「大国」が転化し、「大黒柱」になったとする説などがあります。

大黒柱は建物の中央にあり、家全体を支える役割をすることから、集団の中心となり、支える人物も「大黒柱」と言うようになりました。

2.盥回し/たらい回し(たらいまわし)

たらい回し

たらい回し」とは、人や物事を他者に順送りすることです。

たらい回しは、本来、江戸時代に流行した足でたらいを回す曲芸のことを言います。

この曲芸は、複数の曲芸師が仰向けに寝て、たらいを回しながら足から足へと順番に受け渡していくものなので、次から次へと他に送り回すことを「たらい回し」と言うようになりました。

役所の妖怪・たらい回し

たらいを回す側(足)が主となる言葉なので、本来は「患者をたらい回しにする」など、馴れ合いで他者へ順送りすることを言います。

しかし、現代では「病院をたらい回しにされる」のように、送り回される側(たらい)を主にした表現の方が多くなっています。

3.山車(だし)

山車

山車」とは、神社の祭礼のときに引く、種々の装飾を施した屋台のことです。さんしゃ。

山車は、屋台の鉾につけた竹籠の編み残し部分を垂れ下げて出してあり、その部分を「だし」と言ったことに由来します。

その他、神を招き寄せるため外に出しておくことから、「出し物」とする説もあります。

漢字で「山車」と書くのは当て字で、祭礼のときに、神の降りる「依り代」として小さな山を作っていたものが発展し、移動可能なとなったことから当てられたと考えられます。

関西では、「壇尻(だんじり)」や「山(やま)」といいます。

4.他力本願(たりきほんがん)

他力本願

他力本願」とは、俗に、自分では何もせず他人の力に頼って事をなすこと、他人任せにすることです。

他力本願は、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人によって広められた仏教語です。
他力」は「自力」の反意語となりますが、ここでは「阿弥陀仏の力」を意味します。
本願」は阿弥陀仏が善悪を問わず、生命のある全ての存在を極楽浄土に往生させようとする誓願のことです。

つまり、「他力本願」の本来の意味は、自分の修行の力ではなく、阿弥陀仏の本願の力によって成仏することです。

しかし、「他力」を「他人の力」と解釈されることが多かったため、他人の力をあてにする意味で「他力本願」が使われるようになりました。

本来、この意味で使うのは誤用ですが、仏教語の意味で「他力本願」を使用するよりも、他人の力をあてにする意味で使用する機会の方が圧倒的に多いこともあり、現在では俗な表現、比喩的表現として定着しています。

5.台無し(だいなし)

台無し

台無し」とは、物事が駄目になることです。

台無しの「」は、仏像を安置する台座のことです。

台座が無ければ仏像の威厳が無くなることから、面目を失うことや、形をなさないことを「台無し」と言うようになりました。

古くは、ひどくいたんで形をなさない意味で主に用いられた語ですが、現代では物の形だけでなく、「計画が台無しになった」など広い意味で駄目になることを表すようになりました。

6.駄目(だめ)

だめよ、だめだめ

お笑いコンビ「日本エレキテル連合」の「ダメよ、ダメダメ」というギャグが一時はやりましたね。

駄目」とは、やっても無駄なこと、やってはいけないことです。

駄目は囲碁用語で、双方の境にあってどちらの地にも属さない所を意味します。

駄目

この場所に石を置いても自分の地とならず、無駄な目になることから、駄目は「やっても甲斐のないこと」「してはいけないこと」を意味するようになりました。

7.立ち往生(たちおうじょう)

立ち往生

立ち往生」とは、身動きのとれない状態になること、行き詰まって処置に困ることです。

往生とは死ぬことで、立ち往生の本来の意味は、立ったままの姿勢で死ぬことです。

それが身動きの取れない状態になる意味に転じたのは、「弁慶の立ち往生」の話に由来します。

それは、弁慶が衣川の戦いで体に無数の矢を受けながらも、薙刀を杖に仁王立ちしたまま死んだという話です。

8.段取り(だんどり)

段取り

段取り」とは、うまく事が運ぶように前もって手順を整えることです。手はず。

段取りは、歌舞伎の楽屋用語に由来するといわれます。

「段」とは話の一区切りや一幕のことで、芝居の筋や構成の運びを「段取り」と言いました。
そこから、うまく事が運ぶよう事前に行う準備を「段取り」と言うようになりました。

段取りの語源には、石段の説もあります。
それは、坂道に石段を作る際、勾配を見て何段にするか見積もることを「段を取る」と言い、石段の出来不出来で「段取りが良い、悪い」と言ったとするものですが、有力な説とは考えられていません。