「カブトムシ」にまつわる思い出話。「累代飼育」もご紹介

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兜虫

「ひっぱれる絲(いと)まっすぐや甲蟲(かぶとむし)」(高野素十)

「縛されて念力光る兜蟲(かぶとむし)」(秋元不死男)

1.小学生時代の昆虫採集

小学校4年生の夏休みのある日、私は初めてカブトムシを捕まえました。しかし雌だったので少しがっかりした記憶があります。その夜、ちゃぶ台に有り合わせの網かごを伏せてカブトムシを入れ、その上に重しとして雑誌を置いて寝ました。ところが夜中に網かごを押しのけて逃げ出し、電灯の豆電球の周りをブンブンと大きな羽音を立てて飛び回っていました。私はカブトムシの力の強さに驚かされました。

最近「昆虫採集」はあまり人気がないようですが、私が小学生の頃は、夏休みの宿題として、採集したカブトムシやセミ、トンボ、チョウなどの「昆虫標本」を作ったものです。中でもカブトムシは「昆虫の王様」と言われて、大阪のデパートでも販売されるほどの人気でした。

今は、一部の子供や大人のマニアに「輸入昆虫」の「ヘラクレスオオカブト」や「コーカサスオオカブト」、「ネプチューンオオカブト」などが人気で、高値で売買されているようです。

しかし、私個人としては、カブトムシと言えばやはり日本固有種の「ヤマトカブトムシ(大和兜虫)」です。外国種は、何か作り物のようで、あまり好きになれません。

私が子供の頃は、今のように「腐葉土マット」や「樹液ゼリー」がホームセンターに売っているわけではありませんでした。味付け海苔のガラスの瓶(空気が入るように蓋に穴をいくつも開けました)に入れて、下に大鋸屑(おがくず)を敷き、時々外に出して西瓜を食べさせたり、角に糸をつけて物を引っ張らせたりして遊んでいました。

そんな飼育方法ですから、あまり長生き出来ません。西瓜は水分が多すぎるようで、すぐに排尿しますし、彼らの好む樹液とは似ても似つかぬものだったのでしょう。ですから、番(つがい)で飼って卵を産ませ、「累代飼育」することなどとても考えられませんでした。

中学校に入ると、私の「昆虫熱」も冷めてしまい、カブトムシのこともすっかり忘れていました。

2.中高年になってからカブトムシの累代飼育に挑戦

ところが、10年ほど前の初夏の頃、ホームセンターに行った際、ふらりと「ペット売り場」に立ち寄りました。そこに成虫の「カブトムシの番(つがい)」が売られていました。狭いケースの中で、勢いよく羽を唸らせていました。

その時、私はそのカブトムシが呼んでいるように感じたのです。よく、絵画や骨董品を購入する時、「買ってほしいと呼んでいる」ように感じたという話を聞きますが、それと似た感じです。

しかし、私はすぐには購入を決断せず、二日ほど時間を置いて考えることにしました。

今さら、「昆虫採集」に行くのもどうかと思うし、以前のように樹液の出ている櫟(くぬぎ)林が近くに沢山あるわけでもない。このままでは、一生カブトムシと触れ合う機会もないだろう。そう感じて、結局購入して飼育することにしました。

妻や子供は皆、カブトムシには無関心なので、私一人で楽しむということになりました。販売用の小型ケースから大型のプラスチックケースに入れ替え、腐葉土を底に厚く敷き詰め、樹液ゼリーを与えて育てました。腐葉土が乾燥し過ぎないように霧吹きで適度に湿らせることも忘れませんでした。また、カブトムシはひっくり返ると自分で起き上がれないので、ひっくり返った時につかまれる木の枝も入れてやりました。

夜中に「シュッ、シュッー」「キュウ、キュー」「ギュウ、ギュー」という音が聞こえるのも初体験でした。これは交尾の合図らしいです。雌が腐葉土の中に潜り込むことも多くなります。やがて、成虫2匹が死にます。プラスチックケースの腐葉土をスプーンで慎重に少し掘り返してみると、2ミリくらいの白い卵がいくつか確認できました。

やがて秋も深まるにつれ、幼虫が1齢・2齢・3齢と進んでだんだん大きくなります。小さな楕円形の大量の糞が腐葉土の表面に溜まります。これをスプーンで掻き出して、新しい腐葉土を追加する作業も欠かせません。幼虫の食糧はこの腐葉土なのです。

冬を過ごした3齢幼虫が4月頃には蛹となり、5月初旬には5匹の成虫となりました。自然の場合に比べて、室内で越冬させた為、早く成虫になったのでしょう。

その年も引き続き「累代飼育」しましたが、「コバエ(小蠅)」が発生した為、戸外に出しました。すると今度はアリが樹液ゼリーを求めて、ケースに侵入するようになりました。アリが卵を運んで行ったのか、腐葉土を湿らせるための霧吹きでの水やりが多すぎたのか、原因は不明ですが、その年は卵はゼロで、私の累代飼育は終わりました。

他のペットの場合も同様でしょうが、カブトムシの幼虫も「大食漢」なので、「腐葉土マット」の購入額も馬鹿になりません。それに樹液ゼリー容器もひっくり返って腐葉土まみれになるので、頻繁に新しいものに取り換えが必要です。

最初は、懐かしさから飼い始め、癒されることもありましたが、ある意味で、2年間の飼育で終わってほっとしたというのが、正直な感想です。私の「熱しやすく冷めやすい」「飽きっぽい」性格からでしょうか?



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