漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。
そこで今回は、「励ましたり褒めたり」を表す四字熟語のうち、「励ます・勇気づける」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。
1.励ます・勇気づける
(1)悪戦苦闘(あくせんくとう)
非常な困難の中で、苦しみながら一心に努力をすること。強敵に死にものぐるいで苦しい戦いをすることからいう。
「悪戦」は不利な状況の中で強敵に苦戦すること。
(2)殷殷奨飾(いんいんしょうしょく)
心をこめて励ましたり、褒めたりすること。
「殷殷」は心をこめてや、丁寧という意味。「奨飾」は褒めたり、励ましたりすること。
「殷殷(いんいん)として奨飾(しょうしょく)す」と訓読します。
(3)雨過天晴/雨過天青(うかてんせい)
悪かった状況や状態がよいほうに向かうたとえ。雨がやみ、空が晴れ渡り明るくなる意から。
「雨(あめ)過(す)ぎて天(てん)晴(は)る」と訓読します。
(4)温言慰謝/温言慰藉(おんげんいしゃ)
優しい言葉で人を慰めること。
「温言」は優しい言葉。「慰謝」は同情して慰めること。
(5)開雲見日(かいうんけんじつ)
心配ごとがなくなって、将来に希望がもてるようになること。
「開雲」は日の光を遮る暗く厚い雲が晴れるということで、心配ごとがなくなることのたとえ。暗い雲が晴れて日の光がさすという意味から。
(6)会稽之恥(かいけいのはじ)
敗戦の屈辱のこと。転じて、他人から受けた忘れられない屈辱のこと。
「会稽」は、中国の浙江(せっこう)省にある山の名で、春秋時代に呉(ご)と越(えつ)が戦った場所。「会稽の恥を雪(すす)ぐ」という形で用いる。
中国春秋時代、越王勾践(こうせん)は会稽で呉王夫差(ふさ)と戦って敗れた。そのときにさまざまな恥辱を受けたが、のちに苦労して夫差を打ち破り、その恥をすすいだ故事から。
(7)吉人天相(きつじんてんしょう)
善い人は天から助けてもらえるものだということ。
「吉人」は善人。「天相」は天からの助けのこと。
(8)鼓舞激励(こぶげきれい)
大いに励まし奮い立たせること。励まし元気づけること。
「鼓舞」は鼓(つづみ)を打って舞う意。転じて、励まし勢いづけること。「激励」も励まし奮い立たせること。
(9)歯牙余論(しがのよろん)
少しの言葉や何気ない褒め言葉のこと。
「歯牙」は歯と牙のことから口の端という意味。
「余論」は余った言論のことからちょっとした言葉という意味。
(10)叱咤激励(しったげきれい)
大声で励まして、奮い立たせること。
「叱咤」は大声で励ますこと。また、大声でしかること。「激励」は励まし、元気づけること。
(11)節哀順変(せつあいじゅんぺん)
悲しみが度を過ぎないように抑えて、時間の経過によって少しずつ和らげていくのがよいということ。
お悔やみの言葉として、中国でよく使われる言葉。
「哀(あい)を節せっ)するは順(したが)いて変(へん)ず」と訓読します。
(12)大器晩成(たいきばんせい)
大きな器は完成するまでに時間がかかることから、真に偉大な人物も大成するのが遅いということ。大人物は遅れて頭角を現すということ。
才能がありながら不遇である人に対する慰めの言葉としても用いる。
「大器」は偉大な器量をもつ人。「晩成」は多くの時間を費やして成就すること。
(13)能者多労(のうしゃたろう)
能力がある人は、いろいろな仕事を任されるので、普通な人よりも苦労することが多いということ。「能者」は普通の人よりも能力がある人のこと。
忙しくて苦労していることを慰めたりするときに使う言葉。
「能者(のうしゃ)、労(ろう)多し」と訓読します。