二十四節気の季節感溢れる季語と俳句 晩秋:寒露・霜降(その3)生活

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寒露

前回まで、「ホトトギス派の俳人」16人(「ホトトギス派の俳人(その16)杉田久女:虚子との確執で有名な悲運の女流俳人」など)と「ホトトギス派以外の俳人」14人(「ホトトギス派以外の俳人(その14)長谷川かな女:大正期を代表する女流俳人」など)を紹介する記事を書いてきました。

ホトトギス派は、「客観写生」「花鳥諷詠」「有季定型(季語のある定型俳句)」を旨としましたが、それに飽き足りない俳人たちが、「無季俳句」や「自由律俳句」などを標榜する「新興俳句運動」を起こしました。

私は、「新興俳句運動」を全否定するつもりはなく、それなりの歴史的意義はあったと思います。しかし、私はやはり季節感溢れる「季語」を詠み込んだ「定型俳句」に魅力を感じます。

そこには、現代の私たちの生活から失われつつある(一部はほとんど失われた)季節感が溢れており、「懐かしい日本の原風景」を見るような気がします。

そこで今回から、「二十四節気」に沿って季節感あふれる「季語」と俳句をご紹介していきたいと思います。

なお、前に「季語の季節と二十四節気、旧暦・新暦の季節感の違い」という記事も書いていますので、ぜひご覧下さい。

季語の季節対比表

二十四節気図

「秋」は旧暦7月~9月にあたり、「初秋」(立秋・処暑)、「仲秋」(白露・秋分)、「晩秋」(寒露・霜降)に分かれます。

今回は「晩秋」(寒露・霜降)の季語と俳句をご紹介します。

・寒露(かんろ):新暦10月8日頃です。「九月節」 秋が深まり野草に冷たい露が結びます。

・霜降(そうこう):新暦10月23日頃です。「九月中」 霜が降りる頃です。

4.生活

(1)あ行

・茜掘る(あかねほる):秋にアカネを採取すること。茜はアカネ科の蔓性多年生植物で本州、四国、九州の山野で自生する。秋の初めに白い小さな花を咲かせる。根は染料になるほか、止血剤としても用いられた。根が赤いことからこの名がある

茜掘る

茜掘 夕日の岡を 帰りけり(尾崎紅葉)

・秋揚げ(あきあげ):秋、一年の農作業を無事全て終えた祝い

・秋納め(あきおさめ):その秋の収穫がすべて終了したということ。田植から収穫まで、作業に携わった人々が寄り合いお祝いをする。餅を搗く場合もある。呼び名も方法も地域によって違うが、いずれにしても春からの長い農作業のねぎらいと、感謝の意味が込められている

天と地の 間の秋を 収めけり(長谷川櫂)

・秋蕎麦(あきそば):秋に収穫される新蕎麦のこと

・秋田刈る(あきたかる):秋の田に稔った稲を刈ること

・秋の御遊(あきのぎょゆう):紅葉の季節に行う祝賀の宴会。あるいは、紅葉の樹陰で宴をひらくこともいう

・秋の炉(あきのろ):秋に暖を取るためのもの。朝晩の急な冷え込みに焚かれた炉の火には、冬と違った趣がある

・秋振舞(あきぶるまい):秋の収穫を終えた後の祝いの飲食のこと

・秋繭(あきまゆ):秋蚕が作る繭のこと。飼育日数が短いため、秋繭は春の蚕の作る春繭に比べて小粒である。収量も少なく品質も多少劣る

・秋忘(あきわすれ):秋の収穫を終えた後の祝いの飲食のこと

・浅漬大根(あさづけだいこん):大根の当座漬である。2~3日干した大根を比較的薄塩にして漬け 込んだもの。沢庵ができるまでの香の物として重宝される

・朝庭(あさにわ):晩秋の朝、庭と呼ばれる農家の土間で籾摺をすること。籾摺は秋の農作業の一つ

・蘆刈(あしかり):枯蘆を刈り取る作業。舟を浮かべて刈ることもある。刈り取った蘆を積んで帰るこの舟を葦刈舟という。刈り取った蘆で屋根を葺いたり、葭簀を編んだりする

蘆刈

果てしなく 一掴みみづつ 蘆を刈る(長谷川櫂)

・蘆刈舟(あしかりぶね):晩秋になって枯れてきた蘆を刈り取るための舟。あるいは刈り取った蘆を積んだ舟

・蘆刈女(あしかりめ):晩秋から冬へかけ、枯れてきた蘆を刈る女

・蘆火(あしび):刈った蘆を焚いた火のこと。その火で冷えた手足を温めたり、作業する人たちがその火を囲んで、束の間の休憩を楽しんだ

・蘆舟(あしぶね):晩秋になって枯れてきた蘆を刈り取るための舟。あるいは刈り取った蘆を積んだ舟

・網代打(あじろうち):杭などを川や湖に打って、網代を作ること。網代は網の代わりに 柴、竹などを編んで端に簀を設け魚を捕る仕掛けである

・網代木打つ(あじろぎうつ):晩秋から冬にかけて、魚を誘い込む網代の骨組をつくるため、川の瀬に杭を打ちこむ作業

・温め酒(あたためざけ/ぬくめざけ):陰暦9月9日の重陽の日、酒を温めて飲むと病気にかからないといわれた。このころは寒さもつのってくる。酒を温めて飲むのにもよいころである

あたためる 酒間遠しく 又楽し(三宅嘯山)

ぬくもりの あるかなきかに 温め酒(長谷川櫂)

・甘干(あまぼし):色づきはじめた渋柿の皮をむき、串に刺したり吊るしたりして乾燥させ渋をぬき甘くしたもの。干された柿は水分が抜け実がしまり、やがて表面に白い粉を吹き始め、中は飴色に仕上がる。干柿は古くから甘味の代表で、重宝されてきた

甘干へ 東山から 雀蜂(飴山實)

・新蕎麦(あらそば/しんそば):蕎麦の実が熟すより一か月ほど早く刈り取った蕎麦粉。熟す前の蕎麦ゆえに青みがありその風味を賞する。一日も早く初物を味わうことにこだわった江戸っ子に好まれた。最近では、今年取れた蕎麦という意味でも使われる。「蕎麦刈」は冬の季語

堂頭の 新そばに出る 麓かな(内藤丈草)

新蕎麦や むぐらの宿の 根来椀(与謝蕪村)

新そばを 碓氷の雷に 啜りけり(室積徂春)

江戸店や 初そばがきに 袴客(小林一茶)

・新走り(あらばしり):冬になる前に、その年の新米ですぐに醸造した酒

・稲垣(いながき):刈り取った稲を稲木に、垣のように掛けつらねて干してあるもの

稲垣

・稲城(いなぎ/いなき):稲束を積み置き、貯蔵する小屋

・稲木(いなぎ/いなき/いのき):イネ などの穀物や野菜を刈り取った後に束ねて天日に干せるよう、木材や竹などで柱を作り、横木を何本か掛けて作ったもの。

横木は最下段でも作物が地面につかない程度の高さになっている。 地方によって 稲掛け (いねかけ、いなかけ)、 稲機 (いなばた)、 稲架 (はさ、はざ、はせ、はぜ、はで)、 牛 (うし)など異称も多い

象潟や 稲木も網の 助杭(池西言水)

・稲塚(いなづか):刈り取った稲を実のついたまま、または実をとった後、一時的に積み上げたもの。いなむら

・稲堆(いなにお):秋、稲扱きをするために稲を積み上げたもの

・稲舟(いなぶね/いなふね):秋、刈りとった稲を積む舟

・稲埃(いなほこり):秋の稲扱の際に出る埃

・稲叢(いなむら/いなぶら):刈り取った稲を乾燥させるために野外に積み上げたもの。稲塚 (いなづか)

稲叢

・稲打(いねうち):稲扱(いねこき)のこと

・稲掛(いねかけ):秋に刈り取った稲を稲扱きをできるように干しておくこと

稲かけし 夜より小藪は 月よかな(小林一茶)

・稲刈(いねかり):秋、熟れた稲を刈り取ること。昔は大勢が出て鎌で刈り取ったが、今は稲刈り機が主流である。田植と並ぶ農家の大きな仕事である。刈った稻から新米をとる

世の中は 稲刈る頃か 草の庵(松尾芭蕉)

稲刈れば 小草に秋の 日のあたる(与謝蕪村)

落日が 一時赤し 稲を刈る(青木月斗)

みるうちに 畔道ふさぐ 刈穂哉(杉山杉風)

・稲刈鎌(いねかりがま):秋の稲刈りに使う鎌

・稲車(いねぐるま/いなぐるま):秋、刈りとった稲を積む車

・稲扱き(いねこき):実った稲穂から籾をこき落すこと、またはその道具。手作業から足踏み稲扱機、電動式脱穀機へと移り、最近は刈りながら脱穀もする稲刈機が普及している

稲扱き

稲こくや ひよこを握る 藁の中(宝井其角)

いねこきも 木陰つくるや 松の下(志太野坡)

渋柿の 下に稲こく 夫婦かな(夏目漱石)

ふくやかな 乳に稲扱く 力かな(川端茅舎)

・稲扱機(いねこきき):秋の稲扱をする機械

稲扱き

・稲干す(いねほす):刈り取った稲を稲架などに掛けて、天日で乾燥させること。近頃では、火力で乾燥させることが多いが、米のうま味は天日乾燥のほうがはるかに勝る

松原に 稲を干したり 鶴の声(椎本才麿)

・薯子飯(いもごめし):零余子飯(むかごめし)の別称

・芋煮(いもに)/芋煮会(いもにかい):主に山形県や東北地方で行われる秋の収穫を祝う行事。河川敷などの屋外にグループで集まり、里芋に野菜や肉を加え大鍋で煮て食べる。近年はアウトドア的志向で盛んになり、みちのくの秋の風物詩のひとつとなっている

芋煮会

・鰯網(いわしあみ):晩秋の漁期に鰯を獲る網。地引網での漁が多い

・鰯引く(いわしひく):引網を引いて鰯を捕獲すること。鰯はぬた、塩焼き、煮付け、稚魚をちりめんじゃこ、煮干しなどにする。日本人の食卓にはおなじみの魚である。大量に獲れるので飼料や肥料などにも利用されてきた

引き上げて 平砂を照らす 鰯かな(白扇)

・打栗作る(うちぐりつくる):大きい搗栗を蒸して、砂糖で味をつけ、紙に包んで圧して平たくした食べ物

・馬下げ(うまさげ)/馬下げる(うまさげ):冬になって牧場を閉鎖して、牛や馬を牛舎や厩におろすことをいう。秋の季語「牧閉す」と同じようであるが、こちらは冬に入ってからの作業

・うるか:鮎の塩辛である。卵巣をつけたものを子うるか、または、白うるかといい、腸をつけたものを苦うるか、黒うるかという。苦味と風味が酒の肴に喜ばれる

・小田刈る(おだかる):秋の田に稔った稲を刈ること

・囮(おとり):仲間の鳥を誘って捕えるために使われる鳥のこと。籠の中によく鳴く鳥を入れ近寄ってきた鳥を霞網、張り網、鳥黐などで捕える

鳴き負けて 形作りす 囮かな(前田普羅)

向峰より はやも高音や 囮かく(原石鼎)

白々と をどる囮や 草の上(原石鼎)

・囮籠(おとりかご):秋に小鳥を捕獲するための囮の鳥の入った籠

・囮守(おとりもり):囮を使った秋の小鳥の狩で、使う囮の鳥を見張る人

(2)か行

・柿すだれ(かきすだれ):軒下に吊し柿がすだれのように並んでいるさま

柿すだれ

・柿吊す(かきつるす):秋、渋柿を干して干柿を作ること

・柿干す(かきほす):秋、渋柿を干して干柿を作ること

・柿羊羹(かきようかん):生干しにした柿をすり潰したり、柿を煮てペースト状にしたり、やわらかくした後、煮溶かした寒天に混ぜて、容器に流し込んで棹状にしたもの

・掛稲(かけいね):刈り取って、乾かすために、稲木などにかけた稲

かけ稲や 大門ふかき 並木松(炭 太祇)

かけ稲に 鼠鳴くなる 門田かな(与謝蕪村)

かけ稲や あらひあげたる 鍬の数(白雄白雄)

・霞網(かすみあみ):ごく細い糸で作り、高く張って小鳥を捕らえる網。かつては秋にこれを使った小鳥狩が行われたが、現在は霞網の使用は禁止されている

・搗栗作る(かちぐりつくる):殻付き栗を干し、臼で搗き、殻と渋皮を取り除いたものが「搗栗」。 保存が利き栄養価も高いことから戦国時代によく用いられた。また「搗ち(かち)」が「勝ち」につながることから縁起がよいとされ た

・鎌あげ(かまあげ):秋の刈上の祝いの後で、稲刈りをした鎌を神棚に供えたこと

・鎌祝/鎌祝い(かまいわい):稲刈が無事終ったことを鎌に感謝すること。鎌に赤飯などを供え、 その年の収穫を家族みんなで祝った。作業に欠かせない鎌や鍬などの道具を、大切に扱おうという思いがこめられている

・鎌納め(かまおさめ):秋の刈上の祝いの後で、稲刈りをした鎌を神棚に供えたこと

・萱刈る(かやかる):屋根を葺くためのススキ、チガヤ、カルカヤ、などを秋に刈り取ること。刈った萱は良く乾燥させて屋根替えに利用する。現在、萱葺き屋根は手間暇がかかりすぎるため、一般家庭ではあまり見かけなくなった

萱刈る

萱刈の 地色広げて 刈進む(篠原温亭)

萱刈りが 下り来て佐渡が 見ゆるてう(前田普羅)

・萱の軒場(かやののきば):萱で軒を葺いている場所。萱は秋に刈り取る

・萱葺く(かやふく):晩秋、刈り取った萱で屋根を葺くこと

茅葺

・からすみ:魚、特に真鯔(ぼら)の卵巣を塩漬にし、塩を抜いてから乾燥さ せたものをいう。できあがったものが唐墨に似ていることからこの名がついた。長崎産のものが有名であるが、このごろは大型の台湾産のものも多い。酒肴として珍重される

・刈上/刈上げ(かりあげ):秋、稲の刈り取りを終えること

・刈上の節供(かりあげのせっく):秋、稲を刈り終えたときの祝い

・刈上餅(かりあげもち):豊作に感謝するため新米でついた餅をいう。うぶすな神に供えたり世話になった人に配ったりする。農作業が終わったあとの風習である

・刈稲(かりいね):刈り取った稲

・刈干(かりぼし):秋に刈り取った稲を稲扱きをできるように干しておくこと

・雁来瘡/雁瘡(がんがさ):雁が来るころにできる湿疹性皮膚病のこと。冬の乾燥肌の一種。雁瘡は雁が帰る頃になおるとされる

・旱魃田(かんばつでん/かんばつだ):旱の害にあい、秋の実りの少ない田

・観楓(かんぷう):秋の紅葉を観賞するために、山々を逍遙すること

・利酒(ききざけ):秋の新酒の善し悪しを、舌で味わい確かめること

・菊襲(きくがさね):襲の色目一つで表が白、裏が蘇芳色のもの。また、宮中の女房が着用したものは、上が蘇芳匂五枚、下に白三枚を重ねたもの

菊襲

旅ごろも 馬蹄のちりや 菊がさね(山口素堂)

・菊花展(きくかてん):愛好家が大輪の菊や懸崖菊など芸術性の高い菊を持ち寄って、一同に展示すること。寺社の境内で行われることが多い。金賞、銀賞、銅賞などの順位をつける場合もある

菊花展

・菊花の酒(きくかのさけ):菊酒のこと

・菊酒(きくざけ):重陽の節句に菊の花を浮かべて飲む酒をいう。中国では、菊酒を酌むことで長生きできるという言い伝えがあり、それが日本にも伝わったもの。この習慣は、朝廷をはじめ武家や民間にも広まった。現在でも下賀茂神社などでは、重陽の節句に菊酒を振舞う

菊酒に 薄綿人の ほめきかな(井原西鶴)

草の戸や 日暮れてくれし 菊の酒(松尾芭蕉)

菊酒の 加賀に知る人 おとづれよ(森川許六)

草の戸の 用意をかしや 菊の酒(炭 太祗)

よもぎふや 袖かたしきて 菊の酒(小林一茶)

・菊師(きくし):菊人形をつくる人。菊人形は秋の季語

・菊枕(きくちん/きくまくら):干した菊の花を入れて作った枕。摘んだ花を陰干しにしてよく乾 かし枕の中味にする。ほのかに菊の香る枕は、安眠の効用もある。 虚子の長寿を願い、菊枕を贈った杉田久女のことはつとに知ら れている

比の千代を 今日の馳走よ 菊枕(北村季吟)

白妙の 菊の枕を 縫ひ上げし(杉田久女)

ちなみぬふ 陶淵明の 菊枕(杉田久女)

菊慈童の 思ひに菊の 枕かな(青木月斗)

・菊展(きくてん):菊花展のこと

・菊膾(きくなます):摘み取った菊の花びらを酢を入れた湯でさっと茹で、三杯酢やくるみ和え、胡麻和えにする。食用菊としては新潟、山形産の「かきのもと」などが有名

蝶も来て 酢を吸ふ菊の 酢和へかな(松尾芭蕉)

折ふしは 酢になる菊の さかなかな(松尾芭蕉)

草の戸の 酢徳利ふるや 菊膾(黒柳召波)

・菊人形(きくにんぎょう):菊の花を衣装にみたてた人形。当たり狂言の名場面を菊人形で再現したり、その年話題になった時代劇の主人公をモチーフにしたりする

菊人形 たましひのなき 匂かな(渡辺水巴)

怪しさや 夕まぐれ来る 菊人形(芥川龍之介)

・菊の酒(きくのさけ):菊酒のこと

・菊の枕(きくのまくら):菊枕のこと

・岸釣(きしづり):晩秋、岸から根魚を釣ること

・茸籠(きのこかご):茸狩で採った茸を入れる籠。茸狩は秋の季語

・茸狩(きのこがり/たけがり):秋、山林に入って自生する茸を探して採る行楽の一つ。代表的なものは松茸狩である

茸狩りや あぶなきことに ゆふしぐれ(松尾芭蕉)

茸狩りや 鼻のさきなる 歌がるた(宝井其角)

茸狩りや 頭挙ぐれば 峰の月(与謝蕪村)

茸狩りの から手でもどる 騒ぎかな(小林一茶)

茸狩りや 鳥啼いて女 淋しがる(正岡子規)

茸狩や 心細くも 山のおく(正岡子規)

・茸採り(きのことり):秋の行楽の一つ。山林に入り松茸をはじめとする茸を採るもの

・凶作(きょうさく):災害などでの、作物の実りの悪さをいう。かつて、稲の実りの悪さは、人々の生死にもかかわることであった。

・きりたんぽ:秋田地方の名物料理。炊きたてのご飯を餅のように半つぶしにし、杉串に円筒形にぬりつけて焼き上げた物。鶏肉、牛蒡、芹などともにだし汁で煮て食べる

きりたんぽ

・草槐掘る(くさえんじゅほる):晩秋、山野で薬用植物である苦参(くらら)の根を採ること

・串柿作る(くしがきつくる):渋柿の皮を剥き、串に刺して乾燥させる。表面がしわしわになり、 白い粉を吹いた状態になれば甘くなる

串柿

・葛根掘る(くずねほる):晩秋、葛粉を取るために山野に生える葛根を掘ること

松風も 家督にしたり 葛根掘(松井三津人)

・葛引く(くずひく):晩秋、葛粉を取るために山野に生える葛根を掘ること

・葛掘る(くずほる):夏の間、しっかり成長した葛の根は太く、多くの澱粉が含まれて いる。その根を掘り出し、粉砕し、水に晒して澱粉を採取する。 吉野葛が有名である

・薬採る(くすりとる):薬用とする茜や苦参などの山野草を、根の成熟した晩秋に採集すること

・薬掘る(くすりほる):山野に自生する薬草(茜、竜胆、苦参、千振など)を掘って採取して薬用とすること。葛の根は葛根湯や葛湯として今も重宝されている

薬掘り けふは蛇骨を 得たるかな(与謝蕪村)

薬掘 蝮(まむし)を提げて もどりけり(炭 太砥)

山深く 薬を掘りに 行きしといふ(佐藤紅緑)

・崩れ簗(くずれやな):秋も深まって使われなくなった下り簗が、風雨にさらされたり押し流されたりして崩れてしまった状態をいう。物錆びた侘びしい光景である

崩れ簗

帰り来る 魚のすみかや 崩れ簗(内藤丈草)

もの言はで つくろうて去(い)ぬ くづれ簗(与謝蕪村)

獺(かわうそ)の 月に遊ぶや 崩れ簗(与謝蕪村)

川添ひや 雨の崩れ家 くづれ簗(小林一茶)

ほつれ簗 ピーピーと鳴る 川瀬かな(大須賀乙字)

米をつく 舟もすさまじ 崩れ簗(河東碧梧桐)

とめどなく 崩るる簗や 三日の月(前田普羅)

簗崩す 夜々の水勢に 三日の月(前田普羅)

・苦参引く(くららひく):秋に苦参の根を掘ること。苦参はマメ科の多年草で、四国や九州など日当たりの良いところに自生する。草丈は50cm~1.5mくらいで、夏に薄黄色の花を咲かせる。根は生薬になり、健胃剤や解熱剤に利用される。くらくらするほど苦いことから、くららという名がついたとされる

・栗子餅(くりこもち):江戸時代、9月9日の重陽の節句に用いたといわれる餅

・栗の子餅(くりのこもち):栗の実を粉に挽き、餅に搗きこんだもの。あるいは蒸した栗をそぼろ状にし、餅にふりかけた素朴な菓子で、十六世紀の茶会記にその名が見える。現在では、岐阜県中津川で、名物の栗きんとんを細かなそぼろ状にして餅にふりかけた栗粉餅が作られている。また、各地には、同じ名前で、栗と白餡をそぼろにして餡玉につけたり、栗餡で餅を包んだりした菓子もある

・栗の粉餅(くりのこもち):江戸時代、9月9日の重陽の節句に用いたといわれる餅

・栗蒸羊羹(くりむしようかん):和菓子の一種で、栗の甘露煮が入った蒸し羊羹。小豆のこし餡に小麦粉、くず粉または片栗粉・砂糖・水などを混ぜ合わせたものに栗を加え、型に流し入れて蒸したものである。千葉県成田市の成田山参道発祥

・栗羊羹(くりようかん):蜜栗をいれた蒸羊羹がよく知られるが、栗餡を寒天で固めた煉羊羹もある

・桑括る(くわくくる):四方八方に伸びている桑の枝を荒縄などでくくること。雪国では雪折れの害から防ぐにも、大切な作業であった。桑畑そのものが少なくなった現在ではあまり見られない光景である

・紫雲英蒔く(げんげまく):紫雲英は、田植前に田にすきこんで田に滋養を与える植物。稲刈が終わったころに種まきをする。10月ころに芽を出し、翌春には花を咲かせる

・小鰯引く(こいわしひく):晩秋の漁期に、主に地引網で鰯を獲ること

・子うるか(こうるか):卵だけのうるか

「うるか」とは、アユのはらわた、およびその塩辛のこと。はらわただけのものは「渋うるか」(または「苦(にが)うるか」)、卵だけでつくるものは「子うるか」、アユをはらわたごと刻んでつくるものは「切りまぜうるか」(または「切り込みうるか」)、白子だけ用いたものは「白うるか」と呼ばれる

・古古米(ここまい):収穫年度を2年経過した米。市場で、9月頃の収穫期以前には一昨々年の産米をいい、新米の出回るそれ以後には一昨年の産米をいう

・古酒(こしゅ):新酒が出回ってもまだ残っている前年の酒を言う。夏を越えた日本酒は、新酒と比べて味が劣る

・炬燵欲し(こたつほし):晩秋、秋冷えの日が続く頃、炬燵がほしくなること

・今年酒(ことしざけ):今年の秋とれた米で醸造した酒。新酒

よく飲まば 価 (あたひ) は取らじ 今年酒(炭 太祇)

八兵衛が 破顔微笑や ことし酒(小林一茶)

・今年米(ことしごめ/ことしまい):今年収穫した米。新米

熊野路や 三日の粮(かて)の 今年米(与謝蕪村)

山寺や 庭の干場に 今年米(松瀬青々)

馬渡す 舟にこぼるゝや 今年米(高井几董)

大阪の 備へ頼もし 今年米(長谷川櫂)

・今年綿(ことしわた):秋に新しくとれたばかりの綿

・今年藁(ことしわら):新藁の別称

・小鳥網(ことりあみ):霞網など、小鳥を捕まえるのに用いる網

川上や 黄昏 (たそがれ) かかる 小鳥網(黒柳召波)

雲の端に 二日の月や 小鳥網(椎本才磨)

日は竹に 落ちて人なし 小鳥網(炭 太祇)

・小鳥狩(ことりがり):小鳥を狩ること。詳しく言えば、渡り鳥の通り道(山間や谷)に 霞網(別名ひるてん)を張り巡らし、鶫やあとりなど、渡来する各種の小鳥の群れを捕らえる猟法。現在は霞網の使用は制限されて行われていない

・・小庭(こにわ):籾摺をする小さな土間。籾摺は秋の農作業の一つ

・牛蒡引く(ごぼうひく):牛蒡は地中深く伸びるため簡単には引き抜けない。折れるのを防 ぐため、周りを鍬で充分に掘ってから引き抜く。牛蒡はきんぴら ごぼうや柳川鍋などの和風の料理に多く用いられる

しののめの しの字に引きし 牛蒡かな(小林一茶)

・牛蒡掘る(ごぼうほる):晩秋、春蒔牛蒡を収穫すること

・古米(こまい):秋、新米が取れた後での前年の米の呼称

・米俵編む(こめだわらあむ):稲刈りがすみ、籾摺の始まるまでの間の夜なべ仕事として、新藁を使って米俵を編んだこと

・ころ柿/転柿/枯露柿(ころがき):干柿の別称。渋柿の皮をむき、天日で干した後、むしろの上でころがして乾燥させたもの。表面に白い粉をふき、甘い

(3)さ行

・鮭網(さけあみ):晩秋に産卵のための川を遡上する鮭を、網で獲ったこと

・鮭打(さけうち):産卵のため遡上してきた鮭を、棒などで打って捕まえること。網を使ったり、簗場を作って捕まえるところもある

・鮭小屋(さけごや):秋の鮭漁のための小屋

・鮭番屋(さけばんや):秋の鮭漁のための小屋

・鮭簗(さけやな):昔、晩秋に産卵のための川を遡上する鮭を、簗で獲ったこと

・銃猟期に入る(じゅうりょうきにはいる/じゅうりょうきにいる):銃猟解禁日のこと。現行狩猟規則では、狩猟期間は11月15日から翌年2月15日までとなっている

・銃猟はじまる(じゅうりょうはじまる):銃猟解禁日のこと。現行狩猟規則では、狩猟期間は11月15日から翌年2月15日までとなっている

・秋炉(しゅうろ):秋に暖を取るためのもの。朝晩の急な冷え込みに焚かれた炉の火には、冬と違った趣がある

・白柿(しろがき):干して白く粉をふいた柿

・新麹(しんこうじ):蒸した新米に麹菌を加えて繁殖させたもの。味噌や醤油を醸造するのに使われる

・新酒(しんしゅ):その年の新米で醸造した酒。昔は、新米が穫れるとすぐに造ったので、秋の季としたが、今は寒造りが主流となった。とはいえ、新米の収穫のめでたさを祝う思いがこの季語には含まれる

旅人と なりにけるより 新酒かな(椎本才麿)

風に名の ついて吹くより 新酒かな(斯波園女)

父が酔ひ 家の新酒の うれしさに(黒柳召波)

青竹の 筒ひびかせん 新走り(長谷川櫂)

・新酒糟(しんしゅかす):秋に新酒を造ったときにできた酒糟

・新糠(しんぬか):秋の新米から出た糠

・新米(しんまい):その年に収穫した米で10月ころに出回る。手塩をかけて育てた米が、無事、今年も収穫を迎えた、そうした喜びの思いがこの季語にある。各地の秋祭は、新米の収穫に感謝し、新米を神に供える行事である

新米に まだ草の実の 匂ひかな(与謝蕪村)

新米の 酒田は早し もがみ河(与謝蕪村)

新米の 膳に居(すわ)るや 先祖並み(小林一茶)

新米の 俵も青き 貢かな(内藤鳴雪)

新米と いふよろこびの かすかなり(飯田龍太)

・新糯(しんもち):その秋に収穫した新しい糯米(もちごめ)

・新綿(しんわた):その年に収穫した綿の実からとった綿の繊維をいう。繊維が吹き出た綿の実を綿と種とに分け、さらに不純物を取り除いて綿糸を採取する。綿打ち弓で打ちほぐしたものは、布団の綿などに利用される

里は今 綿新しき 日和かな(大島蓼太)

・新藁(しんわら):今年刈り取った稲の茎を乾燥させた物。農家にとっては必需品である。香りが高く、それで正月の〆飾りや注連縄をつくる。かってはその藁を用いて草履、縄、俵などを作った。昔の農家の大切な冬の仕事。

新わらに ふはりふはりと 寝楽かな(小林一茶)

新藁や 此の頃出来し 鼠の巣(正岡子規)

新藁や 永劫太き 納屋の梁(芝不器男)

新藁を くはへて走る 子犬かな(長谷川櫂)

新藁に 子どもの坐り ゐしくぼみ(高田正子)

・木莵引(ずくひき):鳥もちを塗った細い棒をあちこちの枝に仕掛け、その中心に紐をつけた木菟を止まらせて小鳥を捕まえようとするもの。昼間の木菟は小鳥を襲わないので小鳥が寄ってくる、という発想から生まれた狩猟法である

・薄刈る(すすきかる):晩秋、薄を刈り取ること

・炭俵編む(すみだわらあむ):稲刈りがすみ、籾摺の始まるまでの間の夜なべ仕事として、新藁を使って炭俵を編んだこと

・炭火恋し(すみびこいし):晩秋、秋冷えの日が続く頃、炭火がほしくなること

・千振採る(せんぶりとる):晩秋、山野で薬用植物である千振を採ること

・千振引く(せんぶりひく):開花期の秋に千振を採取すること。千振はリンドウ科センブリ属の二年草で薬草として利用される。日当たりの良いところに自生し草丈は30cmくらい、秋に白い花を咲かせる。干したものを煎じて飲むと胃腸に効くとされる。千回振出してもまだ苦いことからこの名がある

・千振干す(せんぶりほす):晩秋に採った千振を、薬用にするため干すこと

(4)た行

・高縄(たかなわ): 鳥を捕えるために縄に黐(もち)をつけて高いところに張っておくもの

・高はが(たかはが):高羽籠(たかはご)のこと

・高羽籠/高擌(たかはご):鳥もちを使って小鳥を捕らえること。囮を入れた鳥籠の近くの木などに、鳥もちをつけた細い棒を括りつけ、囮の鳴き声で小鳥をおびき寄せ捕まえようというもの

・田刈(たかり):秋の田に稔った稲を刈ること

・濁酒(だくしゅ):にごりざけ。日本酒の一種で、製造原料は清酒と同じであるが、漉(こ)さないので白くにごっている。どぶろく

・茸筵(たけむしろ):茸狩で採った茸をのせる筵。茸狩は秋の季語

・田仕舞(たじまい):秋、一年の農作業を無事全て終えた祝い

・脱穀機(だっこくき):秋の稲扱をする機械

・種採(たねとり):花の終った草花の種を採ることをいう。採った種は来年のために保存する

台風は きぞに朝顔の 種収む(臼田亜浪)

・田茂木(たもぎ):秋、刈り取った稲を束にしてかけて干すため横木を渡したもの。田のなかや畦に設ける

・俵編(たわらあみ):刈入の終った後の新藁で俵を編むこと。昔それに米を入れたり、 炭を入れたりした

・たんぽ餅(たんぽもち):晩秋から冬、秋田地方の名物料理。炊いた新米をすりつぶし、竹輪状にして焼いたもの

・強海蠃(つよばい):海蠃打で勝ち越した独楽

・釣柿(つりがき):干柿・吊し柿の別称      釣柿や 障子にくるふ 夕日影(内藤丈草)

・蔓切(つるきり):秋に収穫した瓜や豆類の枯れ蔓を取り払うこと

・吊し柿(つるしがき):干柿の別称

・蔓たぐり(つるたぐり):収穫を終えた瓜や豆類の枯蔓を取り除くこと。来年の収穫に備えて、畑をきれいにしておく作業である

・蔓引(つるひき):収穫期を過ぎて、生長のとまった瓜類 豆類などの枯れ蔓を手繰り抜くこと

・当薬引く(とうやくひく):晩秋、山野で薬用植物である千振を採ること

「当薬」とは、千振の別称。秋、白地に紫の線が入っている花が集まり咲く

・木賊刈る(とくさかる):晩秋、木賊を刈り取ること

・橡粥(とちがゆ):水と灰汁(あく)で渋抜きした橡の実をあらくひいて煮た粥。とちのかゆ

・橡団子(とちだんご):秋の橡の実をアク抜きして混ぜた団子

・橡麺(とちめん):橡の実の粉を小麦粉、そば粉などに混ぜてこね、棒で薄く打ち延ばし、切りそばのようにしたもの

・橡餅(とちもち):木灰で灰汁を抜いた橡の実を、餅米と一緒に搗きこんで作る。餡や黄粉をつけて食べる

橡餅

・どびろく:濁酒の別称

・どぶろく:濁酒の別称

・鳥屋師(とやし):秋の小鳥狩をする人

・鳥屋場(とやば):秋の小鳥狩の鳥を入れておく小屋

・収穫(とりいれ):成熟した農作物を収集すること

(5)な行

・中汲(なかくみ):糟を漉さずに作った白濁している酒。秋に新米で作ったものをさす

・名残月(なごりづき):十月の茶道における別称。風炉の名残に由来する

・名残の茶(なごりのちゃ):茶道では秋十月に風炉から炉へ替えるが、その際、夏の間に手慣れた風炉への愛惜の情をこめて催す茶会

・菜種蒔く(なたねまく):種油をとるためのアブラナの種を8月から9月末頃までに蒔く。水田には稲刈の後の10月頃に蒔く。かつては菜種は広く栽培されていて、春になれば一面の菜の花畑となった

出水跡 畝なしに菜種 振り蒔けり(高田蝶衣)

・稲積(にお/いねつみ):刈り取った稲を重ねて置くこと

・苦うるか(にがうるか):鮎の内臓だけのうるか

・濁酒/濁り酒(にごりざけ):もろみを漉していない白濁した酒。清酒よりも味が濃厚で野趣にあふれている

山里や 杉の葉釣りて にごり酒(小林一茶)

交りを かへまじく濁酒 酌みにけり(河東碧梧桐)

・庭揚げ(にわあげ):晩秋、農家で籾摺り作業が終わること。籾摺は庭と呼ばれる農家の土間で行われた

・ぬかご汁(ぬかごじる):零余子(ぬかご)を蒸して実にした汁

野分あとの 腹あたためむ ぬかご汁(原石鼎)

・ぬかご飯(ぬかごめし):零余子飯(むかごめし)のこと

・根魚(ねうお):晩秋、回遊魚が沖の深みに去った後も残る、浅い海底の岩礁に棲息する魚のこと

・根魚釣(ねうおづり):晩秋、回遊魚が沖の深みに去った後も残る、浅い海底の岩礁に棲息する魚を釣ること

・根釣(ねづり):根とは海底の岩礁のこと。水温が下がり、水底の根につく魚が多くなる晩秋が、この釣りの季節である。クロムツ、キンメダイ、カサゴ、メバル、アイナメ、ベラなどが釣りの対象となる

ほのぼのと 朝飯匂ふ 根釣かな(宝井其角)

(6)は行

・海螺打(ばいうち): 海螺独楽をたたかわせる遊び

海螺打や 寺の内外の 菊日和(増田龍雨)

・海螺ごま(ばいごま)/海螺海螺ごま(ばいばいごま):海螺の殻に鉛を入れ、色をつけた蠟をつめたコマ

・海螺廻し(ばいまわし):海螺貝の殻に粘土などを詰めて独楽とし、樽などの上で廻す遊び。互いの独楽を弾き飛ばして競い合う。今は鋳物製の独楽を用いる   海螺廻し

海螺遊 してゐる脇の 土遊(皿井旭川)

・萩刈(はぎかり):晩秋、萩の発芽をよくするために、古枝を根元から刈り取ること

・萩刈る(はぎかる):花が終わった萩を根元から刈り取ること。翌春の発芽を促すためである。刈り取ったあとの庭はすっきりとしてどことなく淋しい

・稲架(はざ)::刈り取った稲の束を乾燥させる為の木組み。2~3m毎に 立てた棒に竹や丸太の横木を渡したもの。稲の束をその横木に跨がせるようにしてかける。畦道に植えた榛の木などを利用するところもある

稲架かけて 飛騨は隠れぬ 渡り鳥(前田普羅)

・走り蕎麦(はしりそば):新蕎麦(しんそば)に同じ

・櫨買(はぜかい):採った櫨を買う人

・櫨ちぎり(はぜちぎり):櫨の実から蝋をつくるため、11月末に熟れた櫨の実を収穫すること。その蝋は和蝋燭やポマード、織物の艶出しなどに利用された。特に北九州地方で盛んに採取された

・櫨採(はぜとり):晩秋、櫨の実を採ること

・初蕎麦(はつそば):新蕎麦(しんそば)に同じ

・初猟(はつりょう):11月15日が狩猟の解禁日である。鴨や雉、猪、狸などが対象となる

・はで木(はでぎ/はてぎ):刈り取った稲や麦などを干すために掛ける木。稲掛け。はで。泊木(はつき)

・火恋し(ひこいし):火の気が恋しくなること。秋の彼岸を過ぎた頃から朝晩は冷え冷えとし始める。炬燵を立てるとまでは行かないとしても、身辺に小さな火桶や電気ストーブなどがほしくなる

・菱採り(ひしとり):晩秋、菱の実を摘み取ること

・菱取る(ひしとる):舟を出して菱の実を取ること。実は、二つの鋭い突起を持ち、栗に似た風味がある。生食、あるいは茹でて食す

・菱の実取る(ひしのみとる):「菱取る」に同じ

・菱舟(ひしぶね):晩秋、菱を取る舟

・火鉢欲し(ひばちほし):晩秋、秋冷えの日が続く頃、火鉢がほしくなること

・不作(ふさく):作物の出来が悪いこと

・冬仕度(ふゆじたく):雪国では庭木の雪折れを防ぐために、雪吊や藪巻を木に施す。また家の周りを板で囲んで風雪から家を守ったり、越冬野菜などを買い込んだりして、長く厳しい冬に備える

・冬用意(ふゆようい):冬を迎えるためのさまざまな雑事、またその心持ち

・古酒(ふるざけ):新酒が出回ってもまだ残っている前年の酒を言う。 夏を越えた日本酒は、新酒と比べて味が劣る

・風炉名残(ふろなごり):「風炉の名残」に同じ

・風炉の名残(ふろのなごり):茶道では陰暦十月の亥の日に炉を開き、風炉を片付ける。風炉は持ち運びできる炉で五月から十月にかけて使われるもの。その風炉を惜しむ思いから、お茶会が催される。このお茶会を「風炉の名残」という。逝く秋への思いから、侘びの色を出すお茶会となる

沸く音の 時雨を風炉の 名残りかな(田川鳳朗)

菊生けて めでたき風炉の 名残りかな(蓑虫)

・べい独楽(べいごま):本来はバイ(海産の巻貝)で作った独楽のこと。ひと頃は鋳物製のもので多く遊ばれたが、最近はこれで遊ぶ子供は少ない

・干柿(ほしがき):秋、渋柿の皮をむいて干し、渋味を除いたもの

(7)ま行

・牧帰り(まきがえり/まきかえり):春から秋の間放牧した馬や牛を、秋の終わりに預け主に戻すこと。冬の季語としても使われることがある

・牧閉す(まきとざす):冬が来る前に牧場を閉鎖して、牛や馬を委託者に返すこと。牛や馬のいなくなった牧場には蕭条とた風が吹き渡る

・松手入(まつていれ):松の木の手入れ。赤く変色した古葉を取り除き、風通しをよくしてやると、松の姿は見違えるほどよくなる

きらきらと 松葉が落ちる 松手入れ(星野立子)

近江より 雲流れくる 松手入(長谷川櫂)

・零余子飯(むかごめし): 山芋の葉のつけ根に生ずる珠芽を炊き込んだご飯。醤油で薄く味をつけ、細かく刻んだ柚子の皮や紅しょうがなどを添えて食べる

零余子飯

比の匂ひ 蘭にもせうか 零余子飯(坂上呉老)

寂しくば たらふく食しね むかご飯(日野草城)

・籾(もみ): 脱穀の後、籾摺 (もみず) りする前の、外皮に包まれたままの米。もみごめ

老いし母 怒濤を前に 籾平 (なら) す(西東三鬼)

・籾臼(もみうす):籾摺に使う臼。籾摺は秋の農作業の一つ

・籾殻焼く(もみがらやく):玄米を取った後の籾殻を焼いて灰を採る秋の農作業

・紅葉重/紅葉襲(もみじがさね):秋衣のかさねの色目の一つ。表は紅、裏は青

・紅葉狩(もみじがり):紅葉を観賞するため、山野などを訪ねること。紅葉をめでながら酒を酌み交わすこともある。よく晴れた日、家族そろって眺める紅葉はまた格別である

都路や 初夜に過ぎたる 紅葉狩(野沢凡兆)

・紅葉衣(もみじごろも):紅葉襲の色目一つ。表は紅または赤、裏は濃蘇芳又は青、又は濃い赤。 陰暦9月9日より着用したとされる

・紅葉酒(もみじざけ):秋の紅葉を賞して酌み交わす酒

・紅葉焚く(もみじたく):秋、紅葉を焚くこと。白居易の詩句に由来する

・紅葉茶屋(もみじぢゃや):秋の観楓客のために設けられた休み茶屋

・紅葉の賀(もみじのが):紅葉の美しい頃に催す祝宴。または紅葉を観賞する宴。奈良時代に始まり「源氏物語」の「紅葉賀」には当時の華やかな御遊の様子が描かれている

・紅葉舟(もみじぶね):池や川、湖沼などに浮かべて岸の紅葉を観賞する、遊楽のための舟

・紅葉踏む(もみじふむ):秋の紅葉が落ちているのを踏んで歩くこと

・紅葉見(もみじみ):「紅葉狩」に同じ

紅葉見や 用意かしこき 傘二本(与謝蕪村)

紅葉見や 顔ひやひやと 風渡る(高桑闌更)

・籾摺/籾磨(もみすり):充分に乾燥させた籾を臼で摺って、玄米と籾殻に分けること。今 は籾摺機が能率よく行う

冬知らぬ 宿や籾する 音霰(松尾芭蕉)

摺り溜る 籾掻くことや 子供の手(芝不器男)

・籾摺臼(もみすりうす):籾摺に使う臼。籾摺は秋の農作業の一つ

・籾摺唄(もみすりうた):籾摺の際にうたわれる唄。籾摺は秋の農作業の一つ

・籾摺機(もみすりき):籾摺をする機械。籾摺は秋の農作業の一つ

・籾引(もみひき):秋の農作業の一つ。籾を磨臼にかけ、玄米にすること

・籾埃(もみぼこり):籾摺の際に出る埃。籾摺は秋の農作業の一つ

・籾干す(もみほす):秋の晴れた日、脱穀した籾を干すこと

・籾筵(もみむしろ):秋に脱穀した籾を扱うときに使う筵

・諸味/諸醪(もろみ):糟を漉さずに作った白濁している酒。秋に新米で作ったものをさす

・聞酒(もんしゅ):秋の新酒の善し悪しを、舌で味わい確かめること

(8)や行

・夜業(やぎょう):秋の夜長に、農家や町家などで昼の仕事の続きをすること

・薬草掘る(やくそうほる):薬用とする茜や苦参などの山野草を、根の成熟した晩秋に採集すること

・やま餅(やまもち):晩秋から冬、秋田地方の名物料理。炊いた新米をすりつぶし、団子状にしたものを煮込む

・柚釜(ゆがま):柚子の果肉をえぐり取って釜の形に似せ、中に果汁と味噌をつめて火にかけた食べ物。新柚子の出回る秋の季語

・雪支度(ゆきじたく):冬仕度と同じ意味だが、雪の多い地方の言い方

・柚子味噌(ゆずみそ):柚味噌のこと。新柚子の出回る秋の季語

・茹菱(ゆでびし):茹でて食用にした菱の実。菱の実は秋に収穫する

・柚醤(ゆびしお):ユズの皮を煮てつぶし、味噌・砂糖とまぜ合わせたもの

・柚餅子(ゆべし):柚子から作った蒸し菓子の一種。新柚子の出回る秋の季語

・柚味噌(ゆみそ):細かく刻んだ柚をすり鉢でよく摺り、味噌やみりん酒などを加え調味したもの。味付けした味噌に柚の皮をすりおろし練り上げる方法もある。いずれにしても、柚の香気を味噌にうつし楽しむ調理法。柚釜は、中身をくり抜いた柚に味噌と果肉、絞り汁を加えたものを詰め火にかけていただく。柚を釜に見立てたもの

・柚味噌釜(ゆみそがま):柚釜のこと。新柚子の出回る秋の季語

・夜仕事(よしごと):秋の夜長に、農家や町家などで昼の仕事の続きをすること

・夜なべ(よなべ):秋の長い夜を働き続けること。夜は特に静かで、こつこつと仕事をしているうちに時の経つのを忘れてしまう

・夜庭(よにわ):夜に行う籾摺り仕事。「朝庭」は早朝から行う籾摺り

・夜田刈(よるたかり/よだかり):秋の月夜に行う稲刈り

(9)ら行

・猟開禁(りょうかいきん):銃猟解禁日のこと。現行狩猟規則では、狩猟期間は11月15日から翌年2月15日までとなっている

・炉火恋し(ろびこいし):晩秋、秋冷えの日が続く頃、炉火がほしくなること

(10)わ行

・早稲酒(わせざけ):冬になる前に、その年の早稲米ですぐに醸造した酒

・早稲の飯(わせのめし):秋の新米で炊いた御飯

・臓うるか(わたうるか):鮎の内臓だけのうるか

・藁ぐろ(わらぐろ):秋の新藁を貯蔵のために円筒形に積みあげたもの

・藁こづみ(わらこづみ):秋の新藁を貯蔵のために円筒形に積みあげたもの

・藁塚(わらづか):秋の新藁を貯蔵のために円筒形に積みあげたもの

・藁にお(わらにお):秋の新藁を貯蔵のために円筒形に積みあげたもの



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