同音類義語の使い分け(その5)意思と意志、追求と追及と追究、共同と協同と協働

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意思と意志

発音は同じだが、互いに区別される語」である「同音異義語」(英語では「homophone(ホモフォン)」と言います)は、「いどう」(移動・異動・異同・医道など)、「かんし」(監視、看視、環視、冠詞、諫止、漢詩、菅氏など)、「きかん」(期間、機関、器官、気管、帰還、基幹、季刊など)のように日本語にはたくさんあります。

しかしこれらはそれぞれ全く意味が異なる言葉なので、使い方に迷うことはありません。

一方、「発音が同じで、意味もよく似た語」である「同音類義語」については、使い分けに悩むことも多いのではないでしょうか?

前に「同音類義語の使い分け(その1)事典と辞典と字典、製作と制作、更生と更正」「同音類義語の使い分け(その2)食糧と食料、生育と成育、特徴と特長、稼働と稼動」「同音類義語の使い分け(その3)発憤と発奮、暗唱と暗誦と諳誦、相違と相異」「同音類義語の使い分け(その4)重体と重態、不気味と無気味、開放と解放」という記事を書きましたが、ほかにもまだまだありますのでご紹介します。

1.意思と意志

(1)意思

意思」は、「本人の意思に任せる」「親族の意思を尊重する」などと使われるように、「思い」に重点を置いて使用する言葉です。何かをしようとするときのベースとなる心持ちを表します。英語の「intent」または「intention」に相当します。

最近は、銀行などで「本人の意思確認」が求められることが多くなりましたね。

法律上は、全てこの「意思」を使っています。物事を行う場合、または行わない場合に、その元になるはずの気持ちを法律的に見た立場での名付け方です。

それは、法律上の効果を発生させよう、または発生させまいとする積極的な気持ちのことです。「承諾の意思がある」「意思を表示する」「意思がない」などと用います。

(2)意志

一方、「意志」は「ある事柄を行いたい、または行いたくない」という考えです。さらに目的や計画を選び、それを実現しようとする意味もあります。

リンカーン大統領の名言「意志ある所に道あり(道は開ける)」(Where there’s a will, there’s a way.)でも使われている「will」に相当します。

日常生活では、意志が「弱い」や「強い」と表現されるケースが多いです。

まとめると、意思は考えや心持ちに重点を置いて使用されますそれに対し、意志は、「目的を達成しようとする心の動き」に対して使う言葉です。意向と言い換えても通じることがあります。

2.追求と追及と追究

(1)追求

追求」は、目的のものを手に入れるために、どこまでも追い求めることです。

追求の「求」は、求めること・手に入れようとすることの意味で、「利益の追求」「幸福の追求」などと使います。

(2)追及

追及」は、どこまでも追い詰めて責任や欠点を問いただすことです。また、後から追いかけて追いつくことです。

追及の「及」の字は、逃げる人の背に手が届いたさまを示した漢字で、追いかけ、追い詰めることを表します。

相手を問いただしたり責める意味での使用が多く、「余罪を追及する」「責任の所在を追及する」などと用いいます。

追いかける意味では、「逃げる相手を追及する」「後続走者の追及を振り切る」などと使う。

(3)追究

追究」とは、不明なこと・未知のものを、どこまでも深く調べて明らかにしようとすることです。

追究の「究」は、極める・奥深くに入り込むという意味で、「研究」という熟語でも使われているとおり、調べる・明らかにすることを表します。

「真理を追究する」「美を追究する」などと使ういます。

3.共同と協同と協働

「一緒に事を行う」という意味で「共同」と「協同」の二つが使われています。

共同生活」「協同組合」

さらに似たような言葉で「協働」が使われることもあります。これらの言葉は、一体どのように使い分ければよいのでしょうか?

(1)共同

共同」は、複数の人や団体が、同じ目的のために一緒に事を行ったり、同じ条件・資格・立場でかかわったりすることです。

「共同住宅」「共同トイレ」「共同墓地」などと用います。

「共同トイレ」とは、「共同住宅」(アパート)の住人全員が使えるトイレや、公園などにある誰でも使えるトイレのことです。また、「共同墓地」とは、複数の人が同じ場所へ納骨した墓地のことを指します。主に、自分だけではお墓の面倒をみきれない人が使う墓地となります。

(2)協同

協同」は、複数の人または団体が、力を合わせて物事を行うことです。相互扶助を原則として生産・分配・消費その他の利益増進のために結合することです。

「協同組合を結成する」「農業協同組合(農協)に加入する」「産学協同」などと用います。

「協同組合」とは、個人や事業者が集まりお互いに助け合う組織のことです。身近な例だと、スーパーマーケットのコープなどは、「生活協同組合」を結成しています。また、「漁業協同組合」とは日本の漁業者によって作られた組合のことです。略して「漁協」などとも呼ばれています。

「協同」とはこのように組織の一員がお互いに助け合いながら物事を行っていくことを表す言葉となります。

なお、「協同」の場合は「協同する」のように動詞としての使い方もします。このような動詞としての使い方は「共同」にはありません。

「共同」と「協同」の違いは次の2点です。

1つ目は、「力を合わせるかどうか」です。

「協同」の方は、必ず皆で力を合わせます。なぜなら、「協同」は相互扶助を原則として、お互いの利益を増進するために行うからです。

一方で、「共同」の方は必ずしも力を合わせるとは限りません。例えば、「共同トイレ」であれば皆が一緒に使用しているだけで「共同」と言えます。

もちろん、「共同」でも力を合わせることはありますが、「共同」の場合はあくまで「同じ条件にいた結果、力を合わせることもある」という意味です。極端な話、同じ条件にいれば、「仲が良くない者同士」「一切協力しない者同士」でも「共同」と言えるわけです。

2つ目は、「文法的な違い」です。

「共同」の方は、「名詞」でしか使いません。一方で、「協同」は「名詞」以外に「動詞」として使うこともあります。

これは両者の語源を比較すれば、納得できるでしょう。

「共同」の「」は、字訓が「とも」で「一緒」という意味です。対して、「協同」の「」は字訓が「合わせる」で「一緒に行う」という意味です。

つまり、「」の方は本来は動詞としての意味が含まれていることになります。そのため、「協同する」のような動詞的な使い方もするということです。

(3)協働

協働」は、同じ目的のために、対等の立場で協力して共に働くことです。

「協働」は、文字通り「働く」という点がポイントです。すなわち、営利や非営利など労働に対する利益が関係してくることになります。

その中でも特に、政府や自治体など公的な機関が協力する場合に使うことが多いです。例えば、「官民協働」という言葉です。「官民協働」とは「行政と民間が協力して働くこと」を意味します。

このように、「協働」の場合は「公的な機関」+「協力して働く」という2点が合わさった言葉と考えると分かりやすいでしょう。

また、「協同」との違いですが、「協同」は「働く」とは限りません。言いかえれば、「労働」ではなく普通の行動でも、「協同」と言えるのです。

「協同」も「協働」も、同じ目的に向かって力を合わせ物事を行うという意味では同じですが、「協同」は役割分担などが事前に決まっていることが多いのに対し、「協働」はそれぞれができること、得意分野のことをする場合に用いられることが多いようです。

ただ、実際には「協働」と「協同」はそこまで厳密に使い分けがされているわけではありません。

元々、「協働は後から作られた「造語」(元々存在する言葉を組み合わせて作った新しい言葉)と言われています。したがって、漢字本来の歴史から言えば「協働」はあまり使われない言葉です。

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