日本語の面白い語源・由来(む-③)紫式部・無茶苦茶・空しい・昔・胸突き八丁・胸・紫

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紫式部

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.紫式部(むらさきしきぶ)

紫式部

ムラサキシキブ」とは、「山野に自生するシソ科の落葉低木」です。一般的に観賞用として栽培されるムラサキシキブは別品種のコムラサキを指します。

ムラサキシキブは紫色の果実が玉のように群がることから、古くは「タマムラサキ(玉紫)」と呼ばれました。

これを京都では、紫色の果実が重なりあっていることから、「ムラサキシキミ(紫重実)」と呼びました。

「ムラサキシキミ」の名が、平安時代の作家「紫式部」を連想させることから、この植物は「ムラサキシキブ」と呼ばれるようになりました。

「紫式部」は秋の季語で、次のような俳句があります。

・素泊りに 紫式部 みつみつと(内田美紗)

・誰が作り 誰が名付けしや 実むらさき(若江千萱)

・人は人 我は我なり 実むらさき(斎藤道子)

・いとほしや 人にあらねど 小紫(森澄雄)

2.空しい/虚しい(むなしい)

空しい

むなしい」とは、「空虚である。内容が無い。充実していない。無利益である。根拠が無い。無実である。はかない」ことです。

むなしいは、「み(身・実)」と「な(無)」から生じた語で、中身が無いことです。
「みな」が変化した「むな」に、形容詞を作る接尾語「し」が加わって「むなし」になり、口語化されて「むなしい」となりました。

心の中が空っぽになることからや、「形だけで中身が無い」「充実していない」という状態に対して残念に思う気持ちが、「むなしい」に含まれるようになり、「わびしい」や「みじめ」の意味を含んで用いられるようになってきました。

古くは、死んで心や魂が抜け去り、体だけになっているところから、「命が無い」という意味でも「むなしい」は用いられました。

3.昔(むかし)

昔

」とは、「時間的に現在から過去にさかのぼった一時期・一時点」のことです。多くは、遠い過去を指していいます。

昔は現在と対立し、現在から向かって過ぎ去った時を表すことから、「むかう(向かう)」の「むか」と同源でしょう。

むかしの「し」は、「方向」を表す「し」とする説や、「むかしへ」の下略で「いにしえ(いにしへ)」と同様に「し」が助動詞、「へ」が方向の意味とする説があります。

古く、物語の語りだしには、「今は昔」の形で現在のことではないという断りや、古くからの伝承であることを示すために用いられました。

漢字の「昔」は、「日」に「敷き重ねるしるし」で、時日を重ねたことを表しています。

4.胸突き八丁(むなつきはっちょう)

胸突き八丁

胸突き八丁」とは、「山道の登りのきつい難所。物事を達成する直前の最も苦しいところ」のことです。正念場。

胸突き八丁の「八丁」は、富士登山で頂上までの8丁(約872メートル)で険しい道のことです。
「胸突き」は、を突かれたように、息ができなくなるほど苦しいことを表しています。
上記のとおり、胸突き八丁は富士登山で険しい道を言う語ですが、他の山についても急斜面の坂道を言うようになりました。

さらに、物事を成し遂げる過程を登山にたとえ、大詰めの一番苦しいところを「胸突き八丁」と言うようになりました。

5.無茶苦茶(むちゃくちゃ)

無茶苦茶

無茶苦茶」とは、「道理に合わないこと。程度が甚だしいこと。知識がないこと。乱暴なさまなどを表す無茶を強めていう語」です。滅茶苦茶。

無茶苦茶の語源には、「無茶」が来客にお茶を出さないこと、「苦茶」が苦いお茶を出すことで、共に常識はずれなことからといった説があります。

この説は漢字を元に考えられた説ですが、「無茶苦茶」はただの当て字なので、漢字に語源を求めること自体間違いです。

無茶苦茶の「無茶」は、仏教語で「無為」を表す「無作(むさ)」からか、「無作」から生じ、中世から近世にかけて「無造作」の意味で用いられた副詞「むさと」の「むさ」が転じたものと考えられています。

また、「むさい」「むさぼる」などの「むさ」などと同根で、むさぼる心が強いことや、汚らしいことからとも考えられます。

無茶苦茶の「苦茶」は、語調を整えつつ「無茶」を強めるための語です。
同様に「むさ」から生じ、語調を合わせた言葉には「むさくさ」や「むしゃくしゃ」があります。

6.胸(むね)

胸

」とは、「背中と反対の面で、首と腹の間の部分。乳房。心臓。心。また、心の中」のことです。

胸の語源には、「うね(心根)」の意味や「みうちね(身内根)」の意味、「むね(身根)」の意味からといった説があります。

胸には心臓や肺などがあり、位置的にも機能的にも身体の中心部分です。また、「胸が痛む」と言うように「心」も表す言葉で、身体の中で重要な部分となります。

そのため、「うね(心根)」の説も考えられますが、身体の重要な部分を総合的にあらわした「むね(身根)」の説が妥当です。

また、家屋の「むね(棟)」も中心部分にあり、これらは共通した語源とも考えられています。

7.紫(むらさき)

紫

」とは、「色の一種で赤と青の中間の色の総称。ムラサキ科の多年草。醤油。イワシをいう女房詞」です。

色の紫は、植物のムラサキの根に含まれる色素によって染められた色で、植物名が染色名に転用されたものです。

植物のムラサキが群れて咲くことから「群れ咲き」の意味とする説と、花の色がムラになって咲くことから「むらさき」になったとする説があります。

すし屋などで醤油を「紫」と言うのは、醤油の色に由来します。

女房詞でイワシを表すのは、イワシの集まる時間は海面が紫になることからか、「鮎(あゆ)」に勝るところから紫は「藍(あい)」に勝るとかけたものです。