漢字発祥の国だけあって、中国の「四字熟語」は、人生訓にもなるような含蓄に富んでおり、数千年の悠久の歴史を背景とした故事に由来するものも多く、人類の叡智の結晶とも言えます。
そこで今回は、「非難」を表す四字熟語のうち、「悪口」「悪意・ねたみ」「いたずらに生きる」を表す四字熟語をご紹介したいと思います。
1.悪口
(1)悪口雑言(あっこうぞうごん)
口ぎたなく、あれこれ思う存分に悪口をいうこと。また、その言葉。さんざんにののしること。
(2)衆矢之的(しゅうしのまと)
たくさんの人から集中的に攻撃や非難をされる人のこと。
「衆」は数が多いこと。たくさんの矢に射られる的という意味から。
(3)浸潤之譖(しんじゅんのそしり/しんじゅんのしん)
悪口を少しずつ言ったりほのめかしたりして、それを聞き手に信じ込ませること。水がしみ込むように批判を繰り返す、陰険な中傷のこと。
「浸潤」は、液体がじわじわとしみ込んで濡れていくさま。「譖」は、非難・中傷のこと。
(4)数黒論黄(すうこくろんこう)
口論すること。または、陰口を言うこと。
「数」は人の失敗を責めること。または、説明すること。
黒色や黄色について議論するということから。
「黒(くろ)を数(せ)め、黄(き)を論(ろん)ず」と訓読します。
(5)擠陥讒誣(せいかんざんぶ)
悪意を持って、無実の罪で相手を非難して追い込むこと。
「擠陥」は悪意を持って罪に陥れること。
「讒誣」は罪をでっち上げて、その罪で非難すること。
(6)赤口毒舌(せきこうどくぜつ)
激しく非難して、相手を傷つける言葉のこと。
「赤口」は悪口や、他者を傷つけることを言う人の口のこと。
「毒舌」は厳しい皮肉や、悪口のこと。
(7)罵詈讒謗(ばりざんぼう)/讒謗罵詈(ざんぼうばり)
ありもしないことを並べ立てて、人をののしりそしること。
「罵詈」は、きたない言葉でののしること。「讒謗」は、ありもしないことを言って人をそしること。
(8)罵詈雑言(ばりぞうごん/ばりぞうげん)
きたない言葉で、悪口を並べ立ててののしること。また、その言葉。
「罵詈」は口ぎたなくののしること。「雑言」はいろいろな悪口や、でたらめな言いがかり。
(9)非難囂囂(ひなんごうごう)
過失やあやまち、欠点などをとりあげて、責め立て、とがめる声が大きくてやかましいさま。
「囂囂」は、声の大きくやかましいさま。
(10)誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)
根拠のない悪口を言いふらして、他人を傷つけること。
(11)風言風語(ふうげんふうご)
根拠がまるでないうわさ話のこと。
「風言」と「風語」はどちらも世間で言いふらされている話、うわさ話のこと。
(12)冷嘲熱罵(れいちょうねつば)
冷ややかにあざけって、盛んになじり非難すること。
「嘲」はあざける、「罵」はののしる意。
(13)冷嘲熱諷(れいちょうねっぷう)
素っ気なく鼻で笑うことと激しく皮肉ること。
「冷嘲」は冷ややかに嘲笑すること。「熱諷」は熱烈な風刺や皮肉を言うこと。
(14)浅瀬仇波(あさせあだなみ)
思慮が浅い人は、気にする必要がないどんな小さな出来事でも大騒ぎすることのたとえ。
深い淵より浅瀬のほうが激しく波が起こることから。
(15)按図索驥(あんずさくき)
実際には役に立たない意見ややり方のたとえ。
名馬を絵や書物の知識だけで見つけようとする意から。
「図(ず)を按(あん)じて驥(き)を索(もと)む」と訓読します。
(16)一毛不抜(いちもうふばつ)
非常に物惜しみすること。非常にけちな人、利己的な人のたとえ。
自分の毛一本も抜こうとしない意から。
「一毛」は一本の毛。ごくわずかなもののたとえ。
「一毛(いちもう)も抜(ぬ)かず」と訓読します。
(17)一門数竈(いちもんすうそう)
一つの家族が一つの家に暮らしながらも、生計を別々にしてまとまりがないことを非難する言葉。
「一門」は一つの家族。「数竈」はかまどが複数あること。一つの家に複数のかまどがあるということから。
元は魏が南方の江南地方の風習を非難して言った言葉。
(18)一文不通(いちもんふつう)
一つの文字も読み書きができないこと。一つの文字すら通じわかっていない意から。
「文」は文字の意。
(19)一丘之貉/一丘之狢(いっきゅうのかく)
同じ丘に棲(す)んでいるむじな。似たような者どうし、同類の悪党のたとえ。
「一丘」は、同一の丘。「貉」は、むじなで、アナグマの異称。
(20)引喩失義(いんゆしつぎ)
都合のよいたとえ話や、悪い前例を持ち出して正しい意義を見失うこと。
「引喩」はたとえを引くこと。「失義」は道理から外れること。
「喩(ゆ)を引(ひ)きて義(ぎ)を失(しっ)す」と訓読します。
(21)有財餓鬼(うざいがき)
①飢えに苦しむ餓鬼の中で、物を食することのできる餓鬼。膿 (うみ) ・血などを食う小財餓鬼と、人の食い残しや、祭祀 (さいし) などで捨てられた物を食う多財餓鬼とをいう
②財産を多く持ちながら、欲深い人。守銭奴。
「餓鬼」は仏教語の餓鬼道に落ちて常に飢えに苦しむ亡者のことで、欲深く異常なほど金銭に執着する人のこと。
③人をののしっていう語。がき。
(22)内股膏薬(うちまたこうやく/うちまたごうやく)
あっちについたりこっちについたりして、節操のないこと。しっかりした意見がなくその時の気持ちで動くこと。また、そのような人をあざけっていう語。日和見(ひよりみ)。
「内股」は股の内側。「膏薬」は練って作った外用薬。内股にはった膏薬が、動くたびに右側についたり左側についたりする意。
(23)得手勝手(えてかって)
他人に構わず自分の都合ばかりを考えて、わがまま放題にするさま。
「得手」は本来は得意なものの意。
(24)甕裡醯鶏(おうりけいけい/おうりのけいけい)
見識が狭く世間の事情がわからない人のたとえ。
「甕裡」は甕(かめ)の中のこと。「醯鶏」は酢や酒にわく小さな羽虫のこと。
孔子が老子に面会した後に弟子に向かって「私は甕にわく羽虫のようなものだ。老子が甕の蓋を開いて外に出したくれたおかげで、天地の大全を知ることができた。」と言った故事から。
(25)仮公済私(かこうさいし)
公の立場を利用して自分の財産をふやすこと。
「済」は助けるや役に立てるという意味。
「公(こう)に仮(か)りて私(し)を済(な)す」と訓読します。
(26)活剝生呑(かっぱくせいどん)/生呑活剝(せいどんかっぱく)
他人の書いた詩や文章を盗用すること。また、他人のことばをそのまま受け売りすること。融通の利かない意でも用いられる。
「生呑」は、生きたまま丸呑みする。「活剝」は、生きたまま皮を剝ぎとる。
(27)我田引水(がでんいんすい)
他人のことを考えず、自分に都合がいいように言ったり行動したりすること。自分に好都合なように取りはからうこと。
自分の田んぼにだけ水を引き入れる意から。
(28)我利我利(がりがり)
自分だけの利益を考えて他を顧みないこと。
「我利」は自分だけの利益。重ねることでその意を強調している。
「我利我利亡者(がりがりもうじゃ)」「我利我利坊主(がりがりぼうず)」は、そのような者を卑しめていう語。
(29)我利私欲/我利私慾(がりしよく)
自分自身の個人的な利益だけを追い求めること。
「我利」は個人的な利益のこと。「私欲」は自分だけの利益を得ようとすること。
(30)干名采誉(かんめいさいよ)
名誉を求め続けること。
「干」は求めること。「采」は取ること。
節操なく名誉を求め続ける人を蔑んで言う言葉。
「名(な)を干(もと)め誉(ほま)れを采(と)る」と訓読します。
(31)頑陋至愚(がんろうしぐ)
頑固で分別がなく、極めて愚かなこと。
「頑陋」は頑固で分別がないこと。「至愚」は極めて愚かなこと。
(32)朽木糞牆(きゅうぼくふんしょう)
怠け者のたとえ。手の施しようのないものや、役に立たない無用なもののたとえ。
また、腐った木には彫刻できないし、腐りくずれた土塀は上塗りができないように、怠け者は教育しがたいことのたとえ。
「朽木」は腐った木。「糞牆」は腐ってぼろぼろになった土塀の意。
出典は『論語』公冶長(こうやちょう)。「宰予(さいよ)昼寝(い)ぬ。子曰(いわ)く、朽木は雕(え)るべからず、糞土の牆(しょう)は杇(ぬ)るべからず。予(よ)に於(お)いてか何ぞ誅(せ)めん」(孔子の弟子の宰予が昼寝していた。それを見た孔子は言った、「腐った木には彫刻できないし、腐りくずれた土壁には上塗りできない。お前に対しては何を叱ろうか、叱っても仕方ない」)
(33)狂言綺語(きょうげんきご/きょうげんきぎょ)
道理に合わない言葉や、巧みに表面だけを飾った言葉。転じて、虚構や文飾の多い小説・物語・戯曲などを卑しめていう語。
「狂言」は道理にはずれた語。「綺語」は飾り立てた語。
(34)拒諫飾非(きょかんしょくひ)
他人からの忠告を聞かず、道理にそむいた行いの言い訳をすること。
「拒諫」は他人からの忠告を受け入れないこと。
「飾非」は道理にそむいた行いの言い訳をすること。
「諫(かん)を拒(こば)み非(ひ)を飾(かざ)る」と訓読します。
(35)虚誕妄説(きょたんもうせつ)
根拠のない、嘘の言説。または、でたらめなことを好き勝手に話すこと。
「虚誕」は大げさな嘘。「妄説」は根拠がない言説。
(36)空理空論(くうりくうろん)
実際からかけ離れている役に立たない考えや理論。
「空理」「空論」はともに、実状や現実を考えない役に立たない理論や議論。ほぼ同意の熟語を重ねて意味を強めた語。
(37)鶏鳴狗盗(けいめいくとう)
小策を弄する人や、くだらない技能をもつ人、つまらないことしかできない人のたとえ。また、つまらないことでも何かの役に立つことがあるたとえ。
「鶏鳴」は鶏の鳴きまねをすること。「狗盗」は犬のようにこそこそと、わずかばかりの物を盗むこと。卑しいことをして人をあざむく者のたとえ。
中国戦国時代、秦の昭王に捕らえられた斉(せい)の孟嘗君(もうしょうくん)が、犬のまねをして盗みを働く食客と、巧みに鶏の鳴きまねのできる食客を利用して、無事に逃れた故事から。
(38)外題学問(げだいがくもん)
うわべだけの学問をあざけっていう語。書物の書名だけは知っているが、その内容はよく知らないえせ学問のこと。
「外題」は書物の表紙にはった紙に書かれた題名。
(39)譎詐百端(けっさひゃくたん)
嘘や裏切りが非常に多いこと。
「譎詐」は嘘や裏切り。「百端」は数が多いことのたとえ。
(40)好逸悪労(こういつあくろう)
苦労するのを嫌がり、遊んで暮らすことだけを求めること。
「逸」は楽しむこと。「悪」は嫌うこと。
「逸(いつ)を好(この)み労(ろう)を悪(にく)む」と訓読します。
中国の後漢の医者の郭玉が言った病気を治すための四つの困難の一つ。
(41)公私混同(こうしこんどう)
公(おおやけ)の事と、私事(わたくしごと)をきちんと区別をせずにあつかうこと。
「公私」は、公事と私事。公的な事と私的な事。社会的な事と個人的な事など。「混同」は、区別すべき事柄を同一の事柄と間違えること。公の目的で使うはずの金銭や物品を私用に使うなど、悪い意味で用いる言葉。
(42)苟且偸安(こうしょとうあん)
将来のことを考えず、一時の楽に逃げること。
「苟」と「且」はどちらもいい加減に物事を扱うこと。
「偸安」は目の前にある楽なことだけを楽しむこと。
「苟偸(こうとう)」と略す言葉。
(43)荒怠暴恣(こうたいぼうし)
気持ちが荒れていて、わがままな様子。
「荒怠」は気持ちが荒れていて、やらなければならないことを怠けること。
「暴恣」は暴力的で自分勝手なこと。
(44)咬文嚼字(こうぶんしゃくじ)
文字の見た目や言葉の飾り方にばかりこだわって、内容や意味がない文章のこと。
学識を自慢するだけで、実際には役に立つことがない知識人を揶揄するときに使うことの多い言葉。
「文(ぶん)を咬(か)み字(じ)を嚼(か)む」と訓読します。
(45)荒亡之行(こうぼうのおこない)
自分の楽しみだけに夢中になり、他を顧みない荒れた行い。
「荒亡」は狩猟や酒、女遊びに夢中になり、目的を見失うこと。または、為政者が人々に無駄な負担を強制して、本人は遊び呆けること。
(46)極悪非道(ごくあくひどう)
この上なく悪く道理にはずれていること。また、そのさま。
「極悪」は悪逆きわまりないこと。「非道」は道理や人の道に反していること。
(47)言語道断(ごんごどうだん)
言葉に表せないほどあまりにひどいこと。とんでもないこと。もってのほか。
もと仏教の語で、奥深い仏教の真理や究極の境地は言葉では言い表せない意から。
「言語」は言葉に出して表すこと。「道断」は言うことが断たれること。「道」は口で言うこと。また、「言語の道が断たれる」意ともいう。
(48)左建外易(さけんがいえき)
自分の権力や繁栄のために手段を選ばず、好き勝手をすること。不正などを行い、自らの勢力を伸ばすこと。
「左建」は、不正なやり方で、勢力を拡大すること。「外易」は、地方にあって、中央からの命令を勝手に変更すること。
(49)尸位素餐(しいそさん)/素餐尸位(そさんしい)
ある地位にありながら職責を果たさず、無駄に禄(ろく)をもらっていること。また、その人。
「尸位」は、人がかたしろになって、神のまつられる所に就く意で、地位にあって動かない、位にありながらなんの責務も果たさないことをいう。
「素餐」は何もしないでただ食らうこと。
(50)失礼千万(しつれいせんばん)
ひどく礼儀を欠いた言動や態度をとること。
「失礼」は礼儀を欠いているということ。「千万」は程度がこの上ないということ。
(51)自分勝手(じぶんかって/じぶんがって)
他人の事は考えず、自分の都合だけを考えること。また、そのさま。身勝手。手前勝手。
(52)邪知暴虐/邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)
悪いことに知識がよく働き、乱暴な行動で人々を苦しめること。
「邪知」は悪知恵。「暴虐」は乱暴で残酷なこと。
(53)醜悪奸邪(しゅうあくかんじゃ)
容姿が醜くて、心に悪意が満ちていること。または、そのような人のこと。
「醜悪」は容姿が醜いことや見苦しいこと。「奸邪」はよこしまなこと。
(54)獣聚鳥散(じゅうしゅうちょうさん)
統率も規律もなく、ただ集まっているようす。無秩序に集まったかと思うと、ただ散らばるような集まりのたとえ。
「聚」は、集まる。獣のように集まり、鳥のようにばらばらに散っていくという意から。
(55)城狐社鼠(じょうこしゃそ)/社鼠城狐(しゃそじょうこ)
君主や権力者のかげに隠れて、悪事を働く者のたとえ。
城や社という安全なところに巣くって、悪さをするきつねやねずみの意から。
「城狐」は城に棲(す)むきつね。「社」は土地神を祭るやしろ。
(56)人面獣心(じんめんじゅうしん/にんめんじゅうしん)
冷酷で、恩義や人情をわきまえず、恥などを知らない人のこと。顔は人間であるが、心は獣類に等しい人の意から。
「人面」は人間の顔。また、それに似た形の意。「獣心」は道理をわきまえない、残忍なけだもののような心。
(57)浅薄愚劣(せんぱくぐれつ)
考えが軽薄で、知識が浅く、愚かなこと。
「浅薄」は考えが浅はかで、知識がないこと。「愚劣」はばかばかしいこと。
(58)大桀小桀(たいけつしょうけつ)
残虐な王や為政者のこと。
「桀」は殷の紂王と同じく、暴君の代名詞になっている夏王朝の桀王のこと。
(59)大欲非道/大慾非道(たいよくひどう/だいよくひどう)
たいへん欲が深く、道理にはずれて非人情なさま。
「大欲」は大きな望み・欲望。また、非常に欲の深いこと。「非道」は人としての道にはずれていること。人情のないこと。
(60)敵前逃亡(てきぜんとうぼう)
物事に直面して責任を取らずに逃げること。
目の前にいる敵と戦わずに逃げるということから。
(61)顛越不恭(てんえつふきょう)
人としての道を外れて、君主の命令に従わないこと。
「顛越」は転がり落ちるという意味から、人としての道を外れること。
「不恭」は不謹慎な態度のこと。
(62)田夫野人(でんぷやじん)
教養がなく、礼儀を知らない粗野な人。
「田夫」は農夫。「野人」は庶民、いなか者の意。
(63)人三化七(にんさんばけしち)
容貌が醜いこと。容姿が非常に不細工なこと。
特に女性に対して蔑(さげす)んで言う言葉。
三割は人間に見えるが、残りの七割は化け物に見えるという意味から。
(64)喉元思案/咽元思案(のどもとじあん)
軽率な考えという意味。
「喉元」は喉のあたり。「思案」は考えのこと。
思考を重ねて胸の辺りでじっくり考えたのではなく、胸よりも浅い喉のあたりで思いついた考えということから。
(65)馬牛襟裾(ばぎゅうきんきょ)
学識のない者、礼儀知らずな者をののしっていう語。馬や牛が人の衣服を着たようなものという意から。
「襟裾」はえりとすそ。転じて、衣服を着ること。
(66)伴食宰相(ばんしょくさいしょう)
地位に比して実力が伴わない大臣のこと。また、職務を果たさず実権もない大臣のこと。
「伴食」は、主客のお供をしてごちそうにあずかること。またその職にふさわしい実力が伴わないこと。また実権が伴わないこと。「宰相」は、総理大臣のこと。
中国唐の時代、大臣は皇帝から食膳を賜わって会食するのが慣例であった。盧懐慎(ろかいしん)は姚崇(ようすう)とともに国務にあたっていたが、官吏としての能力はとても姚崇に及ばないことを知っていたので、何事においても独断で職務を遂行することをしなかった。それで人々が盧懐慎のことを「伴食宰相」と呼んだ故事から。
(67)卑怯千万(ひきょうせんばん)
行動や考えなどが、非常にずるくていやしいこと。
「卑怯」はずるくて心がいやしいこと。「千万」は程度がこの上ないこと。
(68)無為無策(むいむさく)
なんの対策も方法もたてられず、ただ腕をこまねいていること。計画が何もないこと。
「無為」は何もせず、人の手を用いないこと。「無策」は起こった事態に対して、効果的な対策や方法がとれないこと。
(69)無為無能(むいむのう)
意義のあることをやりもしないし、できもしないこと。何もできないこと。行うこともやり遂げる力もないということ。へりくだるときにも用いられる。
「為」は行うこと、行為。「能」は物事をやり遂げる力。
(70)無学無識(むがくむしき)
学問と知識のどちらもないこと。
「無学」は学問がないということ。「無識」は知識がないということ。
(71)無学文盲(むがくもんもう)
学問や知識を身につけておらず、字が読めないこと。また、その人。
「無学」は学問・知識がないこと。「文盲」は文字が読めない意。
(72)無知蒙昧/無智蒙昧(むちもうまい)
知恵や学問がなく、愚かなさま。
「無知」は知識がないこと。何も知らないこと。「蒙昧」は物事の道理をよく知らない意。「昧」は暗い意。
(73)無知文盲(むちもんもう)
学問・知識がなく、文字の読めないこと。また、その人。
2.悪意・ねたみ
(1)暗箭傷人(あんせんしょうじん)
こっそりと人を陥れたり、中傷したりすること。
「暗箭」は暗がりから放たれた矢のこと。「傷人」は人を傷つけること。
「暗箭(あんせん)人(ひと)を傷(やぶ)る」と訓読します。
(2)陰謀詭計(いんぼうきけい)
人を欺くためのひそかなたくらみごと。
「陰謀」は、陰でたくらむわるだくみ。「詭」は、あざむきだますこと。
(3)機械之心(きかいのこころ)
「機械」は巧妙な仕組みの器具のことから、たくらみや偽り、たくらみ偽る心のこと。
または、策略をめぐらす考え。
(4)鬼瞰之禍(きかんのわざわい)
良い出来事には邪魔が入りやすいことのたとえ。
または、富み栄えているときに付け上がっていると、周りから妬まれて災いを受けることのたとえ。
「瞰」は隙を狙う、もしくは窺うという意味。富裕な家に災いを下そうとして、邪鬼が隙を狙っているという意味から。
(5)偽詐術策(ぎさじゅっさく)
策略、計略のことで、相手を貶めるための策略をいう。
「偽詐」は相手を騙すこと。「術策」は策略、計略のこと。
(6)求全之毀(きゅうぜんのそしり)
手落ちがないように準備をして、正しい行いをしても人に非難されることもあるということ。
「求全」は万全を求めること。「毀」は悪口を言うこと。
「全(ぜん)を求(もと)むるの毀(そし)り」と訓読します。
(7)幸災楽禍(こうさいらくか)/楽禍幸災(らくかこうさい)
他人の不幸を喜ぶこと。人の災いを幸いとして喜び、災いを楽しむ意から。
「幸災」は人の災難を幸福として喜ぶこと。「楽禍」は災いを招くことを楽しむこと。ここでは他人の災いを見て楽しむこと。
「災(わざわい)を幸(さいわい)とし禍(わざわい)を楽(たの)しむ」と訓読します。
(8)洗垢索瘢(せんこうさくはん)
他人の失敗や欠点をしつこく見つけ出そうとすること。
「索」は探すこと。「瘢」は傷跡。
人の垢を洗い流すようなことをしても、傷跡を探そうとするという意味から。
「垢(あか)を洗(あら)いて瘢(きず)を索(もと)む」と訓読します。
(9)排斥擠陥(はいせきせいかん/はいせきさいかん)
悪意をもって無実の罪に陥れて、押しのけること。
「排斥」は認めずに拒んで退けること。「擠陥」は悪意を持って無実の罪に陥れること。
(10)飛短流長(ひたんりゅうちょう)
でたらめな噂をばら撒いて、悪意をもって他人の名誉を傷つけること。
「飛」と「流」はでたらめなこと。「長」と「短」は良いことと悪いこと。
3.いたずらに生きる
(1)飲食之人(いんしょくのひと)
飲んだり食べたりすることだけを楽しみにしている人のこと。
本能にだけ従って生きている人のことをいう。
(2)翫歳愒日(がんさいかいじつ)
無為に日々を過ごすこと。
「翫」と「愒」はどちらも貪(むさぼ)るという意味。
人々を治める者が行ってはならないことを述べたもの。
「歳(とし)を翫(むさぼ)り日(ひ)を愒(むさぼ)る」と訓読します。
(3)禽息鳥視(きんそくちょうし)
何かを成すこともなく、ただ生きることのたとえ。
獣や鳥が息をしたり物を見たりするのは、食べ物を本能的に探しているだけで、意志などなくただ生きているだけという意味から。
「禽(けもの)のごとく息(いと)い鳥(とり)のごとく視(み)る」と訓読します。
(4)行尸走肉/行屍走肉(こうしそうにく)
才能や学問もなく、何の役にも立たない無能な人のたとえ。
歩く屍(しかばね)と、走る魂のない肉体の意から。
「行」は歩く意。「尸」は屍。屍や肉体は形だけあって、魂がないことからいう。
(5)坐食逸飽/座食逸飽/坐食佚飽(ざしょくいつほう)
仕事をせずに食事をして、気楽に食べたいだけ食べること。
「坐食」は仕事をせずに食事をすること。「逸飽」は悩まずに好きなだけ食事をすること。
(6)酔生夢死(すいせいむし)
何もせずに、むなしく一生を過ごすこと。生きている意味を自覚することなく、ぼんやりと無自覚に一生を送ること。
酒に酔ったような、また、夢を見ているような心地で死んでいく意から。
(7)走尸行肉(そうしこうにく)
生きていても役に立たない人のこと。そのような人を侮蔑するときに使う言葉。
走る屍骸と歩く肉という意味から。
(8)飯嚢酒甕(はんのうしゅおう)/酒甕飯嚢(しゅおうはんのう)
能力も知識もない人のこと。
「甕」は物をいれる容器のかめ、「嚢」は袋。
酒を入れる甕(かめ)と飯を入れる袋のことから、酒を飲んで飯を食うだけの何の役にも立たない人のこと。
(9)飽食終日(ほうしょくしゅうじつ)
一日中、腹一杯食べて、何もせずに日を過ごすこと。食うだけで一日をむなしく終えてしまうこと。
「飽食」は飽きるほど食べること。「終日」は一日中。朝から晩まで。
(10)無為徒食(むいとしょく)
何もしないで、ただ無駄に毎日を過ごすこと。意味もなく時間を費やすこと。
「無為」は何もせず、人の手を用いないこと。「徒食」は働くこともせず、無駄に日を送ること。
(11)無芸大食(むげいたいしょく)
特技や取り柄がないにもかかわらず、食べることだけは人並みであること。また、そのような人をさげすんでいう語。自分のことを謙遜していう場合にも用いられる。
「無芸」は芸や特技を何も身につけていないこと。「大食」はたくさん食べる人。大食い。